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June 08, 2013

球を替えてみる (4/4) 顛末 Svetlana 6550 Winged C

6550cPfingstenの休みを挟んだため多少待たされたが、ほどなく4本の、青いラベルの貼られたSvetlana (SED) 6550 Winged Cが届けられた。ラベルは店がマッチングのためにつけたものだろう。Sovtekと比べると少し小ぶりで、内部の構造はかなり違う。叩くと何かシャンシャンとした音がするが、嫌な音ではない。Sovtekの方は基本的にコツコツとした硬い音で、ロット違いの1本だけが少し金属的な、少し嫌な音がするのだった。

ただ、戸惑いと共に嫌な予感を感じずにはいられなかったのは、その4本の見た目がそれぞれ異なっているということだ。大きさも微妙に違うし、内部のプレートや配線の位置関係もかなり違う。工業製品としてこれはどうなんだろう?

でも、問題は音だ。先入観を振り払って装着し、バイアス電圧を慎重に合わせた。どうやら、Sovtekよりもバイアス電圧は低めらしい。1時間の通電の後、CDをかけ、バーンインが済むまでは音質評価はすまいと肝に銘じながら、恐る恐るボリュームを上げた。


・・・・!

なんと、これはいままでとベクトルの違う音だ。響きが豊かで、厚く、熱い音。生理的に心地の良い音。一方で、オーディオ的な見方をすれば、本来の音に何らかの付帯音が被さっている、とも言える。音場の見通しや背景の静かさと言う点では間違いなく前の方がいい。

バーンインも兼ねて、その後、いろいろ聞いてみた。バーンインが進むにつれて少しづつクリアーになっていくが、基本的な音は変わらない。やはり、とにかく響きが豊かで、今までより音楽が楽しく鳴る。一方で以前から悩んでいた、2KHz付近にあった嫌な共振みたいなものはまったくない。帯域バランスは求めていたピラミッド型。ちっともうるさくないので、音量が自然に上がる。

繰り返すがS/N感は前の方がいいのだ。けど、音がほぐれて分離する感じがあって、音楽の見通しと言う意味では実は全然悪くないのだった。響きが付加されることによって、音色の描き分けがなされ、音が分離する・・・・そういうふうにそこかしこで書かれていたのを読んではいたが、まったく理解していなかったようだ。この音を聞いて、ようやくそれがわかるようになった。

喩えて言うなら、うーむ、細部の切れ味の点では一歩劣るが、とても味のあるヴィンテージなレンズを通して、色彩豊かな世界をファインダー越しに見ている感じ。昔の映像をとてもよくできたブラウン管テレビで見た時の驚きが感じられる。もちろん、これは以前との比較において、だけど。素性そのものはOctaveのままで、その実直一本やりな部分がほぐれた感じなのだ。

特にいいのがオーケストラや室内楽。弦楽器の胴鳴りの生々しさは素晴らしい。量感があり、ほんのちょっと甘い低音が全体を支え、その上に音が積み重なる。上の方もスッと伸びていて好ましい。一方でボーカルものやシンプルなポップスを聞くとちょっと過剰演出に感じられることもある。これは本当だろうか、というほど魅力的だったりするのだが・・・・。

圧巻だったのはアルバン・ベルクSQのベートーヴェン弦楽四重奏14番op.131。まさに火花の飛び散るような掛け合いが展開され、鳴り終わってもしばらく呆然として動けなかった。これ以上は今の私に必要ないと、初めて思えた。賭けに勝ったのだ。その日は満ち足りた思いを胸に床についた。

しかし・・・次の日。フルートを聴いていた。すると、なにか、ちりちりした音がし始めた。あれ・・・でも、この音はスピーカーから出ていない、出所は・・・アンプ!と思った瞬間に真空管の1本に火花が散って、同時に左スピーカーが”ドン”と・・・・・そして音は半分になった。次の瞬間にはOctaveの誇る保護回路が作動し、アンプはセーフモードに入ってフェードアウト。

たぶん、この出来事は数秒ぐらいの間に起こったこと。何故か冷静だった。こういうことが起こるかもしれないと覚悟していたからだろう。

Langrexは初期不良のクレームに丁寧に対応してくれて、ほどなく代わりの青ラベルの6550Cが送られてきた。先方にとっては日常茶飯事のことなのだろう。

送られてきた真空管を装着して、鳴らした。基本的には同じようないい音で鳴った。しかし、あの素晴らしい、究極のバランスと響きは再現されなかったのである。4本の組み合わせをいろいろ変えてみたのだが、あの音は出ない。あれは一体なんだったのだ?逝く寸前の真空管が発した最後の彼岸からの響きだったのだろうか?

とにかく、今回のことで、真空管アンプの音は真空管の響きそのものによって大きく変わることを学んだ。響きは通電によって変わるはずだから、今の真空管のセットでもう少しあきらめず鳴らしてみようと思う。「後4本、青ラベルを送ってくれ!」とLangrexに言って泥沼に足を踏み込むのは、もうちょっと先にしよう。まぁ、もうすでに真空管のディープな世界に足を踏み入れてしまったのだから、遅かれ早かれいろいろ試したくなるだろうな・・・・・

そして、ホフマンが何故Svetlanaの真空管を使うのを止めたのか、よくわかった。売り物は音に再現性がなければならないし、信頼性も100%に近くなければならないのだ。

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