March 31, 2019

2018/19シーズン回顧 小林陵侑の出現とフリーガータイプの苦難(3/3)

来期はどうなる

話が逸れてしまった。さて、来期はどうなるのだろう。世代交代は各国で急速に進む気配がある。ポーランドのヴォルニー、スロベニアのザイツ、オーストリアのアッシェンヴァルトは陵侑の好敵手となっていくだろう。あ、もちろんプレウツ兄弟(ピーターだってまだ若い)も忘れてはいけない。ノルウェーチームは転換点を迎えている。グラネルートやリンドビークをはじめとする若手は才能に溢れているが、ノルウェー伝統の飛び方がトレンドと合わずに伸び悩んでいる。シュテッケルは手腕を問われることになりそうだ。ドイツはアイザイがようやく殻を破ったが、ジーゲルの離脱は今後を考える上で本当に痛いと思う。シュスターに代わる新しいヘッドコーチにホルンガッヒャーが就任するとまことしやかに言われているが、どうなるだろう。

日本は、トレンド変化に従って葛西・伊東と小林兄弟の序列が入れ替わったが、ベテラン二人がこのまま手をこまねいて退場するとは到底思えない。復権にむけてどういう手を打ってくるか楽しみだ。佐藤幸椰は独自路線をこのまま突き進んでもらいたい。すべてがかみ合ったときに、驚くべきパフォーマンスが出そうな予感がしている。タイプの違う、レベルの高いライバルがチーム内にいることが陵侑にとっても必要だ。

技術的には、このまま陵侑がロールモデルとなり空中の大革命が進んでいくのか、それとも別の考え方で彼に立ち向かう人間が現れるのか。私はジラのジャンプにちょっと注目している。彼はパワータイプなのに、最近飛行曲線がどんどん低くなっている。ストッホと正反対だ。しかも、彼もランディング時は遅いタイプだと気づいた。彼が目指しているのは「低く、超速く、遅く」のようだ。アイザイやプレウツ兄弟はこっちの方向に向かっている感じがしていて、もしかしたら、彼らのような集団が新たなフリーガー像を作っていくのかもしれない。

結局長々と書いてしまった。今季は日本のスキージャンプファンにとって感慨深いシーズンだったから、書くべきことがたくさんあった。日本人ジャンパーによるジャンプ週間4連勝と総合優勝が起こることなど、自分の生きているうちにあるとは思っていなかった。小林陵侑には感謝しかありません。ジャンパーの皆さん、少し休んで、来期もぶっ飛んでください。よろしくお願いします。

(了)

 

 

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March 30, 2019

2018/19シーズン回顧 小林陵侑の出現とフリーガータイプの苦難(2/3)

フリーガータイプの苦難

今季、自分が最も残念に思ったことは、ビケルスンのフライングヒルがさらにフラット化されていたことだ。おそらくだけど、FISはその変更なしにはCertificateを出さないと強硬に迫ったのだろう。クルム、オーベルストドルフ、プラニツァは昨シーズンに既にフラット化がなされていたので、これでアクティブなフライング台のランディングバーンはすべてフラット(βが34°以下)になった。

その結果、ビケルスンにおいても飛行曲線の高いジャンパーが活躍することになった。従来的な前がかりなフライトでは伸びないことが明らかだった。クラフトやフォアファングといった超トップクラスのバランス型でさえ、低く出てしまうと伸ばせなかった。一人だけ特異だったのがドメン・プレウツだったが、彼とて活躍した16/17シーズンの時よりパワーアップしており、明らかに上への方向性を出していた。彼以外の「フリーガータイプ」に属する、空中の効率に特化したタイプは全く伸ばせていなかった・・・。

今季はドメンを除いてワールドカップの総合上位とスキーフライングの上位がほとんど同じになった。特徴的なのがクバツキだと思う。彼自身の技術の進歩もあるが、以前の認識では彼のようなパワータイプがフライングで上位に来るとは想像できなかった。

こうなった理由の一つが前述の台のフラット化。フラットな台においては高い飛行曲線が有利になるからだ(ジャンパーと台の相性についてを参照)。もう一つは、今季からBMIを測るときにブーツの重さが体重に加算されなくなったこと。肉体の重さがそのままならスキーがもう一段短くなって浮力が減少し、スキーの長さを維持すればジャンパーのパワー(筋肉量)が増やせるということだ。どちらにせよ、よりパワー方面が有利になる。その二つの相乗効果で、飛行曲線の高いジャンパーがフライングも飛べるようになったと思われる。一方、空中が上手いジャンパーであっても充分に浅い落下角度が得られず、飛行が低ければ落ちてしまうという傾向が顕著になったのだろう。

結果として、ランディングバーンの稜線よりも浅い飛行曲線を出し浮き上がるようなジャンプでHSまで行くという、フリーガータイプの戦略はフライングヒルでも通用しなくなった。フリーガーたちは、今後どうするのだろう。プレウツ兄弟のようにパワー・スピード化を進めるのは一つの方向性。空中よりもサッツの効率で勝負するクラフトやフォアファングは方向性を微調整すればOKだろう。しかし・・・生粋のフリーガータイプは?ステヤネン、クラニェッツは引退を選んだ。テペシュ、ファンネメル、そして葛西は?

そういう認識のもとに振り返ってみると・・・

現状では飛行曲線は高い方が有利ということは、おそらく業界では常識なのではないか。ただ・・・実際、体に染みついたサッツの方向性を変えることは、選手にとっては感覚的に難しいことなのかもしれない。仮に方向性を上方修正できたとしても、失速落下の恐怖と戦いながら、サッツ後のすべての感覚を刷新し、マテリアルと技術を最適化する作業が待っている。

そういう認識を得てから、ここ数年のジャンプ界の流れを振り返ってみて、いくつか腑に落ちたことがあった。

一つは最近のアマンの苦闘の理由だ。彼の飛行曲線は2012シーズンぐらいからどんどん高くなって、ランディングの問題が起こり、軸足を変える決断をして、まったくテレマークができない状況が続いた。今季はスキーを変え、ブーツも新機軸の硬いものにし、それで大失速ジャンプを繰り返した。なんで、そんなことをしているんだろう?とずっと訝しんでいたのだが、今季のプラニツァでHSに到達してランディングを決めた彼の素晴らしいフライトを見てようやくわかった。彼は、おそらくだけどピチピチスーツ到来の頃に既にこの未来を予見して、一つ一つ手を打ってきたのだと思う。ただ飛行曲線を高くすれば、落ちる。落ちると、ランディングが難しくなる。そこでここ数年は空中の効率を改善するために、いろいろトライしてきたのだと思う。途中、くじけそうになって引退をほのめかしていた。しかし、今季は手ごたえを感じたのだろう、彼の口からは引退のいの字も出ていない。スラットナーの先が柔らかい板、カーボン製のシューズ、スキーの先を開かず前傾も抑えた新しい空中飛型・・・・この組み合わせで来期は勝負するのだろう。

もう一つはストッホの復活だ。ソチの頃の彼はものすごく低い飛行曲線で結果を出していた。しかし、その後不振になり15/16シーズンは総合22位に沈んだ。そして、迎えた16/17シーズンの彼のジャンプは全く変わっていた。高く、でも速いというジャンプになっていた。その後の彼の活躍は記憶に新しい。重要なのは、この大変更がソチオリンピックでの栄光からほどなく、ホルンガッヒャーがヘッドコーチとしてポーランドに来るより前に行われていることだ。このサッツの方向性の変更は、2000年にアダム・マリシュが長身痩躯時代に行い、一気にトップに立ったものに似ている。以前、マリシュが引退した時に書いたエントリーで、彼の凄さを「謙虚に自分を観察し、他人の助言を受け入れて、自分を変えることができる、思考の柔軟性と素直さが彼を何度もトップに押し上げたのではないか。」と評したが、これはそのままストッホにも当てはまる。

この二人の先見性、柔軟性、決断力、実行力。これこそが、彼らのアスリートとしての真の素質だと思う。そして、彼らがこうやって正しい方向にレールを敷いたことが、小林陵侑の今季の爆発を促したのではないか、と思うのだ。幸いなことに、この方向性は陵侑がもともと持っていたものと相性が良かったのだろう。しかも彼には優れた身体能力と空中感覚、そして若さがあった。すべてが良い相乗効果を生み、彼はストッホすら到達できなかったレベルに一気に到達してしまったんだと思う。

陵侑のように時代を作る人間は、時の運を捉えてしまう。しかし、その「時運」を生み出した人達が、実はすごいのではないか、と思うのだ。スポーツに限らず、芸術でも、学術でも、音楽でも・・・。

(3)に続く

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2018/19シーズン回顧 小林陵侑の出現とフリーガータイプの苦難 (1/3)

今シーズンを振り返っていくつか感じたことを書いてみたい。一言で言えば、今季は「陵侑無双」のシーズンだった。調子が多少落ちた世界選手権前の一時期を除いて、小林陵侑のパフォーマンスは他のジャンパーより頭一つ抜けていた。陵侑に対抗できたのは、アイザイ、クラフト、ストッホの3人だったが、彼らのピーク時や相性の良い台の時に陵侑がイマイチだと逆転が起りうるという感じだった。パフォーマンスの余裕度に明らかな差があった。

小林陵侑のジャンプは何が凄いのか?

これを検証して解説することは一ファンの手に余ることだが、今季試験的に提供された飛行中のスピードのデータを手掛かりに、こうではないかと言うことはできそうだ。

スキージャンパーのやっていることは、1)サッツのでのスピードロスを最小限にしながら上に飛び、マキシマム(最高点)をできる限りカンテから高く遠くにし、2)そこからは落下を抑えながら前に進む。それらの効率が優れているから、小林陵侑は遠くまで飛べるということになる。では彼は何が優れているのだろうか。

今年はいくつかの試合で、飛び出し速度に加えてカンテから20mの地点とランディング時の速度が表示された。20m地点のスピードが上記1)のサッツ効率と、ランディング時のスピードが2)の空中効率とリンクするのだが・・・数字そのものが飛行の効率と相関関係にならないのがつらいところ。というのも、飛行の効率はこれらのスピードを決める一つのパラメーターでしかないからだ。例えば、サッツで高い方向に出れば必然的に20m地点の速度は遅くなるし、飛び出し時が追い風なら速くなる。ランディング時のスピードは100mに降りたときより120mに降りたときの方が速い(それだけ、落下加速度がついているから)。つまり、ジャンプのスタイル、気象条件、ジャンプの出来不出来など様々な要因で数字はいくらでも変わってしまうのだった。しかも、速度のベクトル(前に進んでいるのか、下に落ちているのか)は不明だし、これらのスピードを開示して飛んだケースは、日本やポーランドなど開示に積極的だったチームのジャンパーであっても数えるほどしかないので、統計的に解析することも不可能。・・・というわけで、ここから書くことは私の個人的印象の範囲を超えないものだとご理解いただきたい。

小林陵侑の飛行において、20m地点のスピードは飛び出し時とほぼ同じのことが多かった。この、ほぼ同じ、というのは非常に優れた数字で、クラフトやフォアファングといったサッツの効率で勝負するタイプと同等のものだ。陵侑は彼らより高く飛び出しているため、普通はマイナス(飛び出しよりも遅い)になってしかるべきなのだが、そうはなっていない。つまり陵侑のサッツは高効率ということになる。このスピードが陵侑よりも速いジャンパーは、ハイベックやジラなど、サッツで猛烈に前に行くスピード特化型タイプのみ。彼らはこの数値がプラスになることが多かった。

ランディング時のスピードは、飛び出し時+20キロ台前半になるジャンパーが多かった。この数値が最も大きいのがノルウェーのフリーガータイプ。ヨハンソンはいいジャンプをしたときには+30を超えることもあった。よく前に進んでいるということになりそうで、私のこれまでの認識ではこういうジャンプが空中効率の良い、大きな台で伸びるジャンプだと思っていた。

しかし、驚いたことに陵侑のジャンプはこのランディング時のスピードが非常に遅いのだった。初めて見たときは間違いかと思ったが、彼がいいジャンプをしたときはいつも、飛び出し速度+15キロぐらい。+10しかない時もあった。しかも、悪いジャンプの時にこの数値が大きくなるのだった。これは、信じがたいが、彼は空中で減速しながら飛んでいて、より減速できたときに伸びるということになる。落下モーメントを殺しながら、落ちないように飛んでいるということだ。浮力が他のジャンパーよりずっとある、と言うこともできそうだ。

結論としては、陵侑はサッツでは高く出ながらもスピードを維持し、しかし飛行体勢に入ってからは前に進むことよりも落ちないことを重視した飛行で、滞空時間を長くして飛距離を伸ばしている、ということだ。高く、速く、遅く、である。

これと同じ傾向のジャンパーは数えるほどしかいない。一番近いのが小林潤志郎。当然かもしれないが、飛型も体のサイズも違うのに実は似ているというのは非常に興味深い。他国のジャンパーでは、予想外だが、大成功した時のクバツキ。彼は十回に一回ぐらい凄いジャンプをするが、その時は陵侑と同じ感じ。伸びない時はサッツでマイナス(上に出すぎ?)になっている。高く、速く、速く、のタイプが現在の主流で、その代表がストッホ。低く、速く、速く、のタイプがフリーガータイプとなる。

小林陵侑の空中の秘密・・・はわからないが、空中では前に進むことが善だと思っていた私には、彼の飛行データは衝撃だった。パラダイムの転換点になっているのかもしれない。おそらくこの独特の空中技術は彼の生来のものだ。これにサッツ技術の向上と欧州人を超えるほどの身体能力、成長による体の完成が相乗的に作用して、今季の無双状態を生み出したと言うことができそうである。まだ技術的にも身体的にも上昇の余地があるように見えるのが凄い。大きな怪我やモチベーションの問題がなければ、今後数年でニッカネン/アホネン/シュレリーレベルの勝ち星を詰み上げていく可能性が高いのではないか。

(2)に続く

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March 24, 2019

小林陵侑、空前絶後のシーズンを圧倒的勝利で終える  プラニツァ最終戦

抜けるような青空の下、すべての観客が彼のとてつもないフライトを期待する。自国のジャンパーがそれによって負けるとしても、そうせざるを得ない。それだけの輝きが、陵侑にはあった・・・。

彼のプラニツァでのフライトは恐るべき高さだった。飛び始めが高い上に、そのまま、まっすぐ行く。K点付近ではランディングバーンからはるか高いところにいる。その高いところからドーンと落ちるわけではなく、飛行機が着陸するときのように降りる。空中で効率よくスピードを高さに変換しているから、最後の降りるスピードがゆっくりなのだ。だから、ヒルサイズを超えてもテレマークが入る。その高い飛行曲線により風の条件が悪いのも歓迎だが、良ければどこまでも行ける。技術・運動能力だけではなく、精神的にもタフで、体に悪いところもない。しかも、若くまだ伸びしろがあることが見て取れる。こんなにわくわくさせられるジャンパーが日本に現れるとは。日本人の枠・・日本のジャンパーはこういう感じというこちらの先入観を、陵侑は完全に飛び越えてくれた。

今日の252mのフライトは、スキージャンプを愛するすべての人の脳裏に刻み込まれたはずだ。新しいフライングの姿として。

シーズンの総合優勝はもうずいぶん前に決まっていたが、フライングの総合優勝とPlanica7という2万ユーロの賞金をめぐる争いは、陵侑とアイザイの間で熾烈を極めていた。金曜の個人戦で陵侑は2回目に失敗+悪条件の二重苦で伸びず、2本素晴らしいフライトをそろえたアイザイに逆転負けを喫していた(アイザイ、W杯初優勝)。この結果、アイザイがフライング総合ポイントのトップに立ち、陵侑との差はたったの4点となっていた。つまり、最終戦での陵侑とアイザイのうちの上位者がフライング総合優勝者となるという状況となっていた。(注・厳密には二人ともが入賞圏外になればそうでないケースや同点優勝になるケース(陵侑7位とアイザイ8位)もあったが、そうなる可能性は普通の条件ではあり得ないことに思えた。)

が・・終わってみれば最終戦は陵侑の圧勝に終わった。陵侑の1回目252mを見たアイザイに、力を抜けと言っても無理だろう。バラバラのジャンプになってしまって万事休す。それでもヒルサイズ近くまで行くのだから、アイザイもすごい能力なんだけども。

三回目の君が代を聞きながら、大きいクリスタルクーゲルを手にした陵侑を見る。二人のチャンピオン、クラフトとストッホを両脇に従えて・・・。現実離れしたこの光景なのだが・・一方で、今後、これを何度も見ることになるような気がしている。

土曜日の団体戦、1回目が終わった後、ロベルト・クラニェッツが最後のフライトを行った。偉大なフリーガーだった。空中の効率と感覚において、彼は歴史上最も優れたジャンパーの一人であったことは疑う余地がない。まさに“滑空している”と感じられる彼のフライトが大好きだった。しかし・・ルールとトレンドの変化により、彼の翼を活かせる余地は少なくなっていった。そして、膝の靭帯損傷。彼の引退と陵侑の252mは“フリーガー”の終焉を象徴する出来事だったと思う。今季の回顧として、次にそのことを書いて終わりにしたいと思う。

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March 17, 2019

小林陵侑、RAWAIRも制覇

最後の陵侑のフライトには痺れたなぁ。ほんま凄い奴だ、というより他ない。こういう修羅場をくぐりぬけて結果を残してきたクラフトが陵侑のプレッシャーに負けた。陵侑の絶対パフォーマンスがクラフトに「完璧に飛ばないと、負ける」と思わせたから、かすかに硬いフライトとなった。そして、完璧なフライトで上回る、か・・。

驚いたことに、ビケルスンの台はプロフィールが変わっていた。FISの指導だと思う。雪を盛ってフラット化してあった。この結果、以前のビケルスン攻略法―高さを犠牲にしても方向性を出すようなジャンプでは伸びなくなってしまったようで、大ジャンプには高さとスピードの両方が必要になっていた。ノルウェー勢は地元なのに四苦八苦していて、逆にそういうセッティングに新プラニツァで慣れているスロベニア勢が好調というおかしな構図になった。フライングが得意なはずの葛西や伊東の予選落ちもその影響だろう。

正直、フライング・フリークの自分としては、「ビケルスン、お前もか・・・」と残念に思う次第。つまり・・・これをもって「フリーガー」が活躍できるフライングの台はなくなってしまったということだ。ドメン・プレウツの今日の1回目のフライトには、ほんの少し留飲を下げる思いがあったが、それにしたって以前の浮き上がるようなフライトとは本質的に違っていた。そのフライトを見て、ドメンも大人になったなぁ・・・と思った。今日の彼の勝利は以前の勢いだけで勝ったのとは違う。次のプラニツァは彼の晴れ舞台になるかもしれない。

ちょっと驚いたのが、ポーランドのヴォルニーだった。彼は才能あると思っていたが、空中がここまで上手いとは思っていなかった。来期はトップを狙う位置に来そうだ。

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March 16, 2019

陵侑無双、再び?

ドイツの荒天は続いているが、ノルウェーの北の方はかなり安定しているようだ。
それにしてもRAWAIRは強行軍だなぁ。しかも予選も気が抜けないということでジャンパーへの負担は大きいだろう。見るほうにとっても過酷で、平日にすべてをチェックすることは不可能だ。

リレハンメルとトロンハイムをさらっと見たけど、陵侑対クラフトの構図がはっきりしてきた。やはり、というかヨハンソンは調子を維持できていない。あまりにもやりすぎなジャンプになってきている。この不器用さと、孤高のサッツ技術のいびつな組み合わせがヨハンソンの魅力でもあるのだけど・・・・。

トロンハイムの2本、そして昨日のビケルスンの予選を見る限り、陵侑の調子はかなり戻っている。ジャンプ中盤からの異常な伸びが戻った。ドイツ勢並みの高さから、クラフトやノルウェー勢のように伸びるという二律背反違反のジャンプ・・・速い初速、高さのゲイン、空中の効率のすべてがそろっている、と言うのは簡単だが、行うのは至難のはずなのだが。

トロンハイムでは地元の星、ステヤネンがラストジャンプを行った。しかも、神様が降りてきたかのように素晴らしいジャンプを2本そろえてトップに立ち、まるで出来すぎのドキュメンタリーのような展開となった。しかし・・・最後の陵侑は全く空気を読まずに無双ジャンプ(笑)。でも、あのクオリティのジャンプに負けたのなら、みんな納得でき、そのジャンプはステヤネンへの最高のエールとなったはず。彼の引退に関して、一ファンとしてはもったいなすぎるよーと言いたいが、今回終わり方とその時の彼の顔を見たら、やり遂げたんだなぁと納得した。彼のこれからに幸あれ、ですね。

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March 10, 2019

春の嵐の中でRAW AIR開幕

今週のドイツは連日、不安定な天気が続いている。ずっと居座っていた温かい空気に冷たい空気がぶち当たったらしい。突風とともに冷たい雨が降りつけたかと思ったら、急に春のような日差しが注ぐような感じ。オスロはここから800kmぐらいは北だけど、不安定な気候と無縁ではなかったようだ。これほどジャンパー単位で風の風向、強さ共に変化してしまうと、ウィンドファクターも雀の涙といった風情だった。横風の影響力と、新しいオスロの台特有のK点付近の下降気流の不運は均しようがない。団体戦でのライエのジャンプはその特徴的なもので、中間でいい向かい風が来てグッと体重移動したら下はエアポケットでほとんど前転しながら叩き落されてしまった。大きな怪我はなかったようで良かった。まぁ、今大会は何とか試合になっただけでも良しというところで、結果を論ずる必要はないだろう。

それにしても、今回はヨハンソンの好調ぶりが光っていた。風の影響を受けにくいジャンプができていたから、これは本物だ。地元での勝利、おめでとう。彼の場合は、この調子がRAW AIRを通じて持続するかどうかが課題となりそう。小林陵侑はサッツの流れが滞っている。重心が体の真ん中にない感じ・・・。地味にアマン、ピーター・プレウツの調子が上がってきている。フライングでの一発があるかも。あとは、オーストリアの若手、アッシェンヴァルトにブレイクの予感。今日のジャンプは2回ともチャンピオンレベルのクオリティだった。

(追記)まだ公式は出ていないが、今日の陵侑5位(45点)でストッホは13位(20点)ということで、両者の総合ポイントの差はちょうど500となったはず。個人戦は残り5戦。今回では決まらなかったか・・・と思ったら総合優勝が達成されたとの報道。そうか、ストッホが5連勝しても同点優勝になるという陵侑の勝利数(11)を上回れないため、規定により陵侑が総合チャンピオンになるということか。
この快挙を喜びたたえるのは、プラニツァで彼がクリスタルトロフィーを掲げ、君が代を聞く姿を見てからにしたい。

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March 02, 2019

アイザイに春が来た 世界選手権

旅行で家を空けていたため、世界選手権はライブでは見られなかった。

ユーロスポーツのオンデマンド配信でようやく要点だけを見たが・・・・総括すれば、アイザイにようやく春が来て、今回は陵侑の番ではなかったということだなぁ。アイザイのパフォーマンスはもうずいぶん前からチャンピオンレベルに達していたのだが、プレッシャーのある状況においてそれを発揮できなかった。今季はその問題点に改善がみられ、噛み合えば勝てる状況だった。それが、ここで起こったということだろう。一方、小林陵侑は(いつものアイザイのように)2回に1回しか成功しない状況になっていた。勝てる可能性があったラージヒル2回目は失敗と言ってもいいジャンプだったと思う。プレッシャーのある状況で思ったようなジャンプができないのは、彼の場合はジャンプの技術的問題だろう。結局、調子をここ一番に合わせられなかったということになる。いい経験になったはずだ。

それにしても、今回の異常な高温条件は日本選手にとっては厳しかった。ソチの時もそうだったけど、女子の高梨・伊藤のコンビはかなり影響を受けていたように思う。ゼーフェルトのノーマルヒルは雪のインランだから高温条件ではスキーが走らなくなり、パワージャンパーが有利になる。牡丹雪の降った男子ノーマルヒルの二回目は論外の状況だった。結果としては最もパワーのあるクバツキの金メダルということで順当とも言えるが、試合は壊れていた。陵侑は1回目にここ一番のジャンプが出て、それが裏目に出るという、不運としか言いようがない試合になってしまった。

それにしてもゼーフェルトの台は風の影響が大きすぎる。上の風の影響力が強すぎて、ウィンドファクターが全く効いていない。一方でゲートファクターは効きすぎな感じ。高温で風は巻いていたから、結果としてガラガラポン福引試合になってしまっていた。カンテの角度(α)11.5°がノーマルヒルとしてはかなり特殊なので、そのあたりが各選手のサッツの不安定さに繋がっていたのだろう。全体として、不条理感の強い大会となってしまって残念だった。

気を取り直して、最後のピリオドに目を向けよう。よほどのことがない限り、陵侑がクリスタルトロフィーを掲げる姿を見られそうだ。

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February 17, 2019

輝きが戻る

急に春のような陽気が来た。
日中は20℃近くまで気温が上がり、ドイツの台の中でもっとも暖かい場所にあるヴィリンゲンの台を維持するのは大変だったかもしれない。

今日の陵侑のジャンプは2本とも、良かった。特に二本目のジャンプは無双状態だったジャンプ週間前後のパフォーマンスに近いものだった。台との相性もあるのだろうが、こういう完成度の高いジャンプが一本でも出たことが大きい。ハンナヴァルトによれば、スキージャンプは自分への信頼が大事だそうだ。自分のジャンプがOKだと信じることができていれば、何も考えずに「そのままなるように」ジャンプをできるようになり、それがスピードをロスしないジャンプをする秘訣だと言う。ハニーはここ数戦の陵侑はそうではないと言っていたのだが、今日のジャンプは二本ともWahnsinn(英語のクレイジーに近い)との評価だった。これで、いいスパイラルに入っていくといいな。

アイザイ、また陵侑の無双に当たってしまい2位。どういうこと?実はこの二人はジャンプが似ているのかもしれない。そうだと自分がいい条件の時は相手もいいのでかち合うことになる。

小林潤志郎と伊東大貴もかなり復調してきた。世界選手権団体、楽しみ。ただ、ポーランドがちょっと強すぎるなぁ。ストッホ、クバツキだけじゃなく、ジラがスピードスター状態になっている。あんなアグレッシブなジャンプ、してたっけ・・・?4人目になりそうなヴォルニー、経験が少ないだけにプレッシャーがきつそう。こういう時には百戦錬磨のフラが頼りになるのだが、ちょっと調子が追い付かないか・・・。

ドイツはフライタークがV字回復。ガイガーも勝ったし、アイザイも好調。ライエ・ヴェリンガーの二人はノーマルヒルで強そう。臨戦態勢は整ったということだろう。

一方、オーストリアのクラフトが変だ。ここの台は彼は好きなはずなのに、何かスピードがないジャンプに終始していた。ハニーが言うところの「自分への信頼がない」状態に見えた。水の浮いたインランが合わなかっただけならいいのだけど。


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February 10, 2019

戦える感覚

ラハティの試合はいつも風との戦い。今回ぐらいの風なら御の字だろう。
ここは特殊なプロフィールだから、風条件によって序列が変わってしまう。向かい風のない時はパワー、向かい風のある時はスピードが必要なのは普遍的な傾向だが、ラハティではそれが拡大される感じがする。

今回は安定しない風のため、基本的にパワーが必要な、日本選手にはつらい状況だった。それでも土曜日の団体では3位に入った。上の2チームとの差は少しだった。ピョンチャンオリンピックの時よりも、今回の世界選手権では団体でも戦える感覚がある。今季は各チームともいまいちな感じなので、展開と陵侑の出来によっては一番いい色のメダルまでありそうだ。楽しみになってきた。

残念なことが一つあった。ノルウェーのタンデが転倒負傷して離脱してしまった。靭帯か半月板を痛めた可能性が大きいとのことで、心配している。またステヤネンも大転倒をして大事はなさそうだが帰国。一方でフォアファングはさらに良くなり、グラネルートが本格化の予感をさせるジャンプを続けている。ノルウェーはこの二人とヨハンソンに続く4人目のジャンパーが出てくるかどうかが鍵になりそうだ。

ドイツの若手、ハマンはいいジャンプをするなぁ。フライタークの不調は深刻なので、彼を切り札として逆転代表入りさせるという手があると思う。

スイスのアマンもずいぶんよくなってきた。そういえば、ハマンとアマンは紛らわしい。

土曜に団体で勝ったオーストリア勢は、全体的に良くなっている。ハイベックは当たりはずれはあるが、一時に比べたらずいぶんマシになってきた。久しぶりのシュレリーはサッツが当たった時はすごいパワーだった。若手もステップアップしているし、ベテラン勢が安定してくれば地元での金メダルもあり得るだろう。

今日のストッホは昨シーズンの強いストッホだった。このストッホを倒せそうなのは陵侑のみだが、ジャンプ週間当時の調子を取り戻す必要がある。今の状態では勝てない。

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