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April 06, 2014

13/14シーズン回顧 「個」の時代へ (5/5)

からの続き)

日本ジャンプ、未来に向けての懸念

チームの力の影響力が下がったとはいえ、それがゼロになることは決してない。今季の葛西の好成績の影には、有形無形の日本チームによるサポートがあったことは言うまでもないだろう。日本スキー連盟の「選択と集中」の方針のもとで、逆にリソース面での問題を抱えながら、そしてトップ選手に起こったさまざまなアクシデントに対応しながらの戦いだったが、個人とチームのWメダルという実績を残した。評価されるべきであろう。代表チームに関しては、現状の体制が維持できることが望ましいと思っている。

一方、日本のジャンプ界全体を見ると、選手層の薄さは深刻だと思う。ワールドカップ組と国内組の力の差が大きすぎる。ポーランドやスロベニアとは逆の状態だ。素質的にはいいものを持っているジャンパーはいるのに、彼らに経験を積む場が与えられていない現状に強い危機感を覚える。

今季はジャンプの飛行曲線に注目していたので、ジャンプ台のプロフィールを知る必要があった。その過程で、大倉山・白馬のラージヒルの形状がヨーロッパのジャンプ台とかなり違うということを知った。素人考えかもしれないが、そこで飛んでいる限り、技術のガラパゴス化は必至に思えて仕方がない。素質のあるジャンパーはどんどん外に送って経験を積ませないと、世界で戦うのに必要な感覚を学ぶのは難しいのではないだろうか。また、大倉山のラージをもっと世界のスタンダードに近づける改修をしないとダメなんじゃないかと思っている。

これらは結局お金の問題、そしてスポーツに対する日本全体の問題だから、こんなところで一ファンがぶつぶつ言っても仕方ないのだけど。あれだけ盛り上がっていて誰でも楽しめるフィギュアスケートでさえ、スケートリンクの維持に四苦八苦していることを考えたら仕方ないことなのかもしれない。企業スポーツへの風当たりは厳しくなるばかりだし、各地のジャンプ団は過疎化で競技環境の維持に苦労していると聞く。10年後、20年後はどうなっちゃうんだろう。

来季に向けて

「個」の時代に突入し、ルール、マテリアル、技術は安定期に入っている。こうなると構図はそう大きくは変わらないと思う。ストッコとフロイントは双方ともジャンパーとして完成の域に達している。この2人にプレウツがどのように挑むかが本線。その間にバーダルと葛西がどれだけ割って入れるか。葛西は怪我の影響がどの程度かが焦点になる。若い世代では、個人的に注目しているのはディートハートでもヴェリンガーでもなく、ハイベックだ。彼にはモルギーの後を継ぐ素質があると思っている。そして・・・シュレリーはこのまま終わる奴じゃない。必ず何か別の方向性を見出して、トップに戻ってくると思う。

日本チームは、現状では来期、葛西・伊東・竹内の3人が全員完調でW杯に望むことは期待できないだろう。でも、こういうときこそ若手にはチャンスが生まれる。清水のステップアップと、新星の出現に期待したい。一方、女子のほうはまったく心配なさそうだ。高梨、伊藤の2枚看板に加えて、岩淵の完全復活を待ち望んでいる。

ジャンプ競技全体における現在の一番の懸念は、転倒と膝の負傷の多発だろう。スーツが細くなったことで飛び出し速度と落下速度が上がったことが一番大きい。安全対策が急務になる。これにはFISも承知で、スーツへのクッション挿入などの試みを行っているようだ。期待している。

最後にもう一つ。今季、モルギーを画面で見て、2002年頃のスヴェン・ハンナヴァルトに重なるものを感じた人はいないだろうか?ヴァンクやプレウツもかなりギリギリに見える。体を削ってスキーを短くする利点が大きいのはわかるが、健康を害したら元も子もない。それに過度に短いスキーを使うことが、モルギーの転倒の原因になっていたように思えるのだ。極限まで軽量化し、翼を切り詰めた戦闘機がクルクル回るのと同じ理屈で。スヴェンの時はBMIルールができる前にマリシュやアホネンによってパワー化へのゆり戻しが起こったが・・・。今のBMIルールはスーツが細くなる前のデータに基づいて決められている。選手の体を守るという観点においても、現状に即するように、体重によるスキー削減率の見直しなどが求められていると思う。

結局、まとまりがつかなかった。雑文、申し訳ないです。こんな勝手なことを書き散らしているブログに今季も長らくお付き合いくださった方には感謝します。では、来季もジャンプが楽しめる、平和な世界でありますように。

(了)

(この記事に多くのスパムコメントが付くようになってしまったので、コメントの受付を停止します・・・)

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Comments

かずやんさん、5回にわたる壮大で緻密な回顧、読み応えありました!おかげさまで、来季への楽しみがさらに増えた感じです。女子は有力海外勢(ヘンドリクス、ザイフリーズベルガー等)が復活して、日本の2トップとどんな戦いをするかが興味深いところです。そうですね、岩渕香里も来季に期待ですね。

私も、スポーツが楽しめる平和な世界であるように願っています。

Posted by: こたろう | April 07, 2014 at 11:46 AM

書きたいことがまとまりきらず、こんな大掛かりなものになってしまって申し訳ないです・・・。

女子の方は、そうですね、そのとおりです。全体のレベルが上がって、いい戦いが繰り広げられるといいですね。ヴィンドミュラーの引退にはびっくりしましたが・・・競技を続けること自体が難しいのは、どこでも同じようです。

Posted by: かずやん | April 12, 2014 at 08:31 PM

複雑で豊かな内容のシーズンを総括する大作、有り難うございました。遅ればせながらコメントさせていただきます。

今回のキーワードである「個の時代」は、昨シーズンのまとめで指摘された「オーストリアの技術・ノウハウの輸出」の延長にあることですよね。
12-13シーズンはむしろ、短期間でのチーム単位の浮き沈みが顕著にあった印象でした(序盤のポーランドやジャンプ週間の日本の絶不調、ジャンプ週間でのノルウェーや世選直前のスロヴェニアの絶好調など)。

各チームがノウハウ獲得の激しい競争を繰り広げた結果、競争に追随できる体制を整えた上位5ヶ国(+日本のトップチームとアマン)ではチーム力の拮抗状態が生じたのが今季、と理解しています。

逆に、この競争に追随できなかったチーム(フィンランド、チェコ、ロシア)の選手は、ポテンシャルに見合った活躍をできなかった印象で、来季は上位5チームと他の差が消失する方向に向かうのか、拡大する方向に向かうのか、注目しています。

焦点になった「個」の方では、総合上位3人が年齢的、立ち位置的に ”シュレリーのライバル候補” だった選手で占められたことが、印象的です。(本来であればここに、竹内、ラリント、そしてカレリンも並んでいる筈だったのでしょうが……)

この、”シュレリー世代”全体の躍進と、それに対抗する葛西・バーダル、という構図、
すなわち、

・ストッホやフロイントほどの素材にして、20代半ばに達してようやく、真のトップに躍り出ることができた。
・今季の新星であるディートハルト・ハイベック・クラウスも、年齢的には既に20歳を越えていて、コンチレベルで何年も経験を積んでいる。
・そして勝負の場でストッホ・フロイント・プレウツに挑む最先頭にいたのは、上記の新顔勢ではなく葛西とバーダルだった。

ここに、現在のジャンプ競技の成熟が現れている気がします。
10年前、20年前であれば、ヴェリンガーあたりがいきなりタイトルを総なめにしてもおかしくなかったと思うのですが、そういうことは起こらなくなった。

一方で、シュレリー世代と対照的に、モルギー世代のジャンパー(モルギー、コフラー、ヤコブセン、伊東)が皆苦難のシーズンになってしまったことも、今季の勢力図に大きな影響を与えたと思います。来季は新顔勢の成長とともに、彼らの復活も楽しみにしています。

日本チームですが、五輪直後の国内メディアへのコメントでは、須田健仁コーチ(まだ退任が判明する前でした)が、コンチネンタルカップ派遣を復活させる必要性を危機感を持って説かれていましたし、船木は大倉山や白馬に防風ネットを整備して、国内で多様な条件下での練習を可能にすることを訴えていました。
現場においては、非常に正しい認識と努力がなされていると思うので、来季以降も彼らの努力が実を結んでいくことを祈っています。

それでは、今季も本当に楽しませていただきました。長文失礼いたしました。


Posted by: まちびと | April 13, 2014 at 04:12 PM

別の角度からの素晴らしい総括、ありがとうございます!
私の書いたものはいささか単純化しすぎました。

現在のチーム格差の解消が一時的な均衡状態なのかどうかは、私も興味深く思っています。私自身は、チェコやフィンランドも後半に入ってかなり追いついた印象がありましたので、もっと格差がなくなる方向に行くと予想しています。特にクデルカは技術トレンドにも合致しているし実力もあるのでもっと勝負できておかしくない。まぁ、またとんでもない技術革新があって一気に差が開くことも大いにありえますが。

世代間の争いという観点は完全に抜けてました。もしかしたら、モルギー世代は「マテリアル依存」の時代を過ごしてきたため、それに頼る傾向にあるのかもしれません。その上の葛西やバーダル、アマンあたりはもう何でも来い、みたいな経験がありますからね。

コンチ派遣、ぜひ実現して欲しいです。特に佐藤などの若手をシーズンを通して派遣してスロベニアやオーストリアの若い奴らとガチンコ勝負させてやって欲しいと思います。

こちらこそ、フォローしていただいてありがとうございました。来季もよろしくお願いします。

Posted by: かずやん | April 14, 2014 at 08:40 PM

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