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March 25, 2010

2009-2010年シーズン回顧 (2/3)

(1)の続き

KAMビンディングがもたらしたもの

昨シーズン来、スーツのレギュレーションは運用も含めてかなり厳しくなり、スーツはペラペラでピチピチといっていいものになった。スーツとボディの発生する浮力は、もうこれ以上減らせないレベルに減った。この先は、もうスピードスケートのようなスーツにするしかない状態だと思う。

一方、スキーのマテリアルは進化し続けてきた。KAMビンディングの登場はその流れの中のひとコマでしかない。これによりスキーの発生する浮力は徐々に、でも確実に増大した。つまり、スーツとスキーの発生する浮力の比が、スキー寄りにシフトしていったということになる。

前から言っていることだが、スーツの発生する浮力は身長の2乗に比例するが、スキーの発生する浮力はスキーの長さ、つまり現行レギュレーションでは身長と単に比例するのではないか、と思っている。そこまで極端ではないにせよ、スキーに頼った浮力は身長の2乗に比例して増大することはない。

BMIルールによって、現在、ジャンパーの体重は身長の2乗に完全に比例している。と、いうことは・・・スーツの浮力が落ち、スキーの浮力頼りになればなるほど、身長が高いほど浮力と体重の比は悪くなるということになる。これが、最近、低身長が有利になってきた理由だとみている。

その傾向は昨シーズンから感じていた。フライングで低身長のジャンパーが意外な伸びを見せることがあった。その最たるものが、今年のハイェックである。

KAMビンディングはその傾向を大きく加速することになった。あのビンディングの効果は、おそらく、スキーをより安定して広げられるようになる、ということだと思う。スキーの浮力を最大限に生かすためにはスキーを大きく開いて、VよりもHに近い形にするほうがいい。しかし、そうなるとスキーを地面と平行に保つのが難しくなる。KAMビンディングは足首の柔軟性やつき方によって規定されていた、開くことのできる限界を解除する効果があるのではないか?アマンはそのビンディングを使い、スキーを開き、より前傾を深くしていままでにない浮力を得ることに成功したのではないか?

この見立てが正しければ、この技術革新はスキーの浮力の割合が相対的に大きい低身長ジャンパーに有利に働く。今まで、あまりスキーを開かずに浮力を頼りにしないジャンプをしていたジャンパーに特に効果が大きいと思われる。この2つの条件は、アマンとマリシュにぴったりと当てはまる。

今年のシーズンを技術面から大局的に観れば、トレンドの転換点がオリンピック前にあり、それに対する対応力、プロデュース能力が試されるシーズンだったということになろう。チームとしてのオーストリアとドイツ、個人としてのアマンとマリシュはその点において他に一歩先んじていたということだ。アマンは正しい時期に新しいマテリアルを投入し、他がそれに適応するまでのわずかな期間にオリンピックを置いた。もし、これが偶然だとしたら彼のとてつもない運を、これが意図的なものだとしたら凄い戦略眼を感じずにはいられない。私は投入時期に関しては、なんとかオリンピックに間に合った!というのが実情だったんじゃないかなと思っているけど・・・。

先週のフライング選手権でのモルゲンシュターンとロイツルのフライトには、今までの彼らにはありえなかった浮力があった。彼らは短期間でKAMビンディングを自分のものにし、浮力を増大させることに成功していたのだろう。しかし、時既に遅し。

また、スキーの浮力増大・スーツの浮力減少は、ジャンプ台のプロフィール更新(スタンダード化)ともあいまって、「技術のスタンダード化」を促進したように思う。特に、ジャンプの方向性において「前、でも少し上」のような意識が浸透していった。フラットジャンパーであったロマーレンやクラニェッツは少し上に、逆にロイツルやコフラーは少し前に・・・・というように方向の収斂が起こった。フラットジャンプに固執したり、上への意識を持ちすぎたりしているジャンパーは相対的に伸びなくなっていった。その結果として、新しいプロファイルの台ならノーマルであろうがフライングであろうが同じような結果になるという現象が起こったのだろうと思う。

(続く)

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