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March 02, 2013

王者の底力 世界選手権 団体戦

1回目が終わって、トップの(その時点では・・・これについては後述)ノルウェーから5位の日本までの差は10点しかなかった。1人1mちょっとの差。かすかな失敗、ランディングの不備が勝負を分ける、シビアな戦いとなっていた。2つのチームの間がその差になることはあるが、5チームがその中に入るというのは、ワールドカップの団体戦でも、記憶の限りは、なかった。1回でも大きな失敗があれば、勝負はおろかメダル争いからも脱落する。

オーストリアの2人目のフェットナーが飛んで・・・降りた、あっ!、なに・・・スゲーーー。
まぁ、見てやってください
もし転倒していたら、最低でも15点が飛んで、オーストリアはメダルなしに終わっていた可能性が高い。ものすごい技術と運動能力がなければ、あの曲芸はありえない。オーストリアの選手は片足でランディングできる筋力とバランスがあるから、高い飛行曲線からでもテレマークが入れられるのだ。たぶん、彼らにとってはこの芸当は曲芸でもなんでもない。

オーストリア3人目のモルギー。1回目に微妙に失敗して、内心期するものがあったのだろう。高く突っ込んでいき、ギリギリまで伸ばして、降りた。129mの、勝利を決定付けるジャンプだった。喜びを爆発・・・あれ、転倒ラインを超えて・・・顔をしかめるモルギー。膝をかかえ、うずくまる。歩けない。リプレイを見ると、降りたときにスキーが流れるのを必死にこらえていた。1.5点のために。

最終的にオーストリアと2位のドイツの差は14点だった。距離にして8mか。ちょうど、1人1mづつ。それでも、この両者の差は非常に大きいように思えた。トリノ五輪から7年、守ってきた王者のプライドが、ここ一番での差を生んだように思う。エースのシュレリーが当てに出来ない状況で、しかもアクシデントがありながらも勝ってしまった、その底力に脱帽だ。もちろん、今日の勝利の立役者は上記のフェットナーでもモルギーでもなく、一番手のロイツルであることは、誰もが認めるところだろう。

メダル争いも最後まで熾烈を極めた。ものすごい高レベルの戦いだったと思う。日本の得点は1100点に近いが、それでもメダルはまったく見えなかった。ポーランドは若手が100%以上のジャンプを続けてストッコに繋ぎ、それに応えて彼はスーパージャンプを繰り出したが、それでもメダルに届かなかった・・・に思えた。

しかし、試合後にもドラマが待っていた。1回目、ノルウェーのバーダルはコーチの要請で2段下げてゲート20番から飛んだことになっていたが、実際は連絡ミスで下がっておらず22番でスタートしたことが判明し、最終的にゲートファクターの加点6.7点を失うことになった。不幸なことは2位だったノルウェーと4位のポーランドの差が3点しかなかったことだった。結果として、ヤコブセンのスーパージャンプで守り抜いたはずの銀メダルがドイツの手に渡ったばかりか、ポーランドにも抜かれて4位に滑り落ちるという悲劇になってしまった。

シビアな戦いでコーチ要請によるゲートの上げ下げが頻繁に起こったことが、ミスに繋がった。遅かれ早かれそんなことは起こるだろうなと思っていたが、この大一番で、こういう悲劇的な結果に繋がるとは・・・・・。2回目にサッツで早く立ってしまい失敗したヒルデの心中を察すると、やるせない気持ちになる。あれぐらいのちょっとした失敗は、8本あれば1本ぐらいは起こるもの。それはどのチームも同じ、なんだけどねぇ。

日本は4人がしっかり飛んだと思う。特に一番手に抜擢された清水の1回目は凄いジャンプだった。あれがあったからこそ、メダルへの期待が2回目に繋がった。彼にそのスーパージャンプを2回期待するのは無理な相談だ。葛西の2回目は最後の最後にやっと出た、胸のすくようなジャンプだった。伊東、竹内も現状の力以上のジャンプだった。それでもメダルが見えなかったのは、シビアなようだが実力が他チームに及ばなかったということに他ならない。この悔しさを胸に、ソチに向かって欲しい。

スロベニアはフリーガーの2人が追い風への弱さを露呈してしまった。しかもヴァラが連戦で疲れ、調子が落ちたことも大きかった。プレウツ1人ではどうすることもできなかった。本当に、今日は底力を試される過酷な戦いだった。ジャンパーたちは休む間もなく北欧シリーズに突入する。大丈夫かいな。

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Comments

世界選手権のレポート、お疲れ様でした。
今回の選手権は、試合全体の内容という点でも日本チームのパフォーマンスという点でも本当に充実していて、書き込もうと思えばいくらでも書くことがあるなあ……と思っているうち、時節を逃してしまいましたので、最後の団体戦についてのみ、コメントさせていただきます。

おっしゃる通り、(団体戦では毎度の事ながら)ロイツルは本当に見事でしたね。ただ、以前だったら彼が1番手で作ったリードをそのまま守って余裕で逃げ切っていたのが、1回目にモルギー・シュリーで追いつかれてしまったのが、やはり2年前までとは違う時代に入っていると感じました。
そういう意味では、オーストリアが勝つ流れを確定させたのは、やはりフェットナーの2回目のジャンプだったと思います。モルギーの、文字通り膝が壊れても構わない、というパフォーマンスからは、漢としてここでフェットナーの心意気に応えないわけには、という意地をひしひしと感じました。

ドイツはてっきり、ノイマイヤーが1番手で来るものと思っていましたが…。まあ、ヴァンクも団体戦でいつもいい仕事をしている印象はありますが、やはり、シュリーレンツァウアー、フロイントという本来のエースが計算できない状況にどう対処するか、というところで、積んできたものの差が出た感じがしますね。

日本は、葛西の2本目が1本目のタイミングで出ていれば完璧に狙い通り、そのままメダル圏内を維持してもおかしくない、というところだったでしょうが、そこまで都合良くは運びませんでしたね。
純ジャンプのみならず複合チームも含めて、日本は自力でメダルに届くためにはあと一歩実力が足りない、という大会でしたが、同時に、ちょっとした運の後押しがあれば届くかもしれない、というその運が(混合団体を除いては)ことごとく巡って来なかった大会でもあったと思います(伊東と渡部暁斗が去年のトップフォームまで戻ってこられなかったこと自体も含めて)。
ただ、これまで積み重ねてきたものが確実に力になっている、そしてこの先それをさらに上積みできるだろう、という希望と充実感の持てる世界選手権だったと感じました。

ヴァラのみならず、ヴェリンガーもクラフトも、今季出てきた選手たちは皆トップパフォーマンスからはほど遠い内容に終わりましたね。船木も伊東も、19歳で最初に出た世界選手権では似たような状態だったことを思うと、ワールドカップ転戦というのはいかに過酷な事業か、と実感します。
清水もなかなか調子が上がらず苦しい時間を過ごしたことでしょうが、控えで過ごす経験、団体戦トップバッターでの気持ちいいジャンプと苦い失敗の両方と、価値ある経験値を得ることができたのではないでしょうか。

では、長文かつ雑多な内容で本当に申し訳ありませんが、今回も大変楽しませていただきました。

Posted by: まちびと | March 03, 2013 at 03:58 AM

どうもです。
書ききれなかったポイントがたくさんあったのですが、それをうまく補っていただいて助かりました。ありがとうございます。

ドイツとオーストリアの勝負を分けたのは、データ上ではランディングの差でした。ヴァンクも年々、飛行曲線が高くなってランディングが難しくなっているようです。ドイツチームはまだ若い。オーストリアは(ロイツル以外)年齢こそまだ若いですが、経験値ではもう百戦錬磨の猛者たちですからね・・・。

葛西の1回目がもうちょっと・・・・とは、欲深い私も思いました。2回目の清水に大きなプレッシャーがかかる展開になってしまった。今日は複合団体スプリントも歯がゆい結果でしたね。渡部も悔しいだろうな・・・個人団体ともにわずかな差でメダルを逃して・・・・でもよほどの幸運が無い限り逆転しない差、みたいなものも感じました。そのような幸運がめぐるのが団体戦なのですが、今回はそれがなかったということですね。おっしゃるとおり、今回はソチに向けて課題が明確になった、日本選手にとっては良い戦いだったと思います。差はある、でも絶望的じゃないということですね。

私の今大会の感想は「面白かったぁ!」。このひと言に尽きます。シビアなルールもいいものですと、認めざるを得ません。


Posted by: かずやん | March 03, 2013 at 07:10 AM

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