March 31, 2018

2017-2018シーズン回顧 競技の成熟がもたらした予定調和と格差

今季は個々の試合やジャンパーにはあまり触れずに、全般的なことに絞って回顧してみることにした。

ジャンプ週間、フライング世界選手権、オリンピック、RAWAIRと盛りだくさんなシーズンだったが・・・私のような日本人のいちスキージャンプファンにとってみれば、大きな盛り上がりもなく、なんだかスーと過ぎていったという感覚が否めない。マテリアル面でのビハインド解消と新戦力の台頭により、日本人選手の成績は昨シーズンより確実に上だった。多少、期待値が現実を上回っていたのかもしれないが(特にオリンピックに向けて)、日本人が活躍しなかったから盛り上がらなかったというわけではないように思う。少なくとも自分は、小林潤志郎の勝利だけでなく、日本選手は全般的に頑張っていたと思う。

では、なぜ盛り上がらなかったように感じるのだろう?

シーズンが終わって何気なく今季の成績を見ていて、一つ驚いたことがある。それは国別対抗のチェコとフィンランドの点数だ。団体戦の点数を除いた個人の獲得ポイントは、それぞれ、45点と19点であった。ロシアも55点しか取れておらず、アメリカの62点を下回っている。まさに壊滅的だと言えるだろう。

これは逆に言えば、上位6チーム+アマンでほとんどのポイントをスイープしたということだ。各チーム5人として計算上31人にしかならないから、ほとんどの試合で同じ選手が2回目に進んだということになる。

また、各試合の上位を振り返ってみても、序盤こそ日替わりな感じがあったが、12月以降はほぼ同じメンバーでトップ10を占めていて、大荒れのザコパネを除くと勝ったのはストッホ・フライターク・ヴェリンガー・ノルウェー勢だった。オリンピック以降の後半戦はストッホとノルウェー4人にクラフトが表彰台のほとんどを占めていた。

つまり、今季はパフォーマンスレベルの確固としたヒエラルキーが分厚く層状に形成されていて、勝つべき人が勝ち、その下に表彰台に届く選手が10人ぐらいいて、2回目に進める人もだいたい決まっている、という状態だったのである。これまでも少数の選手がものすごく抜けてしまうということはあった。しかし、これほど上から下まで動かないということは無かったと思う。天候条件の大荒れやものすごい風の幸運、不幸がなければ大きくは紛れない状況だった。

予定調和と言えば聞こえはいいが、まぁ平たく言えばいつも結果が同じで面白くないということになる。その、勝負に入れる10人に贔屓の選手が入っていなければ、なおさらだ。だから、少しづつ冷めていってしまったということなんだろう。

なぜそうなった?

まず、マテリアル面での差があったのではないかという疑念が浮かぶが、おそらくそれは違う。

逆に今季はスーツの審査がいちだんと厳しくなり、マテリアル面でのチーム間有利不利はかなり抑えられていたはずだ。オーストリアチームが不振に陥ったのは、おそらくだけど、昨季、彼らだけにあったスーツでのアドバンテージがなくなったことが大きかったのではないだろうか。一方、今季の日本選手にはマテリアル面での不利はほとんど感じなかった(スーツに関して言えば、感覚的にはアドバンテージすらあったように感じた)。おそらく、フィンランドやチェコ勢もほぼ同じレベルのマテリアルで飛んでいたと思う。それに、もしマテリアル面で大きな差が生じているのだったら、チーム単位でそれが起こるはずなのだが、今季に関してはそれぞれのチーム内での差も大きかった。

FISが取り組んできた、公平公正な競技を実現するためのルール作りは一段落を迎えたと思う。それは成功し、スキージャンプは非常に成熟した、公平な競技になった。体の違いによる有利不利は抑えられ(BMIルール)、条件の違いも抑えられ(コンディション・コンペンセーション)、今季はついにマテリアルの差もずいぶん抑えられた。

しかし・・・それに追随する形でジャンプ技術も進化、洗練化していった。安定したルールのもと、各選手の飛び方は最適化されていった。私は、その行き着いた先が、今季のような紛れのない状況だったとみている。

今季のノルウェー勢のジャンプやフライングをドイツ勢やポーランド勢のそれと比べたとき、飛行曲線がかなり近くなってきていることに気づいた。数年前まではフリーガーとジャンパーの飛び方には大きな差があったが、今季はトップレベルにおいてはほとんど差がないように見えた。みな、高くて速い。低い飛行曲線のジャンパーはいくらサッツで速くても伸びないし、それが遅いジャンパーはいくら高くても伸びない。それは、程度の違いはあれ、ノーマルからフライングまで同じだった。安定したルールのもと、規格化されたマテリアルと台で突き詰めていけば、同じ飛び方になっていくということなのではないか。

技術の均一化が極まってくると、勝負を決めるのは何か?それは純粋に運動能力ということになる。語弊は承知で言えば、陸上競技のようなものである。例えば走り幅跳びで自己記録に50cm差があればほぼ逆転しない。スキージャンプはそういう競技になってきているのではないだろうか。技術的に最適化が完了した選手の中で、アスレティック能力順に順位が決まるということである。

フィンランドやチェコの不振は、おそらく「伝統の技術」が最適化を阻んでいて、そのうえ選手人口の低下に伴ってアスレチック能力の高い選手がでてこなくなっているということなのだと思う。「伝統の技術が最適化を阻んでいる」のカテゴリーには、おそらく(ダミヤン以外の)スロベニア勢と葛西も入るのだろうが、彼らは非常に運動能力が高く独自技術に長けているためにまだポイントが取れているという風に認識している。しかし、今季、彼らのトップグループに対するビハインドは広がっていた。

日本チームにおいては今季、小林兄弟が台頭した。彼らはまだ技術的に完成されたジャンパーではないのに、である。彼らの身体能力が非常に高く、まだまだ伸びしろがあるということではないだろうか。今後も期待したい。

来期はどうなる?

今季の状況がFISにとってハッピーなのかそうでないのかは分からない。現状が競技としては素晴らしく、スキージャンパーにとって望ましい状態であることは確かだと思う。一方でここまでの寡占状態は競技のグローバル化とポピュラリティの獲得の視点からは望ましくない。ある種のギャンブル性はスキージャンプの魅力であり、大衆の熱を生む元でもある。それがあまりにも欠ける状況は見るほうにとっては嬉しくない。そんなこと言ったら、いったいどうせいちゅうねん、てホファーさんに言われそうだが。たぶん、このまま、下位チームが追い付いてくるのを待つという感じなんだと思うし、そうあるべきだろう。試合をエキサイティングにするための、競技者を無視したルール変更はあってはならないと思う。

技術・マテリアル系で、一つだけトレンドの変化を感じていることがある。それは、高身長選手の不利が少なくなりつつあるということだ。今期は大柄ジャンパーの代表と言えるステヤネンだけでなく、190cm以上あるゼメニッチも勝った。スーツの生む浮力が抑えられたことで、スキーによる浮力と飛び出し速度の重要性が増しているからだと思う。近年、スキーが短くなっていった理由は、長いスキーではサッツ後にスキーの上りが制御しづらくスピードをロスするからだと思われる。しかし、その短いスキーでは慢性的な浮力不足なのは明白だった。今季のステヤネンのサッツを見ると、長いスキーでもスキーをコントロールする技術に目途がついてきていているように見える。来期は高身長選手が長いスキーを使って浮力のアドバンテージを得るという、長身痩躯時代のようなことがあるかもしれない。もしかしたら増量して少し長いスキーを使う選手も現れるかもしれない。だから、ステヤネンが引退するとしたら、本当にもったいないと思う。この流れなら来季は彼が主役になってもおかしくないとすら思っている。

この身長トレンドの風向きの変化が、女子ジャンプにおいては高梨とルンビの関係性の変化に出たような気がするんだが・・・あと、アスレチック化の波は女子にも来ていて、これもルンビに有利に働いている。高梨がこれらのトレンド変化を跳ね返してトップに返り咲くには、相当な努力を要するのではないかと思う。

あまりまとまらない雑文・長文にお付き合いくださってありがとうございました。
来期も普通にジャンプが楽しめるよう、平和と健康を祈ります。
スキージャンパーの皆様、今季もありがとうございました。

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March 25, 2018

ストッホの祝日 プラニツァ最終戦

ドイツは今日夏時間に切り替わり、最後の寒波も去って春のような陽気が来た。

プラニツァの戦いは、木曜の予選は風が途中で大きく変わってひどいことになったが、金曜以降の本選はかなりの好条件だった。プラニツァは改修後、素晴らしい台になった。巨大なラージヒル、という印象は今年も健在で、すべてのジャンパーに公平なセッティングだった。またウィンドファクターの効きがよいので、多少の風は勝負に大きな影響を与えない。ただし、慢性的浮力不足の現在のレギュレーションにおいては、少々の失敗により高さもしくはスピードを失った時は、風が悪いと落ちてしまう。勝負に入るには2本完璧にそろえることが絶対条件になる。

個人的には、葛西の爆発に期待していたんだが・・・・2本揃わなかった。残念だけど、今季を象徴するような戦いだったと思う。団体戦の成功したフライト等を見る限りにおいて、ピーク・パフォーマンスは大きくは変わっていないと思う。ただ、今季は技術の方が安定しなかった。もし、能力的な低下があるとしたら、それは「余裕」の部分・・・技術面や条件面で何か問題があった時に力で何とかする下駄の部分・・・だと思う。

一方で、今日の小林潤志郎のフライトには驚いた。方向性を前に、スキーの引きつけをかすかに遅らせてスピードを維持する・・・・弟のいいところを吸収したようなフライトだった。何か掴んだとしか思えない。これでシーズンが終わってしまうのがもったいない気がした。

総合優勝や国別対抗に関してはもう決まっていたのだけど、フライング総合とプラニツァ7というRAWAIRの小型版みたいな戦いは結構、最後まで熱かった。フライング総合で3位、プラニツァ7で2位だったストッホは条件の良かった1回目にゲート下げで大逆転を狙い、それが見事に当たって、今日の試合に関しては大リードの勝利だった。プラニツァ7で昨日までトップだったフォアファングは2回目にゲートを下げたのだが、無風状態で226mと伸びず、ヒルサイズの95%を超えられなかったためにゲートファクターのプラスポイントも得られず、結果としてストッホの逆転を許してしまった。最終的な差は9.4点・・・くしくも得られなかったゲートファクターポイントと同じだった。ゲートを下げなければたぶん勝っていた・・・20000スイスフランが・・・。

フライング総合はステヤネンが念願成就というところだった。実は1回目に失敗して沈んでいた彼がフライング総合トップを守れるとは全く思っていなかった。ストッホが勝った場合3位にならないといけないヨハンソンがクラフトを超えられず、そして、タンデがきちんと飛んでノルウェー同士の潰しあいになった・・・・と思っていたら、なんとフライング総合ランクでステヤネンがトップになっていた。最後、風が横風に変わってトップ10の多くのジャンパーが伸びなかったことで、ステヤネンが今日の試合で5位まで上がっていたからだった。

ということで、ノルウェーチーム内は悲喜こもごもの様相を呈していたが、チーム全体としてはこれ以上ないシーズンだったと言えるだろう。

オリンピックシーズンのこの最後のジャンプは少し感傷的になる。これがワールドカップを飛ぶのが最後、というジャンパーが必ずいるからだ。引退を真剣に検討すると言っているアマンやステヤネンは、あの素晴らしいフライトが最後なんだろうか?ファンとしては、もったいなすぎるよ、と言いたい。ブレーキングトラックで、ジャンプを終えたファンネメルは明らかに泣いていた。彼も・・・?

シーズンを通して感じたことはいくつかあるので、それは来週のイースター休暇にまとめよう。

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March 18, 2018

ヨハンソン、初勝利 RAWAIRはストッホが辛くも逃げ切る ビケルスン

また、ヨーロッパは急に寒くなった。春に向けて緩もうとしている体に、この寒さはこたえる。
あと、寒暖差は風を招く。ビケルスンもクルクル回る風に翻弄されるような戦いだった。

しかし、真のスピードのあるジャンパーはあまり風に依存しないようだった。特に、下の方の風はあんまり関係ない。ストッホ、ヨハンソン、ステヤネンらは、上で叩き落されさえしなければ220までは行けるという感じだった。

団体戦のノルウェーの圧勝ぶりは白けるほどだった。世界最高のフリーガーが4人並んでいるのだから他の国の付け入る隙はなかった。しかし、団体戦そのものよりも、ヨハンソンとストッホのRAWAIR総合の争いが注目の的となった。ストッホの1回目、ずっと吹いていた向かい風が追い風に変わり、さすがの彼もゲート7からでは200mを超えるのが精いっぱいだった。その結果、ヨハンソンにとって絶望的と思われたRAWAIRの総合ポイントのストッホとの差が、55.7点に縮まったのである。距離で46mだから、個人戦でストッホが風で落とされるようなことがあれば逆転が起こりうるという差になったのだった。

今日は土曜よりはいくぶん、風が弱かった。相変わらず風向は一定しないが、許容範囲と言えた。ストッホはフライングのポイントがほとんどないので、1回目はヨハンソンよりもかなり前に飛ぶ。これがどう出るか・・と思っていた。もし、ストッホが飛んだ後に向かい風が出てゲートが下がるようなことがあれば、大きな点差がつく可能性が生じるからだ。しかも1回目のストッホは久しぶりに失敗と言えるジャンプで、風の助けもなく、223mに終わった。が・・彼にとって幸いなことに条件が大きく変わることはなかった。ヨハンソンはゲートを下げて勝負に出て差を詰めることには成功したが、39.3点もの大差が残った。

2回目のストッホのフライトは、少し硬さはみられたものの1回目よりはずっと効率の良いものだった。風の助けは無かったが、237mでランディングもバッチリと決めて、これでRAWAIRは勝負ありとなった。ヨハンソンは246mまでぶっ飛んで今日の勝利を手にした。最後のステヤネンはガチガチでちぐはぐなフライトだったなぁ。あれで230超えるんだから凄いんだけど。

今日の個人的一番のフライトはドメン・プレウツの2本目。ようやく、彼らしいジャンプが見られた。恐るべき才能だ。葛西のフライトは2本とも良かったがスピードがいまいち乗らない感じだった。ステヤネンと違うのはそこだけな感じがした。期待していた小林陵侑は弾けず。飛び出しスピードの違いに対応しきれなかったように思う。ここは、葛西のコーチとしての手腕に期待しよう。

ストッホはプラニツァの2戦を残し総合優勝を決めた。まぁ、今年は彼の年だった。国別対抗もノルウェーがドイツに1000点近く差をつけている。次のフライングでこの差が縮まる可能性は、まったくない。
ということで、あとは最後のフライングショウを楽しむとしましょう。

あ、、競技違いだけど、渡部暁斗のワールドカップ総合優勝は偉業だ。もっと称賛されるべきだ。他競技や昔と比較するつもりはないが、今のルールとフィジカル上位のトレンドにおいて、日本人がノルディック複合を総合優勝するのは、至難の業だと思う。

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March 15, 2018

RAWAIR 誰もストッホを止められない 

手短に。
リレハンメル、トロンハイムと平日の連戦。ライブで見るのは難しいのでオンデマンドで飛ばしながら見たけど・・・あれだけ風の運不運があり、そして2番手以下のジャンパーが凄いジャンプを出して、それでもストッホの圧倒的勝利か・・・・。一段下から、風が良くなくてもヒルサイズ越えとなると、他の選手はどうしようもない。

リレハンメルのクバツキは、これで勝てないなら仕方がない。昨シーズンのヴェリンガーのような状態だった。今日のクラフトの2回目は、昨シーズンのRAWAIRで無敵状態だった時と同じレベルのジャンプだった思う。それを軽々と上回ったストッホが凄すぎた。

ステヤネンの好調ぶりが光る。ヨハンソンと共にビケルスンでの爆発がありそう。あと、地味に、徐々にピーター・プレウツがトップに忍び寄っている。彼もフリーガー特性があるジャンパーなので、注目したい。

オスロでは良かったハイベックが、リレハンメルでは全然ダメだった。どういうことだろう。葛西はリレハンメルは良かったのにトロンハイムでは元に戻ったような・・・。プロフィール的に大きく違うようには見えないのだけど、フィーリングは違いそうだ。

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March 11, 2018

RAW AIR開幕 オスロ

今週はシベリアからの寒気が去り、春の予感が感じられる暖かい日々となっている。
暖かくなれば、風が出るのはしょうがないこと。今日のオスロの試合はひどかった。いつも思うが、新しいホルメンコーレンの台はプロフィールはいいのだけど、風が出ると巻いて下降気流が出てしまう。あれぐらい風のロシアンルーレット状態になってしまうと、結果そのものは風次第であり、それを論評する必要性はない。さすがのストッホも、物理には逆らえなかった。

ということで、今日は絶好調のストッホ以外の気になるジャンパーをピックアップして論じてみることにしよう。

ノルウェー勢は全体的に好調だ。ホルメンコーレンの台はどちらかというと力の要る、ノルウェー選手向きとはいえない台なので、ここで向かい風の助けなく団体戦で勝てたということ自体がチームの好調を示している。この後のリレハンメルからビケルスンはノルウェーのジャンパーに合っているので、RAWAIRはノルウェー勢によるストッホ包囲網という感じになりそうだ。特に今季のヨハンソンは半端ない。彼によるフライング世界記録更新にも期待が持てる。あと、若手のグラネルート、リンドビークもかなりのフリーガー適性を持っている。驚かされることになりそう。

ストッホの影に隠れているのだが、ポーランドではクバツキがいつ勝ってもおかしくない状態に見える。彼がフライングを攻略する可能性、特に高さが必要なプラニツァでの、マリシュ全盛期のようなとんでもない高さのフライトに密かに期待しているのだが。

団体戦で久しぶりに表彰台に乗ったオーストリア勢は、遅ればせながら調子を上げてきた。クラフトはまだバラつきが大きいが、ハイベックは2シーズン前の状態にかなり近づいていると思う。また、シュレリーに明かな復調の兆しが見える。今期は勝負に入るというところまでは行けないだろうが、来期へのモチベーションを掻き立てられるようなジャンプ・フライトがプラニツァまでに一本でも出ればいいと思う。

一方、ドイツ勢はお疲れモードという感じになってきた。ヴェリンガーは左に回転する悪癖が出始めたので、厳しい戦いが続きそうだ。どちらかというとフライタークの方が期待できそう。フリーガー特性のあるガイガーが今期の好調ぶりをビケルスンで見せられるかどうか。

土曜の団体戦、日本は5位だったが、上位との差はかなり縮まった印象があった。佐藤は能力的にはW杯でも十分に通用することを端々に感じさせるジャンプをしている。経験を積んで、台ごとにジャンプのアグレッシブさを調節する能力がついてくれば、上位に定着できそうだ。小林陵侑は絶好調を維持している。彼のフライングでのパフォーマンスにすごく期待している。今日は結果は残念だったが、葛西も劇的に良化していた。このまま、なにもいいところなくシーズンを終わるということは、無いと思う。

その他のジャンパーでは、フランスのリロイドは高いポテンシャルを秘めている。スロベニアのバートルやゼメニッチ、オーストリアのアイグナー、アメリカのヴィックナーあたりと共に、フライングで驚くようなパフォーマンスを見せるかもしれない。

(追伸)
ヒルデが今シーズン限りでの引退を表明した。今シーズンもコンチネンタルカップで活躍できているように、力はまだ残っている。しかし・・・ノルウェーチームにおいて、彼がナショナルチームに席を確保できる可能性は、ほぼなくなっていた。彼は技術上位のテクニシャンタイプのジャンパーであり、今のフィジカル上位のトレンドを鑑みれば、引退という選択もやむなしと思う。愛すべきジャンパーの今後に幸あらんことを祈る。キャラクター・人格・スキージャンプ技術・スポーツにとどまらない多才さを兼ね備えている彼のことだから、指導者としてはもとより、もっと外の世界でも活躍できるだろう。

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March 04, 2018

リスタートのワールドカップ ラハティ

オリンピックが行われている頃、ヨーロッパはシベリアからの寒気に覆われていき、先週は極寒の日々であった。天気はいいのだが、ただただ、寒い。ヒーターをガンガンにかけると室内はカラカラになる。ウイルス性の風邪が蔓延するのも無理はない。

スキージャンパーたちはほとんど休みなしにワールドカップだが、選手・コーチも含めて体調不良の声が、チーム問わずに漏れ聞こえてくる。仕方ないと思う。

ラハティの台はピョンチャンとはかなり性格が異なる台だ(昔の記事参照)。なので、土曜の団体戦はさすがのノルウェーも苦戦するだろうと思った。この台で追い風条件でアグレッシブすぎるジャンプをすると、とんでもなく短いジャンプになることがある。案の定、ノルウェーはタンデが一回目にそれをやってしまって、ドイツに完敗した。逆にこういうフラットな台ではドイツは崩れない。

それにしてもストッホのジャンプはシャレにならん・・・。ひとりだけ違うリーグに入った。こうなってくるともう、彼の総合優勝は動かないだろう。競っている相手がフリーガー系ならまだ可能性があるのだが、今季はそういう感じでもない。

この台で小林陵侑が表彰台まであと一歩まで行ったことには、価値がある。じきに表彰台には乗るだろう。

さて・・・来週はRAWAIRか。予選も含めて気を抜けないサバイバルレースだが、みんな大丈夫だろうか。

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February 19, 2018

ノルウェー、悲願達成 ピョンチャンオリンピック スキージャンプ団体

素晴らしい戦いだった。
これ以上ないほど公平な条件にも助けられ、スキージャンプの競技としての成熟と競技レベルの高さが明確に示された。上位3チーム(ノルウェー・ドイツ・ポーランド)の1回目12本で失敗といえるジャンプは1本もなかった。ハイレベルな力と力のぶつかり合いだった。1回目終わって、この3チームは5点差の範囲にひしめいていた。

この3つの国の人たちがうらやましかった。

勝負を決めたのは、ノルウェーのトップバッター、タンデの2回目だったと思う。あのジャンプは、現代スキージャンプの一つの究極だと思った。語弊があるのは承知で表現するが、サッツでは「何もしない」で、スピードを「持っていく」というジャンプである。彼個人としては、これが個人戦で2回出せていたらというところだと思う。ここで生まれた大きなリードが、ノルウェーの後のジャンパーを楽にさせた。もともとチーム力に他国との差があり、台の特性にアドバンテージがあり、条件は公平。こうなると紛れは起こらない。びっくりしたのは、ノルウェーはオリンピック団体金メダルが初めてという事実だ。それは嬉しいことだろうなぁ。

ドイツ・ポーランドの銀争いは、最後0.6点差でヴェリンガー対ストッホの頂上決戦・・・・そんなんアリ?っていうようなシチュエーションだった。さすがに両者ともガチガチだったなぁ。ストッホはおもいっきり踏み外してしまった(あれだけ外してあそこまで行くのもすごいけど)。彼も人間だった。

ポーランドでは、弱点と思われたフラの2回目が美しかった。最適化の極致とはこのことで、特殊な身体能力がなくてもここまでは飛べるという見本だと思う。このジャンプは、私の中ではロイツルがジャンプ週間を勝った時のジャンプと、宮平がプラニッツアで3位に入った時のフライトに比肩するものとして、記憶に残るだろう。

オーストリア、スロベニア、そして日本にはチャンスがなかった。失敗していないのに、まったくメダルが見えない戦いとなってしまった。上位8チームの1回目と2回目の順位がきれいに1位から8位で同じだったのは、今日の戦いが紛れの起こりようのない実力勝負だったことを示している。たぶん・・・だからこそ選手たちは悔しい。今回のオリンピックは長年王者に君臨してきたオーストリアにとっては屈辱的な大会になった。ハイベックの2回目は一昨年のいい時を彷彿とさせるものだったが、これが個人戦の2回目に出ていれば・・・・。とはいえ、次のスカンジナビアシリーズ、彼はかなり期待できるだろう。

そして、日本。陵侑の1回目を見て、この調子をフライングに持っていければ絶対にいけると思った。これは、実はスヴェン・ハンナヴァルトの言葉の受け売りだ。彼は陵侑のジャンプをものすごく高く評価している。日本でもっとも、上に述べたタンデのジャンプに近い。

葛西・・・結果としては残念だったことと思う。今日の2回目は大会を通じて一番いいジャンプだった。正しい方向には進んでいると思うので、一歩一歩上がっていって、3月のフライングで大爆発して欲しい。竹内・伊東も2本ともいいジャンプだった。シーズン序盤のつまづきから何とかここまで持ってきたが、すべてが整うとまではいかなかったのだろう。とりあえずは休んで、次につなげていって欲しい。

終わっちゃったなぁ・・・。

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February 17, 2018

ストッホ、ヴェリンガーとの力勝負を制す ピョンチャンオリンピック ラージヒル

今日の試合はほぼ無風、時折追い風の、予想外ともいえる好条件だった。
多少落下型で風の影響を大きく受ける台とはいえ、ここまで公平だとそう大きくは紛れない。

一方で、ちょっとドラマに欠けたかな・・・・日本人的には少し蚊帳の外感を否めなかった。日本人選手は、みんな風の条件が微妙に悪かったなぁ。ただ葛西の1回目のジャンプは、確かに風の条件は良くなかったけど、それで2回目に進めないというほどのものではなかった。単に・・・・カンテに力が伝わらないジャンプになってしまった。長年の葛西ファンとしては残念というより他に述べる言葉がない。

小林陵侑、小林潤志郎、竹内のジャンプは6本とも成功の部類だと思う。特に竹内の2回目は追い風条件のお手本のような、技術的に高度なジャンプだった。今日の条件では精いっぱいなのではないか。潤志郎と陵侑の地位が逆転した形になったのは、やはりこの台がフリーガー系のジャンパーに向いているということなのだと思う。

この試合は、一言でいえば、ずっと踏み外し続けたストッホが、最後にサッツがようやく当たったことで、何とかヴェリンガーを抑えきったという試合。彼らに勝てる可能性があったフォアファングとタンデは2回成功させることができなかった。一方、連続銅メダルに輝いたヨハンソンは、台がフィットしたこともあるけど、2本とも本当にいいジャンプだった。ジャンプ後半のスピードが素晴らしく、追い風でも最後伸ばせるのはすごい。この調子なら3月のフライング、彼が総なめしてもおかしくないと思う。

予定調和もたまにはいいのかな・・・・なんだか、すぅーと終わっちゃった感じ・・・。

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February 13, 2018

ラージヒル展望

男子ジャンプは本番ともいえるラージヒルに移る。
トレーニングが始まってしまうと後出しじゃんけんになるので、今日のうちに展望を書いておく。

といっても、去年「スキージャンプ、台とジャンパーの相性についての考察」のシリーズに書いたことは、そっくりそのまま生きている。今年のCertificateに記載されている台のパラメーターは、定義が変わったことによってヒルサイズの値が少し大きくなった以外、以前のものと変更が無かったからだ。

台の特性は、基本的には、大きいけどいくぶん古風。アプローチの形状も含めて、結構、大倉山に似ていると思う。日本選手が充分に戦える台だ。

今年の強さと経験値から考えて、ストッホが勝ってしかるべきという気はする。ただ・・・ノーマルヒルと同じで「地の利」があまりないのが気がかりだ。台にフィットするかどうかがカギ。ノーマル金のヴェリンガーも、この台、特に、そうなりそうな向かい風条件では有利とはいえない。逆に風が後ろから横風だったら彼が本命と言っても差し支えない。

向かい風条件なら、ノルウエーの3人、タンデ・フォアファング・ヨハンソンの3人の誰かが金メダルになりそう。表彰台独占まで可能性がある。

大穴はクラフト。ヴェリンガーと同じで、既に何か思い出している。大化けする可能性があると思う。

忘れてはいけないのはアマン、そして、ピーター・プレウツ。プレウツは明らかに復調している。ただ、この二人は金はちょっと厳しいと思うなぁ・・・・。フライタークは調子のピークを過ぎた感が色濃い。厳しいか。

復調していると言えば、葛西。本当はもう少し時間が欲しいところだと思う。たぶん、3月のフライングシリーズは大活躍すると思うが、今大会はかなり厳しいのではないか。台は合うはずなので、うまくかみ合って一気に上昇する可能性は残されていると思うし、そうであって欲しい。日本勢では小林兄弟の「ミックスアップ」に期待する。ノーマルでの経験がいい方向に出ることを期待しよう。

日本の団体、おそらくカギを握るのは伊東大貴だろう。だが、ノルウェー・ドイツ・ポーランドのメダル争いに入っていくには、かなりのポジティブ・スパイラルに入ることが必要になりそう。それほど、3強までの差は大きい。

とにかく、風条件、気象条件がまともであることを切に願う。あまりにも不条理なことにはなって欲しくないし、全員が怪我なく終われることが最も大事だと思う。

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February 12, 2018

ルンビー、 世界選手権の雪辱を果たす スキージャンプ女子 ピョンチャンオリンピック

男子のノーマルヒルよりはいくぶんマシな状況だったと思うが・・・風はクルクルと回っており、飛んでみないとわからない状況だった。いわゆる、風の回廊、の中での試合だった。

ルンビーの1回目は、かなりの巻き風の中を飛ばされたと思う。それをこらえたことが、2回目の大ジャンプにつながった。強かった。脱帽です。

しばらく女子ジャンプを見ていなかったが、ルンビーだけではなく、全体の技術レベルがグッと上がっていた。今日の高梨のジャンプは2本とも素晴らしかったと思う。条件も、アルトハウスほどの幸運ではなかったにせよ、安定した良い方だった。それでも、ルンビーとは差があった。よほどのことがない限り逆転はしない、そういう差だった。今日の銅メダルをもたらしたパフォーマンスは、彼女としても納得のできるものだと思う。おめでとう!

4位のアバクモワ、5位のフォクト・・・彼女たちの強さにも目を見張った。今日のフォクトの姿にアマンと同じものを見た。もし、彼女にアルトハウスと同じぐらいの風が来ていたら、おそらくルンビーを脅かしていたと思う。たまたま、では金メダルは取れないということなのだと、再認識した。

一方で、本当にどうしようもない不運ってある・・・・伊藤や岩淵は精いっぱいの、素晴らしいジャンプをしていたと思う。もっと上位に来てもいいのになぁ。スキージャンパーにとって、オリンピックは残酷でありうる。


絶対の力を持つ選手が最高のパフォーマンスをしたとしても、勝てるとは限らない。それが、スキージャンプ。
オリンピック個人の金メダルを取れていない、チャンピオン級スキージャンパーの名前を列挙しておきたい。それを見れば、ジャンプ競技においてオリンピックで勝つことが、天地人の3要素が揃ったときにのみ果たされる僥倖であることがわかるから。

シュリーレンツァウアー、アホネン、マリシュ、ゴルトベルガー、ピーター・プレウツ、マルティン・シュミット、ハンナヴァルト、ペテルカ、フロイント、クラフト
彼らのワールドカップ通算勝利数265勝、総合優勝17回。

ソチでの高梨とは違い、今回のルンビーには天の時と地の利が揃っていた。自身のパフォーマンスが向上した時、競技のトレンドが自分に合い、落下型で自分のスタイルに合った台でオリンピックがあった。だからといって、勝てるわけではない。それを勝ち切ったルンビーは、すごい。

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