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April 22, 2011

アダム・マリシュ ~スキージャンパーのプライドのかたち (1/4)

スキージャンプって特殊な競技だよなぁ。こう言われて、いや違うと言う人はまずいないだろう。

100キロ近いスピードでほぼ身一つで空中に飛び出して、飛んで、降りる。敵は重力と空気抵抗、風は時に味方に、時に敵に。いつも頼りになるのは自分の体と、それに一体化したスキーとスーツのみ。

でも、そういう外形的な特殊性を言いたいのではない。その特殊性は、競技として考えたとき、競技者にとっていささか不条理であるという点にある。身一つで物理と戦うのにもかかわらず、マテリアルやレギュレーションによってパフォーマンスに大きな違いが生まれる上、自然条件によって結果が一つの試合中に個々のレベルで大きく左右されるからだ。

身一つで物理と戦うという意味では、もっとも近いのは陸上競技、特に投擲・跳躍系競技だろう。体操や水泳も近いかもしれない。でも、これらの競技はかなり管理された状況で行われる。その物理が風やマテリアルによって大きく左右されることは、少なくともスキージャンプのレベルでは、ない。

敵が自然だという意味では、カヌー、ヨット、登山などの冒険系スポーツなどが近いかもしれない。ヨットは風が相手であり、またマテリアルにも左右されるからかなり近いかもしれない。しかし、これらのスポーツは、競技として行われる場合、すべての競技者が同じ条件で戦うと言う意味でスキージャンプとは本質的に異なっている。

マテリアルや時にレギュレーションによって大きな違いが生まれる、といういう意味ではモータースポーツが近い。物理が相手であり、危険と隣り合わせという点においても。ただ、こちらも厳重に管理された中ですべての競技者が同じ条件の下で戦う。また、チームという大きな組織の中で役割を果たすという側面が大きいという点でかなり異なっている。

ジャンパーは結局は自分一人、相手は他のジャンパーではなく、自分の重さ。そして、自分ではどうにもならないものによって結果が決まってしまう。レギュレーションが自分の体に合わなければ、物理的にどうやったって勝てない状態になる。どれほどいいパフォーマンスを出しても、風が1m/s追っただけで台無しになる。こんな不条理な競技って他にあるだろうか。

そう考えてみると、私はスキージャンパーが自らのプライドとモチベーションをどうやって維持しているのか不思議に思えてくるのだ。自分の体そのものが否定される状況の中で、風神の気まぐれで数年間の努力が一瞬にして無駄になるような目に何度も逢いながら・・・・。

この疑問に対する答えは、マリシュのキャリアを振り返り、彼が競技者としてどのようにして4回もの「ピーク」を成しえたのかを解く鍵を握っているように思う。

(続く)

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