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June 05, 2017

ハイレゾ

5月初旬まではものすごく寒かったのに、このところ急に気温が上がり夏のような気候になっている。寒気と暖気が当たって各地で雷雲が発生し、雷、集中豪雨、突風、雹。この感じは日本も同じだそうだ。地球規模で熱の流れがおかしくなっているんだろう。

久しぶりにオーディオのことを書いてみたい。アンプの真空管をEL34に換えてからは、家のオーディオシステムの音におおむね満足できている。面白いことに、家の音が良くなるとスマホで音楽を聴かなくなった。その音が嫌いになったわけじゃないのだが、それを聴くことで音楽を聴くためのキャパシティーを消費したくないのである。

ただ、そうなるとスマホやiPadで聴きなじんだTIDALの音源を聴かなくなってしまうことになる。それらを自宅システムでも聴きたいという欲求が高まり、ついにSSDを入れた専用パソコン+Roon+USB-DAC/ヘッドホンアンプを導入することを決意。しかし、ULTRA DACとかDAVEとかe32とかはどう逆立ちしても買えないので、限られたお金で贖える範囲で、クオリティ面で妥協せず、しかも後々までつぶしが効くようなものは何かを必死で考えた。結局、民生用ではなくプロユースのあるDACを選んだ。

そのDACの出す音は、鳴らし始めから品位と情報量は充分に高く、それらの点では満足だった。ただ、エージングが進んでも音の生気というか躍動感が出ず、静的な表現にとどまった。ドライブを定評のある850EVO/500GBに換装したとはいえ、普通のノートパソコンをトランスポートとしてストリーミング音源を鳴らしているのだし、こんなものかと思っていた。しかし、CreekのCDプレーヤーから光ケーブルでデジタル入力してもその印象は変わらなかった。これはソースの問題ではなく、DACの問題のような気がした。

プロ機は根本的な性能に妥協はないが、民生用とは違って配慮が行き届かないところがある。電源はその最たるもので、標準はいわゆる普通の12VのACアダプターだ。これが原因とにらんで、ノイズ対策されたものに換えた。

化けた。ものすごい変化量だった。今までのはなんだったんだというぐらい、霧が晴れたようになった。特にCDからの入力の音が劇的に良くなり、生気を得た。バックグラウンドが静かになることによって音楽が浮かび上がり、また、リズムが繋がるようになった。おそらくアナログ系におけるノイズと時間軸上の揺れが無くなったのだと思う。これなら、CDをプレイバックするときも、内臓DACよりこちらを通す方がいいとはっきり言える。ここ10年のDACの進化が感じられる音だ。

しかしUSB入力の音はずっと変化量が少なかった。つまりこちらではソースレベルでのボトルネックがあるということだ。で・・・ノイズキャンセリングを行うフィルターをUSB入力にも挿入した。

狙い通りにうまくいった。CDとUSBの音質差が、ゼロではないがかなり近づいた。まだいくぶん、CDの方が力があって音楽が楽しく鳴るが、パソコンからの入力でここまで行ければOKだと思う。この上に行くにはブリッジ機器やデジタルトランスポートを入れるしかないだろう。

自分にはこれで充分だと思う。ストリーミングで、膨大なライブラリをすべて良質な音で聴けるのだから。現状の音はハイエンドな音とはたぶん違う。リッチとかゴージャスとか煌めきという言葉はけっして出てこない。でも、静かでまっとうで素直で、自然に流れる音。それで十分だ。このDACはパラメトリックイコライザーも使えるので、音の作りこみはおいおいやろう。今のところは部屋の定在波の63Hzとその倍音126Hzをそれぞれ、4dB/2dB落としているだけである。

次は巷に氾濫しているハイレゾ音源を再生してみたくなるのは人情である。幸い、スペック上はとりあえずなんでも再生できることになっている。

いろいろ、ダウンロードして再生してみた。が・・・・うーむ、どう言えばいいのだろう。音楽的満足度の「平均値」において、ハイレゾ音源がCD音源(44.1KHz/16bit)をはっきり上回るとは、残念ながら言えない。しかしその「偏差」は格段に大きい。言い換えれば、どうしようもないものから、CDでは到達できない高みまでの広がりがあるということ、つまりは、当たり外れが大きすぎるということである。コストパフォーマンスは悪いと言わざるを得ない。確かに、素晴らしい音源はある。基本的には、24bitになるだけで非常に生っぽくなってリズムが流れるようになり、サンプリングレートが上がると音にいい意味で隙間ができるという感覚がある。個人的にはサンプリングレートは96KHzより上になってもあまり恩恵を感じないが、これは鳴らしきれていない(その隙間を実体感のある空気で埋めることができていない)だけかも。

話題のDSDも試した。DSDの音はかたち(輪郭?)がPCMとは異なる印象で、特に低音の実体感が違う。PCMにある隈取り感がないので、私にはDSDの低音の方が自然に感じられるが、ここは巷の評価と逆のようだし、DACによっても違うはず。それにどうも、DSDの場合は録音自体がDSDであるかどうかが鍵のようである。またDSDプレイバックの問題は、イコライザーやトーンコントロールが使えなくなることだ(少なくともこのDACでは)。デジタル領域で何もできないのでは使い勝手が悪すぎるし、それを可能にするためにPCMにコンバートしてしまったら元も子もない。とりあえず、ハイレゾのフォーマットは96KHz or 88.2KHz/24bitのFLACでいいと思う。

一方で、一聴してすぐにダメとわかるハイレゾ音源が少なからずある。特にアナログマスターからリマスターしました!という音源でマスターの鮮度に問題があったり、音圧を稼いでビットを埋めたようなもの(特に邦楽!)はガッカリを通り越して・・・・これ以上は言わない。しかし、こういう音源が存在する限りハイレゾは定着しないだろう。悪貨は良貨を駆逐する、を地で行っている。

現状、自分にとってはTIDALのCD音質が必要十分で安くて安全だというのが結論だ。44.1KHz/16bit音源の35年の蓄積と熟成は伊達じゃないということ。それでカバーできないのが邦楽なんだが、日本ではCD音質のストリーミングはおろかダウンロード販売もしないし、困った。圧縮音源でもそれなりに楽しめることは知っているが、それを中古CDよりも高い値段を出して買う気には全くならない。邦楽は中古CDに頼るよりほかないか。日本の音楽産業は、著作権という亡霊を守ろうとするあまり、音楽家と録音製作者が作りあげた音楽が本来のクオリティでリスナーに届かないように仕向けてしまっている。それが根本的な間違いだといつになったら気づくのだろう。

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