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April 12, 2017

スキージャンプ 台とジャンパーの相性についての考察 (2)ジャンプ台の形と特徴とは?

各国各地にあるスキージャンプヒル(以下、簡単にジャンプ台と表記する)はそれぞれ独自の形状を持っている。それを、ここはフラット、ここは落下型、ここは古いタイプ・・・などと表現するわけだが、そもそも何をもってそう言うのだろう?とにかく何かが「標準的な台」と違っているからそう言うのだろう。ではジャンプ台の標準的なかたちとはどういうものなのか?実は知らないのである。そこでまず、ジャンプ台の基本形状について調べてみることにした。

すぐ分かったことは、現在ワールドカップの試合で使用されている台の形は、かなり似通っているということだ。大きさ(HS/ヒルサイズ)の同じジャンプ台ならば、ほぼ一緒と言ってもあながち間違いではないぐらいだ。

それは、国際スキー連盟(FIS)がかなり厳格にジャンプ台の形状をコントロールしているからである。FISはRule 411と呼ばれるジャンプ台の形状についてのルールと、それに付随する形でStandards for the Construction of Jumping Hills(ジャンプ台の設置指針)を制定している。この指針では、エンゲルベルクで2006年に行われた研究に基づき、現在のジャンプ技術における、ヒルサイズと飛び出し速度・カンテの角度・ランディングバーン角度の関係の望ましい範囲などが明確に示されている。そして、FISの監査人が定期的に各国のジャンプ台を訪れ、台の要素(ジオメトリック・パラメーター)がその望ましい範囲内に入っているかどうかチェックする。その監査に合格して初めて、その台にFIS主催の試合の開催許可証(Certificate)が発行されるのである。つまり・・・各国のジャンプ台はFISのスタンダードを満たすように半ば強制的に“均質化”されているのだった。

とはいえ、その“望ましい範囲内”においては台の形は異なっている。また、台の大きさに従ってそれぞれのパラメーターの望ましい範囲も変わる。この微妙とも言える差が、ジャンパーの方から見ると決定的な差として感じられるらしい。

なぜこんな話を枕に置いたかというと、そのFIS発行のCertificateが、台の特徴を読み解く鍵となる情報を提供してくれるからだ。このCertificateは公開されており、インターネット上ではBerkutschiのジャンプ台紹介ページ(http://berkutschi.com/de/front/hills)で簡単に手に入る。そこには、それぞれの台のパラメーターが事細かに記載されていて、これを理解できれば台の特徴がわかるようになっている。

観戦者にとっては、すべてのパラメーターを知る必要はないと思う。特に重要と思われるのは以下の6つのパラメーターである。それらをひと通り説明してみよう。図1にそれぞれのパラメーターが台のどの部分のことを言っているのかを示しておいた。


Fig1
図1 ジャンプ台の形状と重要なパラメーター


HS(ヒルサイズ)
解説の必要はないだろう。台の大きさを示す。実際は非常にややこしい計算式があるのだが、まあ要は飛び出し位置からジャンパーが安全に立てる傾斜があるところ(L点)までの距離(直線ではなく、台の形状に沿った距離)である。ちなみにK点は飛距離点の基準になる点である。

h/n
飛び出し位置とK点の高さの差(h)と飛び出し位置からK点までの水平距離(n)の比である。もし高さhが57.5mで水平距離nが100mならばh/nは0.575となる。この値が小さいほど比較的水平距離が長くフラット、大きいほど落下距離が大きい落下型の台ということになる。台の基本形状を示すパラメーターである。この値はノーマルヒルではだいたい0.550、ラージヒルでは0.575、フライングヒルでは0.600ぐらいである。つまり、基本的に台が大きくなるほど落下型になるということである。飛んでいる時間が長くなればそのぶん重力加速度で下に落ちるのだから、大きな台ほど高さが必要になるのは当然といえる。

α
飛び出しカンテにおける角度。通常、10°と11°の間である。誤解している人が多いのだが、カンテは下向きであり、上向きではない。この角度は飛び出した後の飛行曲線およびジャンパーの感覚に大きな影響を与えるため、特にジャンパーにとっては重要なパラメーターである。αはラージヒルでは11°が基本で、これがそれ以下のジャンプ台(カンテが少し水平に近い)では飛行曲線に上向きの修正が入る感じとなる。

βとβL
ランディングバーンの、K点とL点における角度。βはだいたい32°から38°ぐらいの間で、βLはそれより2~3°少ない。この角度が少ない方がランディングバーンの勾配が緩い、つまりフラットということになる。おそらく、ジャンパーにとっての台の性質を決定づける重要なパラメーターである。感覚的にはh/nよりも結果に与える影響力が大きい。最近、FISはβを小さくしようとしているように思う(理由は後述)。また、βとβLの差が大きい台はL付近で急激に平らになる、つまり飛距離がヒルサイズに近くなるとランディングが難しい台ということになる。

Vo
最高の能力を持つ仮想ジャンパーが、理論上K点に到達するのに必要な飛び出し速度を秒速で示す。ラージヒルではだいたい、秒速26m付近(時速換算では93.6Km)となっている。しかし、現在のワールドカップの試合における実際の飛び出し速度はその値よりもかなり低いものになっている。これは、現在の世界レベルのジャンパーたちの能力が、2006年の測定に基づいて設定された仮想ジャンパーの能力を大幅に上回っていることを示している。この値が小さい台は低速台、大きな台は高速台となる。

これらのパラメーターの違いが台の形状の違いとなる。基本、HSとαが同じとき、h/nやβが小さいほど台はフラットであり、逆にh/nとβが大きいほど台は高さと勾配のある落下型である。フラットな方が遠くに飛ぶにはスピードが必要になるから、結果的にVoが大きくなる。逆に落下型だとスピードがなくても落下による距離が出るので、Voが小さくなる。つまり、実はVoを見るだけで台の性格がわかるということになる。?マークがいっぱい浮かんだかもしれない。これについては後で具体的に触れることにする。

現在の標準的なラージヒルのパラメーターはこんな感じだと思う。

HS(m) h/n β/βL(°) α(°) Vo(m/s)
標準LH 137 0.575 34.0/31.3 11.0 26.40

実はこのパラメーターは今年FISから発行された、大倉山の冬限定Certificateに書かれているものそのものである。雪が豊富な札幌は、標準仕様を雪で作ってしまえるのだろう。最近更新された台は全てこの標準に近いパラメーターを持っている。FISは仕事をしているということだが、標準化をやりすぎると台のバラエティを失わせることになるからほどほどにとも思う。話がそれてしまったが、とにかく、この例よりもh/nやβが小さい台はフラット、逆は落下型という風に判断できるということである。βの違いについては、後に出てくる図3を参照するとわかりやすいかもしれない。

スキージャンパーのタイプについて、に続く)

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