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April 14, 2017

スキージャンプ、台とジャンパーの相性についての考察 (4)ジャンパーと台の相性について

では、このジャンパーたち、仮想クラフト、ヴェリンガー、葛西が違うタイプの台を彼らの飛行曲線で飛んだらどうなるかを見てみよう。元の仮想台(灰色)とh・nが同じでカンテの角度αも同じ、しかしランディングバーンの角度βだけが異なるというふたつの台を新たに設定してみる。すなわち、図3のようにβが小さい、よりフラットな台(オレンジ/flat)と、βが大きい、より落下型の台(ピンク/steep)である。この図では灰色・オレンジ・ピンクの台のβはそれぞれ34°・30°・38°となっている。現実にはここまで差がある状況はないのだが、ここではわかりやすさのためにデフォルメすることにする。


Fig3
図3 βの異なる3つの仮想ジャンプ台


これに、図2の飛行曲線を重ね合わせてみる(図4)。結果は一目瞭然だと思う。よりフラットな台ではヴェリンガーがもっとも遠くに到達する。低い飛行曲線の葛西は早めにオレンジのランディングバーンと交差してしまっている。逆により落下型の台では、ヴェリンガーはスッと落ちてしまうが、落下角度の浅い葛西はLのはるか向こうまで到達できる。フラットな台では高さが、落下型の台では前に進むスピードが重要だということを示している。これが、台とジャンパーの相性の本質である。


Fig4

図4 仮想ジャンプ台を3タイプのジャンパーが飛んだ時にどうなるか


実際の台ではβの差は4°程度(この図の半分)しかないのでもっと微妙な差しか出ないだろう。でも、勝ち負けは数mの範囲で決まるのだから、台のちょっとした違いによって、結果に決定的な違いが生まれることがあるということは、これで了解できるのではないかと思う。したがって、どのような台でも安定した成績を残すためには、台の特徴を把握しサッツの方向性を変えて最大限の飛距離を得られる飛行曲線を選択することができなくてはならないのだ。

実は、この図を見てわかることがもう一つある。台がフラットになればなるほど飛距離が出なくなり、逆に落下型だと飛距離が伸びることだ。フラットな台では最もパフォーマンスの良いヴェリンガーがLに到達できるよう、飛び出し速度を上げなくてはならない。そのために基準の飛び出し速度Voが大きくなる。逆に落下型の台では、飛び出し速度を抑えて葛西が飛びすぎないようにしなくてはならないため、Voが小さくなる。これが、Voを見れば台の性格がわかる理由である(直接比較はHSとαが同じ時にしかできないのだが)。また、落下型の台においては、飛行の角度に違いがあると飛距離の差が大きくなる傾向も見て取れる。これは条件が良い時に飛びすぎになりやすいということを意味する。結果として、ジュリーは落下型の台での試合の際、安全のために飛び出し速度をさらに遅めの設定にせざるを得なくなる。しかし、その状態で条件が悪化すると、今度は逆にとんでもなく飛距離の出ないジャンプが出てしまうことになる。これが落下型の低速台では試合が不安定となる理由である。試合を安定化してジャンパーの安全を確保するため、最近FISはβを小さくするように指導しているようだ。マテリアルの進歩によってジャンパーの落下角度が浅くなり、そのぶん最適なランディングバーンの角度も浅くなってきているのだろう。

現実の試合で起こったことを検証してみる、に続く)

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