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March 26, 2012

'11-12年シーズン回顧 些細な、でもジャンパーにとっては大きな変更がもたらしたもの (2/3)

その1からの続き)

その見方が正しいかどうかを判断しバーダル躍進の理由を探るには、「パフォーマンスが落ちた他の選手」に目を向けてみる必要がある。昨シーズン、圧倒的な強さを誇ったモルゲンシュターンとピークパフォーマンスでトップだったアマン・・・この2人は今季、イマイチという言葉がぴったりの成績に終わった。この2人はビンディングの革新の恩恵を最大限に生かし、短いスキーで距離を伸ばす技術を駆使していた。特にモルゲンシュターンは自らの最適体重よりも明らかに軽い状態で飛んでいた。短いスキーを履き、サッツ後のスキーの上がりを足元で制御し、前へのモーメントを殺さず、上へのゲインも犠牲にせず、早く体勢移行を完了する・・・・「スピードジャンプ」と言っていい、そういうジャンプを完成させていた。こういうジャンプは、ビンディングの革新以前はアホネンやシュリーレンツァウアーのような神の寵愛を受けた、特殊な身体能力(おそらく足首の可動域やつき方に起因する)を持つジャンパーにしかできなかったものだと思う。

その彼らのジャンプが、今季は後半の伸びを欠いていた。浮力不足・・・スキーがさらに短くなったことの影響を大きく受けていた。今季からビンディングとスーツが事細かに規制されたことも影響していたと思われるが、とにかく、ジャンプはパタンと落ちてしまっていた。それに気づいていたアマンはスキーの長さを維持するために体重をかなり無理に増やしてシーズンに望んだようだが(それが、私の彼に対する「練習不足によるキレの無さ」というコメントに繋がっていたと後から気づいた)、体と技術のバランスは崩れていた。モルゲンシュターンはフライング選手権を見据えてのことだと思うが、体重を変えなかった。彼らが本来の強さの一端を見せ始めたのは、終盤、フライング選手権が終わってからのことだった。

どん底から脱することができなかったフィンランドチーム、大きな躍進を期待されながらイマイチに終わってしまった、ストッコ率いるポーランド・チーム、そしてまったく駄目だったフランス。彼らの共通点は基本的にフィンランド・北欧系テクニックをベースにしているということだった。低い飛行曲線と短いスキーの相性は最悪だった。その雄であったノルウェーがその影響を最小限にできたのは、間違いなくオーストリア出身のシュテッケルのおかげだろう。彼をこのタイミングで迎え入れたノルウェーの上層部の慧眼は、ノルディックスキー発祥の地の面目躍如といったところだろう。

一方、アスリート系パワージャンパーであるコフラーは昨シーズンと今シーズンの獲得ポイントがほとんど変わらなかった。また、飛行曲線が基本的に高いスロベニア(クラニェッツを除く)やチェコ・チームはプレウツやラバなどを筆頭に躍進した。彼らは比較的ルールの変化の影響を受けなかったのだろう。(そう考えると今季、駄目だったロイツルはかなりやばいと思う。彼はこの変化の恩恵を受けるはずのジャンパーだからだ・・・・閑話休題)

バーダルに話を戻すと、バーダルは身長が高いためにもともと浮力に依存したジャンプをせず、筋量を増やしBMIを上げることによって活路を見出そうとしていた。そしてスキーの上手さによる飛び出し速度の速さという彼の長所は、体重の増加と浮力の減少によって逆に相対的にその強みを増した。その上でシュテッケルのオーストリア技術による、サッツにおける確かな改善があった。それらが総合的に彼を勝ち負けのできるレベルに引き上げたのだ。

フライング選手権の前にも書いたが、今回、バーダル躍進の理由を探っていく過程においても、ジャンパーにとってBMIルールは非情なルールであるとの認識を新たにした。一般人にとってはBMI0.5の差なんてほとんど感じない。昨晩食べ過ぎてちょっと重いな、程度だ。しかし、ジャンパーにとっては、その些細な違いが何百ポイントの差となることが、今季の結果から読み取れる。もし、私がジャンパーだったとして、そして、現役を続けられるかどうかの瀬戸際にいたとして、新たなBMIルールが自分とマッチしなかったらと思うとゾッとする。現に、3人の特徴的なジャンパー・・・エーベンセン、マッチ・ハウタマキ、そして東輝・・・・がこのルールに引導を渡されたのではないかと、かなり確信めいた思いを持っている。

その3に続く)

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