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May 16, 2007

ユリア・フィッシャーのコンサート

月曜日、ケルンフィルハーモニー(Kölner Philharmonie)で行われたニューヨークフィルのコンサートに行ってきた。お目当ては、ドイツの若手バイオリニスト、ユリア・フィッシャー(Julia Fischer)の音を聞くことにあった。

彼女は最近、マイナーレーベルのペンタトーン・クラシックスから良質のSACDを矢継ぎ早にリリースしている。これらのディスクたちは、評論家連中やオーディオ機器のエンジニアもテストに使用しており、マニアの間ではかなり知られている。写真写りのいい容姿(女流アーティストとして非常に重要)があり、しかもそれを必要としないだけの実力があるため、クラシックファンの間でも人気急上昇のはずだ。

私もミーハーなので彼女のディスクを一枚買った。だが・・・このディスク、私の安物の機械ではまったく鳴らない。いや、もちろん音は鳴るのだが、バイオリンは大袈裟に言えば蚊の鳴くような音なのである。それだけでなく、全体としてもまったく空気感を出せていない。パースペクティブを描けていない、という表現が的確だろう。ダイナミックレンジを大きく取って平均の信号レベルが低いために、アンプは力が要るし、微小信号をマスクしないクリアさも求められる。再生のハードルが高いディスクだ。そう考えるとポップスやジャズのディスクは、多かれ少なかれ安物でもそれらしく鳴るような仕掛けが施してあるということか・・・・。

おっと話が脱線してしまった。とにかく、彼女のバイオリンの本当の音を聞いてみないことには、家での再生音の評価はできないということで、大枚をはたいて出かけていったわけである。

ケルンフィルハーモニーは大聖堂のすぐそばにある。非常に珍しい形のホールだ。すり鉢状に掘り下げた底にステージがあり、観客席はそれを囲むように作られている。ホールの形は全体としてはカブトガニというかミレニアムファルコン号というか・・・そういう不規則な形で、天井は真ん中がお椀状にせり出している。つまり、オーディオ的に言えば定在波の立つ要素がまったく無いホールである。その形はホールトーンにも現れている。よく言えばタイトでクリアーな、悪く言えばデッドで素っ気無い、ホールの規模に比べて残響時間の短いホールである。

で・・肝心のバイオリンの音。彼女が演奏したのはブラームスの協奏曲と、アンコールでのバガニーニのカプリース、バッハのパルティータ。まぁ、一つの楽器から、あれほど多様な音色が出せるんだーと感心した次第で・・・。特にバッハは素晴らしかった。家のスピーカーからはあんな音は出てません。当然です。ただ、バイオリンとオーケストラの音量の比は、彼女のディスクの通りであった。つまり、一本のバイオリンから出せる音というのは、たとえ名器1750 Guadagniniといえども限界があるわけで、その状態でフルオーケストラに対抗できるのは音量ではなく音色ー音の浸透力の違いーなんですな。だから、あのディスクを、音色をきちんと出せない状態で聞くと、バイオリンの音は蚊のなくような音しかしないわけです。そう考えると、普通のバイオリン協奏曲のディスクではバイオリンをオンマイクで収録して、人工的に強調してあるということも同時に分かってしまった。

ただ残念だったのは、ケルンフィルハーモニーのホールトーンは、バイオリンという楽器に合っていないということだった。特に、高音がどうしても死んでしまう。デッド過ぎるのである。バイオリンはホールを楽器の延長として使わなくては豊かな響きを作れないようである。

一方、プログラムの後半で演奏されたバルトークの”オケコン”-オーケストラのための協奏曲-はこのホールのトーンにバッチリ合っていた。こういう、分厚い低音に支えられて、金管がパーン、パーカッションがスパーンという曲、そしてマゼール/ニューヨークフィルの歯切れの良い演奏というのは、妙な残響に邪魔されない方がいい。神童マゼールは77歳になってもそのオーバーアクションは健在であった(笑)。最後はお決まりのハンガリー舞曲で決めて、スタンディングオベーションが沸き起こった。

ユリア・フィッシャーは思ったよりも小柄な人であった。演奏後に観客席に私服で入ってきたのをかなり近くで見たのだけど、数億円のバイオリンを小脇に抱えている以外は、普通のドイツ人のお姉ちゃんである。その辺にいても、ぜんぜん気づかないであろう。しかし、ステージでのその立ち姿は美しかった。ストイックとまで言えるような、鬼気迫る集中力で仁王立ちし、百戦錬磨のマゼールをグイグイと引っ張っていた。あれで一回り以上年下とは・・・ううむ。

ということで、少しオーディオ熱再燃か(苦笑)。とりあえず彼女のバッハ/ソナタ・パルティータ集は注文してしまった。

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