« '11-12年シーズン回顧 些細な、でもジャンパーにとっては大きな変更がもたらしたもの (2/3) | Main | シーズン回顧の補遺 »

March 30, 2012

'11-12年シーズン回顧 些細な、でもジャンパーにとっては大きな変更がもたらしたもの (3/3)

その2からの続き)

しかし、待てよ、パワー系でなく、飛行曲線が低いのに今年活躍したジャンパーが数人いる。伊東、クラニェッツ、コッホの3人である。コッホは身長が高いからある程度BMIルールの変更の恩恵は受けたかもしれないが、伊東とクラニェッツは違う。彼らは骨量の少なさを武器に低BMIで飛んでいたはずだった。おそらくこの2人が自分の飛び方を地道に変えて来て、それが今年ようやく実を結び、本当の意味でのパフォーマンスアップを成し遂げたジャンパーなんだと思う。その上で元からあった特殊な空中の才能、短いスキーでも浮力の得られる技術を駆使してこの試練を乗り越えたのだと思っている。

伊東は数年前までは、もっと前がかりで低いジャンプをしていた。ハリ・オリとまでは行かないが、ハッポネンぐらいは低かったと思う。おそらく彼にとって、雪印への移籍は大きな契機となったのだろう。斎藤の技術が注入され、徐々にだがサッツでの上へのゲインを増していき、昨シーズンのサマーGPでは、アスリート系と言っても差し支えないほどの体の切れを武器に猛烈なスピードジャンプを披露していた。ピーク・パフォーマンスと言う意味では、既に昨シーズンに躍進は約束されていたのである。

しかし、ちょっとした怪我や体調不良などもあり昨シーズンの彼は不完全燃焼に終わった。私は個人的には残念で仕方がなく、回顧ではチームのサポートに対し多少厳しいコメントをしてしまった。しかし、今季の彼は意識的にスロースタートにすることによって、ピークをシーズンの半ばに持っていくことに成功した。サポート体制も刷新され、精神的なケアが重視された。その結果、そのピークはシーズンの最後まで維持された。もし、もっと今季の天候が順調だったならば、シュリーレンツァウアーとジャンプ週間および総合で激しいバトルとなっていたはずだ。今季の彼の4勝、総合4位という結果は彼のパフォーマンスを考えれば決して満足なものではない。不運の重なりと勝つコツを掴むまでの足踏みによって損をしたうえでの結果なのだと思っている。苦言を呈しているのではなく、彼の力なら今季は総合優勝のチャンスがあった、この結果では彼の今季のパフォーマンスに見合わず、彼とサポートした人々の努力が充分に報われていないと感じているのである。

新しいBMIルールとジャンパーの戦いは来季に向けてもうスタートが切られているはずだ。モルギーやアマンはムキムキの体と、それに合ったサッツを作ってくるだろう。ストッコら低い飛行曲線を描いていたジャンパーは方向性を修正してくるだろう。ノルウェーやスロベニア、ポーランドの若手は新しい方法論の元、一気に伸びてくるだろう。伊東が彼らに対しアドバンテージを保ち、王者として君臨するためにはもう一段上のステージに行く必要がある。そうできなければ、ソチ・オリンピックに向けて動き始めた列強の刺客たちにやられてしまうだろうと思っている。BMIルールの変更がもたらした、スキージャンプのパワー・スピード化の波はもう止まらない。この波は日本人ジャンパーにとって決して有利なものではないのだから・・・・。

昨シーズンの回顧では「競技のF1化」をテーマにチーム間格差の拡大を問題提起した。それに対応するかのように厳格化されたマテリアルコントロールはチーム間のマテリアル開発力による差を少し少なくすることに成功したようだ。しかし・・・これは今季が狭間のシーズンだったから、かもしれない。今もオリンピックに向けていろんな隠し玉が日々開発されているのであろう。それによって来季はまたガラリと世界が変わってしまうのかもしれない。そういう怖さも、スキージャンプの魅力なのだと思う。

ジャンパーの皆様、素晴らしい戦いをありがとうございました。来季に向けてまずはゆっくり休んでください。そして、来季もよろしくお願いします。

|

« '11-12年シーズン回顧 些細な、でもジャンパーにとっては大きな変更がもたらしたもの (2/3) | Main | シーズン回顧の補遺 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/64278/54301333

Listed below are links to weblogs that reference '11-12年シーズン回顧 些細な、でもジャンパーにとっては大きな変更がもたらしたもの (3/3):

« '11-12年シーズン回顧 些細な、でもジャンパーにとっては大きな変更がもたらしたもの (2/3) | Main | シーズン回顧の補遺 »