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March 30, 2013

2012-13シーズン回顧 スキージャンプ、新しい時代の始まり (2/3)

からの続き)

長く続いたパクス・オストリアーナのもたらしたジャンプ技術のグローバル化

今季を象徴する出来事の一つは、国別対抗においてオーストリアの連勝が8で止まったことだろう。長く続いてきたオーストリアの黄金時代が終わりつつある。しかし、これはオーストリアによるスキージャンプ支配が終わったということではまったくない。今年、タイトルをもぎ取ったノルウェーの監督はオーストリア人のシュテッケル。最後までタイトルを争ったドイツの監督はシュスター、育成はホルンガッヒャー。両方オーストリア人だ。単に、オーストリアはその技術とノウハウを他国に輸出して、オーストリア人同士で争っているだけなのである。これらの国だけではなく、他の国にもオーストリア人のトレーナーやテクニカルスタッフはたくさん入り込んでいる。逆に、頑なに独自路線を行くフィンランドはまさにどん底の状態に陥った。

その結果、技術・ノウハウ・マテリアルのグローバル化が進んだ。アマン・カルテンベックタイプのビンディングは確立し各国に普及した。今季、新たに「シュテッケルシュー」に代表されるブーツと足の一体化のトレンドが起こったが、これは小さなモディファイでしかない。要はサッツ時にビンディングを使って自動的にスキーを上げるシステムをみんなが使うようになって、各自のジャンプスタイルへの最適化が進んだ。その結果として・・・トップジャンパーは以前ならマリシュやアマンしかできなかったレベルの、自動的かつ瞬間的な体勢移行ができるようになった。ひと言で言えば「みんなアマン化」したのである。こうなると当のアマンは他との差別化ができずに苦しい。だいたい、上位20位に入っているジャンパーはものすごく完成度の高いジャンプをしている。

ジャンパーの技術レベルが高いところで拮抗しているので、ちょっとした調子や台との相性、アスレチック能力によって出る小さな差が勝負を決めることになった。また浮力が減少したことで、ジャンプ後半に小手先でリカバリーできなくなった。そのため、サッツの方向性がものすごくシビアになって、失敗と成功の幅が大きくなった。そして台によって方向性を微調整する能力が強く求められるようになった。結果として、今季は選手と台の相性を強く感じることになり1人の選手が勝ち続けるということがなくなった。シュレリーは?という声が上がるだろうが、私は今年のシュレリーのクオリティーなら、以前なら総合で2000点を越えるような1強状態になっていたと思っている。彼ですら、勝負に入れない試合がたくさんあった。

そういうことで多くの国とジャンパーが勝負に入れるようになり、試合は面白くなって、国別対抗も拮抗した。プラニッツアのフライング団体戦の結果を見て欲しい。日本は7位に終わったが、1500点に達している。そして、トップとの差はたったの61.8点だった。フライングで8本飛んで、7チームがこの差に入ることなんて、今までだったら絶対にありえなかった。この結果は、今年のスキージャンプを面白くした「必然性」があったことを証明していると思う。

今季のこの素晴らしいバランスは、FISの技術部会による長年にわたるルールの最適化によってついにもたらされたと思っている。その仕事を賞賛したい。スキージャンプ競技は、以前の風と運のギャンブル的なものから、ものすごくシビアなアスレチック的競技への脱皮に成功し、新たな時代に入ったと思う。

ピーキングの重要性

ジャンパー間の差が少なくなったことにより、調子の優劣が結果により大きく現れるようになった。上位20人ぐらいが小さな差にひしめき合っているから、少しでも調子が落ちるととたんにポイントをとることすら難しくなってしまう。シーズン序盤絶好調で総合王者を伺う勢いだったコフラーがあんな状態になるなんて誰が想像しただろう?

それにしても今年は試合が多かったように思う。北欧シリーズは1週間プラスアルファで4戦という過酷な日程だったし、今季はジャンプ週間もそうだった。集中開催自体は選手にとっても悪いことだとは思わないが、インターバルが無さ過ぎる。世界選手権やオリンピックで日程がタイトになったら、そのぶんいくつかの開催は(持ち回りで)なしにするべきじゃないだろうか。10年に一度ぐらいは、大倉山W杯が無いのも仕方がない。

このようなスケジュールが来季以降も続くということなら、チームとしてどこかで休みを入れる必要が出てくるだろう。スキージャンパーも人間だから、この長く過酷なシーズンを通してトップパフォーマンスでいられるわけはなく、それぞれ、どこでピークを持ってくるかを考えつつやるしかない。今季のシュレリーはジャンプ週間後半がピークでそのあとずいぶん長く保っていたが、世界選手権の頃は力尽きていた感じ。でも、そういうものだと思う。なにもかも成し遂げた感のある彼がモチベーションを高く保ち続けるのは不可能だ。だからこそ、彼が終盤に2回、チームのために勝ったことを高く評価している。逆に前半、駄目だったストッコは世界選手権にきっちりピークを合わせて、念願のタイトルを手にした。

来年のオリンピックも、そこに上手くピークを持っていけた選手が金メダルを取るのだろう。技術レベルに大きな差がないとすれば、調子とソチの台への対応が勝負を分ける。来季はより、ピーキングを重視したチーム戦略が必要となると思っている。

続く

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