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March 27, 2010

2009-2010年シーズン回顧 (3/3)

(2)の続き

シュリーレンツァウアーの試練

絶対能力で史上最強、金メダル間違いなしと思われたシュリーレンツァウアーがアマンの後塵を拝したのには、シュリーレンツァウアー側の問題もあるように思う。彼は「20歳にして絶対王者」と形容されることが多いが、実はスキージャンプにおいては十代のチャンピオンはそれほど珍しくない。これには理由がある。

人間の成長過程において、骨の長さは17歳ぐらいで決まる。しかし、骨は普通22-24歳まで成長する。つまり、骨は太くなり密度が上がる。スポーツ選手の身体能力が最高になるのが、骨の成長が終わった25歳頃であるのは、衆目の一致するところだろう。

しかし、スキージャンパーは違う。骨の長さの成長が終わった瞬間に、体がもっとも鳥に近い第一のピークがくる。ここ数年のシュリーレンツァウアーの究極とも言える能力は、このピークだった。

その後、骨密度の上昇と共にジャンパーは鳥からアスリートへと変化しなくてはならない。重くなった体を飛ばすための筋力をつけ、技術を根本から見直さなくてはならない。その過程で多くのジャンパーが大きなスランプを経験する。骨密度が減少へと転じる日までそれは続く。ニエミネンのように、結局は帰ってこられなかったジャンパーも多数いる。

今年のシュリーレンツァウアーのジャンプは、去年よりも技術的・筋力的に進歩しているにもかかわらず、ジャンプ後半に以前のような伸びが見られなくなっていた。私は、彼がこの試練の時期に突入しつつあると見る。そして、身体的な成長が今期のトレンド(低身長化)と合わなかったことによって、彼の絶対的アドバンテージが消えてしまったのだ。

もしかしたら、来期は彼にとってさらに厳しい戦いとなるかもしれない。その試練の時期をどう過し、次のピークに備えるか・・・・それは彼次第だ。

来季に向けて

今年、その闇の時期から抜けたジャンパーがいる。モルゲンシュターン。彼はアスリート・ジャンパーに見事に変容を遂げた。ノルウェーのヤコブセンも抜けつつある。そして、日本では伊東が。闇の時期に蓄積した身体能力を開放する時がすぐそこまでやってきている。来期、彼らがアマン・マリシュにいかに挑んでいくか、そしてシュリーレンツァウアーがどのように自分自身と闘うかを注目したい。

低身長・高スピードのトレンドに乗るツァウナーが来期の台風の目だ。また、今年はフラットに固執しすぎて駄目だったが、ハリ・オリは方向性を微調整するだけでトップになれるはずだ。あと・・・このトレンドを考えれば、岡部もまだやれるように思う。彼より軽く、彼より前への技術のあるジャンパーはいないのだから。斎藤監督と新しい飛び方を見つけて復活を遂げると信じている。

一方、オリンピック後はレギュレーション変更の時期でもある。スキーの浮力を減少させるか、もしくはBMIルールに手を入れるような提案がなされるんじゃないかと思っている。ジャンパーのことを考えると、特にBMIの変更はやってほしくないけどな・・・・・それに選手の体重が軽い日本にとってはどう転んでも厳しいルール変更になりそうだし。でも、今の低身長ブームは少し行き過ぎの感があるので、ちょっとの変更は致し方ないと思う。

ウィンドファクター・ルール(正確にはコンディション・コンペンセーション・ルール)は細部の調整を経て全面的に採用されることになろう。このルールと厳しいマテリアル・コントロールにより、スキージャンプ競技は新たなフェイズへ・・・・アスレチック競技としての成熟フェイズへと突入する。より紛れがなく、能力差がきちんと結果に現われる競技へ。これは、スキージャンプのギャンブル的要素・・・ある意味、特徴的な魅力が減じるということでもある。しかし、私はモータースポーツのF1が厳しい規定を経て新たな魅力を得たように、スキージャンプにも新たな魅力が生まれてくると、今はポジティブに捕らえている。オフに将来に向けての良い議論がなされることを切に願って、筆を置きたいと思う。

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Comments

シュリーレンツァウアーの考察面白かったです。

私は来年はスロベニアのプレブツに期待してます。
youtubeにスローで今年の日本選手達の踏切が見れる動画があったんですが(宮の森?)、岡部選手の鋭さは相変わらずのように見えました。きっと来期は復活してくれると思っています。

Posted by: 安蘇 | March 28, 2010 at 01:38 PM

プレウツ(彼の名前をどう読んでいいのかはっきりしないんですが、そう発音しているように聞こえる)には私も注目しています。彼は来年、再来年と第1のピークを迎えそうな気がします。

昨シーズンのクオピオで岡部が勝った時、2位と3位はアマンとマリシュだった・・・この組み合わせは偶然だったとは思いません。今期、彼が順調だったら、これがオリンピックで再現されていたかもしれない。そう思うと、今やめてしまうのは本当にもったいないと思ってしまうのです。

Posted by: かずやん | March 30, 2010 at 12:15 AM

こんにちは。既に御存知かもしれませんが、日本のジャンプのナショナルチームですが、斉藤智治ジャンプ部長がヘッドコーチ兼任、北野建設の横川朝治氏がチーフコーチに決まったようですね。

Posted by: Risa | April 24, 2010 at 05:05 PM

どうもです。
この人事、どう思います?
結局、誰もやってくれなかったということなんでしょうねぇ・・・。

ナショナルチームを中心としてやっていこうという雰囲気・体制がないのがそもそもの問題なんでしょう。そして、それを変えていこうという意気込みも感じられない。そんな状態で、誰もお飾りにはなりたくはない、ってところなんでしょうね。

Posted by: かずやん | April 25, 2010 at 09:17 PM

宮平秀治氏がコーチになるそうですね。
良かった。これでなんとか体制が整った気がします。

Posted by: かずやん | April 30, 2010 at 11:23 PM

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