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November 06, 2012

Arkadiaの相手選び 12

11からの続き)

そんなふうに心が乱れながらも、続いて村上ゆきをかけた。うーん、これは・・・・見えるようだというのはこのことか。発音がはっきりとしていてストレートに歌詞が届く。ピアノの音が自然で、その中に歌がポッと浮かぶ。遠すぎず、近すぎず、絶妙な距離感だ。感心しながら聴いていると、ふいに、先ほどのキラキラした音がいつの間にか、なくなっていることに気づいた。あれ・・・音が全体に変わっていっている。そして徐々にだが音にじわっと生気が漲り、ほのかな温かみが宿ってきた。そうか、真空管アンプは真空管が完全に暖まるまでは完全ではないのか!

基本的な音、姿勢は変わらないのだが、音に・・・命が吹き込まれている。アンプが唄い始めているのだ。それを確かめるべく、槙原敬之のコンサートライヴ盤をかけてみた。このディスクは今の自分の部屋ではまったく良さが感じられないものだった。プレイ・・・音が入る前のこの濃密な雰囲気はいったい・・・そして歌が入ると、そのまま一曲、最後まで聞かされてしまった。もう時間が押しているのに止められなかった。槙原が心を声に乗せることのできる本物の歌い手であることに、いまさらながら気づかされてしまったのである。

次にケルテス/ロンドン響の「新世界より」第4楽章をかけた。ケネス・ウィルキンソンの手によるデッカの名盤である。あぁ、なんという構成力とパースペクティヴなんだろう!この録音の真価をようやく知った。弦の音も恐るべきリアルさだ。オーディオでしかありえない世界だ。

最後に、元に戻って「ます」をかける。やはり、初めに聴いた音は寝起きの音だったのだ。音に付帯音はなく、ダイナミックで力強くありながら、同時に静かでピュアだ。ストレートに音をきちんと立てるから、この録音がちょっとピアノがオンすぎることがきちんとわかる。でも、それでも、音楽の本質も同時にちゃんと提示するから、音よりも音楽のほうに心が行く。

今鳴っている音は、私が心に描いていた音よりいくぶん緊張感が高く、押しが強い。心地よくリラックスして聞くということを拒否するような厳しさがある。この音の前では、音楽ときちんと正対せざるを得ない。ただ・・・おそらくCreekが絶妙な塩梅でOctaveの厳しさをなだめているからだろう、なんとかなりそうな感じがある。

ここはTitzerさんの場所だ。おそらく、蛇口全開のフレッシュな音を目指してケーブルなどはチューニングされている。それに今日聞いているAllegraより家のArkadiaの方が高域はいくぶんおとなしい。また6550WEのV40SEなら、KT88のV70SEよりも落ち着いた和らいだ音がするはずだ。その上でケーブルなどでファインチューニングを施せば、なんとか自分の好きなほうにシフトさせることができるだろう。

あと・・・こんなことを考えていた。このオーディオ機器は今の自分が理解できるものよりも数段上のものを提示しているのではないか、そして彼らは自分に音楽の聴き方を教えてくれようとしているのではないか。だからこそ少し押しつけがましく感じられるのではないか。なら、真摯にこの音に付き合っていけば、自然とこれが心地よく感じられるようになるのではないか・・・・。

なによりも、この音に惹かれていた。その他のことは後付けの、自分の左脳側を納得させるための理由でしかない。ディスクを取り出し、奥で仕事をしていたTitzerさんに言った。
「Octaveにします」
“いい選択だ”と何故だか嬉しそうに彼は応えた。

最後へ)

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