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July 09, 2016

JJ EL34

音楽を聴くという行為はけっこう高度な作業だと思う。
聞き流すのではなく、真剣に聴いて内側で感じること、のことを言っている。正直に白状するが、私は音楽を聴くことが苦手だ。特に自分の関心というか意識が別のところにとどまっているときに音を聞いても、その表面をなぞるだけで「音楽を聴いた」ことになっていないのである。

それは生の音楽でも同じ。こっちの受け入れ態勢ができてないと、チケット代が無駄になってしまう。

最近、ずっとそういう状態だった。この、自分の、関心を複数のものに振り分けることのできない性質に辟易とする。最近よく発達障害という言葉を聞くが、これはその一種なのかもしれないな、とふと思う。まずいのは関心の対象がどうにも思い通りにならない仕事のことだったりするときである。それがずーっと居座って、他のことに手がつかず、どんどん消耗してしまう。そういうときこそ、いい音楽を聴いてどこか別のところに飛んでいき、活力を得たいと思うのだが・・・。そうなっちゃうと逆に全く音楽を受け付けなくなってしまう。

音楽って癒されるものじゃないのかなぁ・・・・。うちの装置の出す音が厳格すぎる?うーむ、もっと嘘でもいいからリラックスできるような音、聞き流せる音が出るシステムを目指した方がいいのだろうか、なんて思ったりする。

それでも、家で音は適当に鳴らしてはいた。が、肝心のリスナーは心ここにあらず。装置がかわいそうだ。そうこうしているうちに、オクターブの一番左の6550 winged -C-が不安定になってきた。音も冴えない。アンプがへそを曲げてしまったようだ。

球を交換するしかないが、スベトラーナブランドのwinged -C-ラベルはもうほとんど入手不能になってしまった。特性のそろった4本組なんて市場に存在しないだろう。さて、どうしよう?

ちゃんと聴けないんだから、遊んでみようと思い立った。ダメもとで一度EL34にしてみようと。そこで管球王国70号のEL34のレビュー記事を読み返してみたが、どうもよくわからない。というのも、こういう記事においては球のコンディションが揃っている見込みがない。ばらつきの大きい真空管をこういう横並び試聴しても、単に運勝負で、たとえよかったとしても「たまたま」な感じがする。選別品の音がいいのは当然のことだ。レビュー時の音が球のポテンシャルを示しているとは到底思えないのだった。

で・・・それは完全に無視して、その試聴に使った新さんの(その時の)新作アンプの標準管がJJエレクトロニクスのEL34であったことを重く見ることにした。比較的市場価格が安く一般的な球だが、悪い噂はネット上にもほとんどない。なにより、新さんが信頼できない球を使うはずがないと思った。

JJはEU圏のスロバキアの会社だから、ドイツではものすごくリーズナブルな価格で手に入る。特にニュルンベルク近郊にあるBTB Elektronik-Vertriebsでは激安と言っていい値段だ。両社は車を飛ばせば2時間ぐらいで行き来できる距離にあるから、おそらくダイレクトに取引しているのだろう。そこで、BTBから8本揃いを買って4本選別使用することにした。8本でも送料・税込みで100ユーロに満たなかった。

届いた8本を見て、安心した。まず非常にカッチリとした作りである。見た目も内部も、たたいた時の音もちゃんとそろっている。工業製品はこうでなくてはいけない。まず4本装着して、24時間通電。バイアスをlowモードで合わせる。特性がよく揃っていることを確認。そこでいったん切り、完全に冷ましてからバイアス調整ポジションで点灯。温まっていくときのバイアス電流の上がり方をみる。完全に同期する2本があったので、その2本を残して、残り2本を換装。通電>同期・・・これを繰り返してもっとも同期する4本を選別した。安定状態でのプレート電流だけではなく、温度が変化していくときの特性変化まで揃っているようにしたかったからだ。精神安定のためだけ・・・・。

肝心の音だが、第一印象としては、とにかく、ものすごく静か。そして低音が意外とよく出るし、安定している。音場はコンパクトだが上と奥に伸び、定位がすばらしい。これは特性の揃いが大きいだろう。一方で中高音が硬い。ピアノはとてもいいが、人の声がカサつく感じだ。エージングで変化すると思っていたが、2,3日経ってもあまり変化がなかった。うーむ、これはどうしたことか・・・。

そこで思い切って、バイアスを調整してバイアス電流をビーム管用のhighポジションに上げてみた。真空管はそう簡単には壊れないものだし、一つ気になることがあったからだ。それは33mAと手書きで箱に書かれていることだった。もしこれがバイアス電流の値だとしたら、その値はビーム管と同等のものだ。

世界が変わった。熱い、インティメートな音に劇的に変化した。少し行き過ぎ・・・。でも方向性は間違っていないことを確信した。バイアスを調整して徐々に電流値を落とし・・・黄のLEDがギリギリ消えるか消えないかのレベル、つまりLowポジションでもっとも高い電流値に落ち着いた。静的でクリアー、でも内にこもった熱が音に宿る。クラシックよりも、ジャズ・ポピュラーが聞きたくなる音であり、現にそういうディスクに手が伸びるようになった。でも、もちろんクラシックもいい。この音はHifi Atelierで聞いた最高の音を凌駕している。

いろいろディスクを変えながら聞いて、守備範囲が広がっていることに驚いた。Jポップも古いロックも(まともなディスクならば)ちゃんと聴ける。そうこうしているうちに、いつの間にか、音ではなく音楽に心を奪われていることに気づいた。仕事がひと段落着いたということも大きいかもしれないが、ここ1年ぐらいなかったことだ。

JJのEL34はオリジナルEL34よりも出力に余裕が大きいのかもしれないな。よしんば、高いバイアス電流のせいで真空管の消耗が激しいとしても、JJのEL34ならばランニングコスト的に問題にはならないし。このまま行こうと思う。

それにしても、バイアス調整で感覚的に違う音になるのは不思議だ。理論上、適正値の範囲内ならば歪みが大きく変わるようなことはないはず。特にオクターブアンプのような、余裕のある回路ならなおさらだ。今回、うまくいったことも「たまたま」なのかもしれない。

これでようやく、前に進む準備が整った感じがする。

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