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August 09, 2009

新ルールのテストを兼ねてサマーGP開幕 ヒンターツァールテン

サマーGPが開幕した。夏は調整期間、成績は冬と関係ない・・・と不振チームのコーチは言うが、実はここ4期連続でサマーGPの覇者が冬の総合王者になっている事実を知らないわけではないだろう。冬よりも条件が安定している夏は、選手のパフォーマンスが如実に表れる。

今年のサマーGPにおいて、FISは新ルールを試す。昨年来、ジュリーの裁定によって競技の公平さや安全性についての不満が噴出するような事態が何度か起こり(例えばこのバンクーバーの試合)、大きな議論が巻き起こった。議論は、試合中に風の条件が変わってスタートゲートを変更する必要が生じたとき、初めから飛びなおさずにすむようにするにはどうしたらよいか・・・・という点に収束していった。それが可能であれば、条件の変化に従ってジュリーは柔軟にゲートを変えることができ、選手を危険にさらすことなく試合続行が可能になる。

その議論の結果として、ジャンパー間のアプローチの長さと風の条件の差を得点化し、条件の差異を均すルールが考え出された。例えば、途中でゲートを下げたとき、低いゲートから飛び出したジャンパーには短くなったアプローチの長さにGate Factorを掛けた得点が加算される。また、飛行中の風の平均の強さを計測し、そのシリーズに一番初めに飛んだジャンパーとの風速の差にWind Factorを掛けた点数(もちろん、向かい風ならマイナス、追い風ならプラスとなる)が加算される。これらのFactorsは台の大きさを元に数学的に定められたものが用いられる。ヒンターツァールテンではGate Factorは6.4points/m、Wind Factorは7.2points/m/sとなっている。ノーマルヒルだから、これらはそれぞれメートル当たり3.2m、3.6mの飛距離差にあたることになるわけだ。このルールの下では、どんな条件でも“理論上は”公平となるわけである。

さて、予選・団体戦は風が穏やかだったこともあり、あまり影響は感じられなかった。ジュリーがゲートを変更しなくてはならない事態も生じなかったし。しかし、日曜の個人はこの新ルールの有用性が試される展開となった。1回目、途中から追い風が強くなり、好調だったロマーレンや栃本が失速する事態が起こった。ここでジュリーはゲートを2つ上げた。今までなら初めから飛びなおしとなるケースだが、今回は残りのジャンパーは6.4ポイントのマイナス点でそのまま飛ぶことになった。また、1回目最終ジャンパーのアマンの時、非常に悪い条件となった。その中で飛んだアマンは距離が伸びなかった。トップのヤコブセンとの飛距離差は6m、ノーマルでは絶望的な差のはず・・だった。しかし、風による加点が9.4点、距離にして4.7mあり、最終的にはこれが効いて2回目の逆転に繋がったのである。

また、ゲートはコーチからの要請により下げることができる(上げることはできない)。2回目、ドイツ・チームはこれを戦略的に使用することを試した。ウアマンが1つ、好調のスペートはなんと3つも下げたのである。3つ下げると、距離にして約5mの加点となる。結果は芳しいものではなかったが、向かい風が強くなるような条件では、シュリやオリなどの飛び出し速度の必要のないジャンパーが行使するかもしれない。

しかし・・・・見るほうにとってはこのルールは厄介だ。見たままの飛行が直感的に点に結びつかないのだから。結果が表示されるまでわからない。極端な話、応援しているジャンパーがヒルサイズまで飛んで完璧に降りたとしても、その瞬間にはヤッターと叫ぶことができないのである!もし、そのとき2m/sの向かい風が吹いていたとしたら、ラージヒルでは飛距離にして10m近く点数が引かれてしまう。また、意図的にゲートを下げるケースでは、それがきちんと知らされたとしても頭の中でこの台のGate factorは・・・などと計算してそれを感覚に組み込むことなどできるはずもない。そう、このルールは刹那的な喜び・・・ジャンプ観戦の醍醐味を殺してしまうのである・・・・。

はっきり言う。私はこのルールが嫌いである。
特に風の条件を均すことはして欲しくない。

このルールが生まれた議論は至極まっとうなもので、それについて異論はない。Gate factorについては、根本的な考えには賛成だ。日曜の試合でその有用性は証明されたと思う。ただ、ゲートの設定権限はジュリーに限定し、選手やコーチがタッチできない方がいい。あと・・・ゲートを変更したときにそれがきちんと観客、視聴者にわかるようなシステムが必要だと思う。

風のほうは、ゲートのこととは別に議論するべきだ。風の影響は風速だけで決まるものではないし、本当にジャンパーが感じた風を計測することは不可能だろう。勝負どころでの瞬間的な風の影響は均せるのか?もし、見た目的に完璧に勝ったはずのジャンプだったのに、ふたを開けてみれば負け、みたいなことが起こったときに、選手も、観客も納得できるのだろうか?屋外競技であり、風との闘いでもあるジャンプ競技の本質を脅かしかねないWind factorルールは、もっと慎重に議論した上で導入するべきだと強く思う。

結果は、団体はノルウェーの圧勝、個人はアマンの逆転勝ち。個人2位のヤコブセンはずっと好調だった。去年は怪我の影響もあったのだろう、左右のバランスが悪く飛行中に少し回転するようなところがあったのだが、今回は完璧に真っ直ぐ飛んでいた。今年は間違いなくチャンピオン争いに入ってくると思う。ノルウェーではもう一人、ロマーレンが凄いジャンプをしていた。個人は残念だったけど・・・。去年も時折感じていたのだけど、彼は飛び方をかなり変えてきている。サッツで体を高く上げることを意識していると思う。おととし、岡部が復活したときと同じようなモデルチェンジだ。フライング世界記録保持者のプライドを捨てて取り組んできた、ということが感じられるジャンプだった。

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Comments

観る側にとって醍醐味が味わえなくなるような新ルールですね(ヒルサイズ超え常連ジャンパーはスタート位置下げるようになるんでしょうね)。最長不倒のヒルサイズ超えにはMan of the dayみたいな感じで特別賞(或いはスペシャルポイントプラス)でもあれば面白いのですが…
バンクーバー後にBMIルールが更に厳しくなるのは以前ニュースで知りましたが、このルールについては初めて知りました。これだと毎回実力検査ってな感じで、勝つ人はほぼ一定になるんですかね?

Posted by: Risa | August 10, 2009 06:58 PM

実力検査・・・うーん、そのとおりです。
このルールは、“競技としての”ジャンプを考えた時、間違いなく正常進化の方向です。能力のある人が勝つ。競技者には受け入れられるでしょう。

しかし、“スポーツショウとしての”ジャンプの魅力は、風によるギャンブル性にある・・・と言ってしまうと言いすぎでしょうか?風によって結果が変わるからこそ、見てる方が一緒になって風を祈れるわけです。初めから結果がわかっているジャンプは面白いのでしょうか?

これはまさに二律背反のテーマです。議論の行く末に注目しましょう。

Posted by: かずやん | August 10, 2009 08:45 PM

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