February 07, 2010

思ったより白熱したチームツアー/バンクーバーオリンピックメダル予想

オリンピック直前ということもあり、マリシュ・アマン、そしてフィンランドAチーム不在の中ヴィリンゲンの大会は行われた。土曜の個人は当然のようにシュリ対ヤコブセンの一騎打ちの様相となり、シュリが1回目にスーパージャンプを決めて逃げ切った。シュリーレンツァウアーは2回目にブーツのトラブルで飛ぶ直前まで修理、おそらく無理やり固定したような状態で飛んで逃げ切ったのだから恐れ入る・・・。

ということでチームツアーの方もオーストリアがトップに立ち、もう間違いないと思っていた。しかし、日曜の団体戦スタートリストを見ると・・・オーストリア(シャベライター、ヘイベック、トゥルンビクラー、ツァウナー)・・・・なんと、10万ユーロをBチームに託し、オリンピックチームはバンクーバーへ。おいおい、ノルウェーに対するリードはたったの40点なんだぞー!団体戦の40点なんて無きに等しい。ノルウェーはトップチーム、しかもヒルデの復調でかなり強いんだぞ!

でも、ふたを開けてみればオーストリアBチームは大健闘。トゥルンビックラーが調子落ちで足を引っ張りながらも、ヘイベックとツァウナーがスーパージャンプを連発して他チームのエースと互角に渡り合う。3位で迎えた最終ジャンパー・ツァウナー。その時点でトップのノルウェーとの差は45点。つまり、チームツアーでは5点ビハインドということになる。しかし、ノルウェーは3人目のヤコブセンのスーパージャンプをもってようやく逆転した状態で、最終ジャンパーは調子が下降線のロマーレンであった。そしてツァウナーは物凄い高さのジャンプで142m!しかも実はその時、ずっとあった向かい風がぴたっと止まっていたのである。つまり、ロマーレンはリードを保つために無風でゲート10から138m飛ばなくてはならないのだ。しかも、今日の試合でここまで2位のドイツ・ウアマンまで今期一番のスーパージャンプでロマーレンにプレッシャーを掛ける。ロマーレンは降りた瞬間、頭を抱えた。あまりプレッシャーに強くないロマーレンを4人目にした作戦のミスと言えるが、実はノルウェーは8本とも130mを超えていて、ヤコブセンはエースの役割を存分に果たしている(141m/145m)のである。これで40点差を逆転できなかったのは、まさにオーストリアBチームが強かったということに他ならない。もし、トゥルンビックラーの代わりにコッホが飛んでいたら・・・地元で神がかり的なパフォーマンスだったドイツともいい勝負をしていただろう。

ドイツが団体戦で勝ったのは2005年以来だそうで・・・・オーストリアAチームがいなかったとはいえ、強いノルウェーに勝ったことは誇れるだろう。オリンピックに向けて立て直してきたことは間違いがない。

しかし、ほんまなんでオーストリアからはこんな奴らが出てくるんだ!?ツァウナーは非常に左右のバランスの悪いジャンプなのに、とんでもないパワーとスピードで他人よりも一段上を飛ぶ。まさに原田のような、恐るべき素質の持ち主だ。一方、ジュニアの世界選手権で金を取って乗り込んできたハイベックは洗練された大人のジャンプで楽々と伸ばしてくる。空中もとても良い。こいつら、今の時点でも他のチームなら堂々のメダル候補としてバンクーバーに行ける力がある。完成したらどうなるんだろう?

あと、オーベルストドルフで転倒してオリンピック出場が危ぶまれたコフラーも土曜は元気に飛んでいて良かった。そうそう、もう一つの驚きは湯本の復調ぶり。何か詰まっていたものが取れたような、思い切りの良いジャンプで上位に食い込んでいた。大倉山で葛西・伊東に勝った力は伊達ではない。

さて、いよいよ来週に迫ったオリンピック。恒例のメダル予想をしてみます。

ノーマルヒル
金 マリシュ
銀 モルゲンシュターン
銅 ロイツル

ノーマルはマリシュ悲願の金メダルと予想する。かなり願望も入っているが、年が明けてからの彼のジャンプには凄みが感じられるからあながち穴予想ともいえないだろう。とにかく技術勝負になるノーマルヒル、彼の経験に賭けよう。モルゲンシュターンは調子としてはパーフェクトでジャンプも非常にバランスがいい。ランディングも上手く、飛型点が出るのも強み。ロイツルは本来なら金メダル候補だが、今年は爆発力がないので銅どまり。シュリーレンツァウアーは2本揃わないことが多いので、メダルを逃すとしたらノーマルだろう。アマンは飛型点で損をするので、HSを大きく超えないとメダルには届かないだろう。また、もし、葛西が個人でメダルを取るとしたらノーマルだと思う。

ラージヒル
金 シュリーレンツァウアー
銀 アマン
銅 モルゲンシュターン

ウィスラーのラージヒルでは、他のジャンパーがシュリーレンツァウアーに勝つのはかなり難しいと思う。アマンとモルゲンシュターンの両金メダリストを従え堂々、頂点に立ってほしい。穴としては、やはりハリ・オリ。風次第で金までありえる。HS越えが連発になったりしたとき、彼のスーパーフラットなジャンプは飛距離だけではなくランディングでも有利だから。そういう条件では、クラニェツやヤコブセンも怖い。もし、超大穴を狙うとしたら、アマン軸でオリ、ヤコブセン、クラニェツの(風使い)3連単ボックスだろう。本当ならコッホを足したいところだけど、彼は出られまい・・・。

団体
金 オーストリア
銀 ノルウェイ
銅 ドイツ

正直、オーストリアが負ける姿を想像できない。よほどのことがない限り金メダルだろう。2位以下ははっきり言って混戦。日本にもチャンスはあると思っているけど、準備や臨戦過程を考えるとちょっと厳しいのではないかと思ってしまう。長い準備期間を取ったのに、妙に忙しくてちゃんと調整できていないように思え、しかも本当の意味での勝負勘が失われてしまっているのではないかと危惧している。杞憂であれば良いのだが。逆にノルウェイとドイツがチームとしてちゃんと仕上げてきている感がある。メダルの大穴はチェコ。平均的に飛べるジャンパーが揃っているうえ、大将ヤンダが復調気配。クデルカがいれば・・・とないものねだりをしたくなるところだろうな。

あと・・・不気味なのはアホネン。彼はオリンピックのメダルのためだけに復帰したようなものなのだから、当然ここにピークを持ってくるだろう。もし、彼が全盛期の力と気迫を取り戻したら・・・・そううまくはいかないと思ってはいるが、気にはなる。

嬉しいことに、今回のオリンピックは時差の関係で(ヨーロッパでは)ゴールデンタイムにライブが見られる。とにかく楽しみ。

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January 31, 2010

フライングのリスクとウィンドファクター・ルールの課題 オーベルストドルフ・フライング

また、冷え込み・・・ここらでも雪が10センチぐらい積もっている。北や東ではもっとすごいことになっているそうだ。何十年ぶりの大雪というところも多い。

しかし、オーベルストドルフのフライングはほぼ問題なく開催された。このフライングを皮切りに今年もTeam Tourと題して今週から来週にかけて賞金ツアーが行われる。このオリンピック前の大事なときに。ヨーロッパ人にとってオリンピックはそれほどの大事ではないが、それでもモルゲンシュターンやシュミットがいないところにその影響は見え隠れしている。やはり、今、フライングを飛ぶことのリスクは避けたいというのが本音だろう。実際、今日の試技でコフラーが転倒しヘリで病院に担ぎ込まれた。痛がりようから見てオリンピックはアウトかと思われたのだが、幸い、検査の結果どこも折れてはいないということだった。とりあえずオリンピック参加に支障はなさそうとのことである。

もう一つ、今年のチームツアーとノルディック・トーナメントでは俗に言うウインドファクタールールが試験導入される。今週末、風が強い中でもフライングの試合が支障なく行われたのは、このルールのおかげと言っていい。条件が刻々と変わっていったときに、ゲートを変えることで条件を公平にすることができるのがウィンドファクタールールの利点だが、その実際の運用についてはジュリーの方も試行錯誤中というのが実情のようだ。団体戦の2回目や個人戦の1回目、向かい風が徐々に強くなったとき、ジュリーはどんどんゲートを下げることを余儀なくされた。開始時と最後では8段も9段も違うゲート、飛び出し速度が4キロも違う状況で飛んで、本当に公平と言えるのかどうか。また、土曜のラストジャンパーのシュリーレンツァウアーや、日曜1回目のハリ・オリのように、あまりにも低い飛び出し速度で風が凪いでしまったときに「どうしようもない」フライトが出てしまったこと。さらには、降雪時にはゲートを変更するのに時間がかかると、アプローチにたまる雪の影響で飛び出し速度が遅くなってしまうことへの対応などなど・・・。ブロアーで雪を飛ばすと逆差別になるし、ゲート変更中にはテストジャンパーは使えないし・・・。

と言うと問題山積みのように聞こえるけど、オーベルストドルフのフライングという難しい状況でこの程度で済んだということで、おそらく運営側も選手側もこのルールに対する自信を深めたに違いない。細かな議論を経て指針が固まってくるのだろう。時間が解決してくれる。

見る側への配慮もきちんと感じられた。風の強さはほぼ常時表示されるようになったし、降りてすぐに風によるポイントの増減が飛距離と共に表示される。今までは降りた瞬間に結果がほぼわかったが、今はポイントが出るのがちょっと楽しみな感じもあり、いい感じだと思う。とにかく、ウィンドファクター・ゲートファクターが信用できると思えればまったく問題ないのであった。慣れというものは恐ろしいものである。

今日はヤコブセンによる久々の勝利だった。予選からずっと好調で、恵まれてのものではない。調整がうまくいったようである。メダル候補に名乗りをあげる奴がもう一人現れたか。逆にシュリーレンツァウアーは不発でアマンとの差が逆に開いてしまった。また飛び出し速度が遅くなっているような感じもあり、方向性も安定していなかった。

オーストリアのオリンピック代表5人目は結局コッホになった。まぁ、当然と言えば当然なのだが。総合8位でオリンピックに選ばれないなんて、ありえないか。

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January 24, 2010

エール

日本のスキー競技のドンは、選手をはげまそうとしているのに違いない。
そうでなければ、あのような発言が度々出てくるはずがない。

ジャンプは非常に繊細な競技だと思う。選手のちょっとした心身のズレが大きくパフォーマンスに影響する。だからこそ、フィジカルだけではなくメンタルな面でのサポートが重要とされ、トップチームはカウンセラーを帯同している。

このオリンピック前の重要な時期に、選手の心を乱すような発言が内輪から(もちろん、政治家などの外からはどこでもよくあることだが)出ることは、まずない。日本以外では。

しかし、日本のスキー競技においては、それは毎回ある。

休養が必要な選手にプレッシャーをかけ、調子を維持していくために今こそ一時のリラックスが必要な選手を力ませる。

これが、トップのすることなのだろうか?

オリンピックは競技者のためのもの。国民のためのものでも、ましてや、協会関係者の面子のためでもない。選手が、自分のパフォーマンスを最大限発揮できるように準備し、そして参加する。その過程が、そしてその場で得た結果がすべて。もちろん、良い成績であることに越したことはないけど、それは他との比較でしかない。選手自分自身の中での納得度がもっとも重要なのだと思う。

オリンピック代表選手には、そんな外部の言葉に惑わされず、自分のために準備し、参加し、そして納得することができることを切に願う。そして、それが結果としてメダルという輝きによって報われることを。もし、メダルが取れなくても、自分自身の中で納得できたのなら、笑顔で帰ってきてほしい。決して謝らないでほしい。

がんばれ!

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January 23, 2010

まずいぞ・・・シュリーレンツァウアーが覚醒してきた  ザコパネ

今年のシュリーレンツァウアーは勝ちはするものの、イマイチこう、圧倒的な力を見せ付けるということがなかったように思う。アプローチに問題を抱えているように見えた。というのも、何故か飛び出し速度が出ていなかったからである。

しかし・・・・小休止の後のザコパネで見せた彼のパフォーマンスは、去年のそれだった。飛び出し速度は同僚のモルゲンシュターンとほぼ同じに戻っていた。

彼に敗れたチャンピオンたち・・・マリシュ・モルゲンシュターン・アマンの3人はそれぞれ、すごいジャンプをしていた。惚れ惚れするような、高度なジャンプだった。オリンピックに向けて完璧に仕上げてきた。あの低いゲートから、ほぼ無風でヒルサイズに到達するのは容易なことではない。

しかし、シュリーレンツァウアーは彼らより数段落ちる完成度のジャンプですら、彼らを飛距離で超えた。

失敗が許されるほどの差・・・これを圧勝と言うのだと、私は思う。もし、シュリーレンツァウアーがこのパフォーマンスをオリンピックで出せるとしたら、他のジャンパーは神頼み・風頼みをするしかない。

まてよ・・・確か去年も同じことを書いたような気が。やっぱりそうだ。彼はスロースターターなのだと、ようやく気づいた。ジャンプ週間が終わってから目覚めるのだ・・・・。

あと、オーストリアチームはどうなっているんだ!そんな理不尽な言いがかりをつけられても、実は本当に困っているのはポイントナー・コーチかもしれない。突然出てきた、ツァウナーのジャンプは規格外のものだ。私がコーチだったら、間違いなく彼を5人目に選ぶ。常時シングルに入る力のあるコッホが押し出されるなんて、そんな馬鹿な話があっていいものだろうか?もし、コッホが来週のフライングで勝ったりしたら(大いにありえるから怖い)、どうなるんだろう??

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January 17, 2010

希望と現実と 大倉山2連戦

アマンとモルゲンシュターンが参戦し、調子を上げている葛西との対決が楽しみだった大倉山の大会。しかし、、、土曜のライブは朝、日曜の試合はライブなし。ドイツの土曜の朝は忙しいのです。とりあえずビデオにとっておいて、それを見るまでは結果を見ないようにしたけど・・・やっぱりビデオとライブはドキドキ感が違う。せっかく、ドキドキできる試合だったのになぁ。

このように、ヨーロッパと日本の時差は非常によろしくない。特にヨーロッパから日本に行って数日は地獄だ。日本選手には間違いなく地の利があった。

土曜は、ほんと、葛西に勝つチャンスがあった。しかし・・・・大倉山の風神は、彼の新しいヘルメットが嫌いだったのだろうか?などとしょうもないことを思ってしまうぐらい、彼には風の運がなかった。1回目にいい風を送ってプレッシャーのかかるラストジャンパーにしておいて、2回目に叩き落す。なんと残酷な仕打ちなんだろう!

でも・・・日曜の結果を見る限り、それ以上に浮き彫りになった実力差・・・。地の利があって、それでも明確に差が見えるという現状。彼らにとって、これ以上残酷なことはないだろう。運があれば逆転できたかもしれない差だということはできる。でも、スキージャンプにとって、地の利は本当に大きいもの。それがあっても差があるということは、実際はもっと大きな差があるということ。それは、彼ら自身が一番感じただろう。

オリンピックに向けて、もうちょっとポジティブなことが書きたかった・・・。本番では、そんな私の浅い見立てをあざ笑うかのような活躍をしてほしい。

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January 07, 2010

競技者としての矜持 五輪メダリストの先にあるもの ジャンプ週間最終戦 ビショフスホーフェン

さらに寒くなってきた。今年の厳冬はちょっと異常だ。でも、キーンと冷えて気は安定し、ビショフスホーフェンの気まぐれな風の精も凍りついてしまったのか、とてもよい条件となった。

3戦終了時のコフラーのリードは14.6点。つまり、シュリーレンツァウアーが2回合計でコフラーより8.5m多く飛べば逆転できる。もし、コフラーの飛距離が130m程度ならば、135mほどを2回飛べばよい。このビショフスホーフェンの台は飛行曲線の高いパワージャンパーがあまり伸びない傾向にある台だから、実はかなり心もとないリードということだ。しかも、敵はシュリだけでなく、3-5位のロイツル(21.5点差)、アホネン(22.3点差)そしてアマン(25.4点差)のベテランの猛者もコフラーの失敗を虎視眈々と狙っていた。こういう本当にシビレる状況を経験していないコフラーにとって、これはかなり厳しい状況だなと思っていた。

予選から戦いは始まっていた。予選でアマンが125mほどに落ちてしまって、あれどうしたんだろうと思った。実は、これはアマンの戦略・・・1回目、早い時間に飛ぶためにわざと予選で中位に甘んじたのだった。彼は言う。「ビショフスホーフェンは日が落ちると追い風が吹く。だからできる限り早い時間に飛んだほうがいい風をもらえる可能性が大きくなる」。コフラーと飛ぶ時間をずらすことによって大逆転の可能性を得る・・・一か八かの賭けに打って出たのだった。

そして、それは当たった。1回目、本当に条件が悪くなっていった。3番目に飛んだアマンは136m、一方、コフラーのジャンプはすばらしい当たりのジャンプだったにもかかわらず129mに終わった。また、ここ一番で今年最高のジャンプを出したのは、アホネンとモルゲンシュターンだった。一方、シュリーレンツァウアーは去年と同じく、1回目、何か力んだジャンプで伸びず・・・・。

1回目終了時の差は、アホネンが12.8点、アマンが13.8点。両方とも爆発力のあるジャンパーだけに、コフラーは最低でも130m近くまで飛ばないと安心できないという、かなりプレッシャーのかかる状況になった。

そして2回目の最後。風は微妙な追い風で安定していた・・・競技者の力が、技術が試される最高の舞台をビショフスホーフェンの場は維持してくれた。シュリーレンツァウアー、吹っ切れたのかいいジャンプで134mまで伸ばし、少しの希望をつなぐ。そして、コフラー。緊張し、高潮しているのがありありとわかる顔でスタートした。やばいんじゃないかと思ったのだが、彼はそのアドレナリンをパワーに変え、乾坤一擲という表現がぴったりの力強いサッツで飛び出した!そのジャンプは高い放物線を描いて133.5m。シュリの希望を打ち砕き、アホネン、アマンにヒルサイズ越えを要求する強烈なデモンストレーションだった。

実は、ジャンプ週間王者をめぐる戦いの影に、もう一つのストーリーが流れていた。1本目3位のモルゲンシュターンはじっと狙っていた・・・復活の狼煙を上げる勝利を。完璧なタイミング、完璧な方向性・・・すべての歯車がようやく噛み合い、回り始めたことを告げる136mの大飛躍だった。そしてモルゲンシュターンの勝利への執念は、まだ戻りきっていないアホネンを0.7点抑えたのであった。

ラストジャンパーのアマンは、リスク承知で始動を遅らせフラットなジャンプを飛ぼうとした。ヒルサイズに到達するには、そうして風を待つしかないのだった。しかし、その賭けはコンマ1秒の踏み外しという失敗に終わった。

歓喜に沸くコフラーとモルゲンシュターン。オリンピックでメダルを分け合った二人が、一度は沈み、そして這い上がってきた。競技者としての矜持を本当の意味で得た彼らは、これからもお互いに切磋琢磨していくのだろう。今回もまた、二人だったから、アマンの執念を退けることができたのかもしれない。

その戦いの中に身をおいていることを楽しんでいるアホネンには、勝ち目はなかったか。そして、シュリーレンツァウアーは孤高のチャンピオンであるがゆえにまだ得ていないものの大きさを、今回知ったに違いない。コフラーのジャンプを見て、一瞬みせたふてぶてしい表情の中に悔しさを見た。彼はいい先輩に恵まれている。コツコツと飛型点を重ねてジャンプ週間総合3位に食い込んだロイツルもその一人だ。

季節は、一旦の休止のあと、オリンピックへと加速する。

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January 03, 2010

シュリーレンツァウアーやっと地元で勝った インスブルック

年が明けてかなり冷え込んできた。2日の予選は強風と雪のために中止となり、3日の試技を予選とし、KO方式ではなく普通の方式でWCが行われた。

このインスブルックの台は風の影響が大きく出る台だ。もともとあった小さな台の場所に大きな台を作ると、スペースの制限から、どうしてもアプローチの短い低速台となる。このタイプの台では、秒速0.5mの風があるのと無いのでは10mぐらい違うということも。特に、ワールドカップクラスの試合で低速設定になるとその傾向は大きくなる。

今日の試合はまぁ、望みうる限りの公平なものだったと思う。だが・・シュリーレンツァウアー警戒のためジュリーは非常に渋いゲート設定をした。89キロ前後の飛び出し速度では、風なしではほとんどのジャンパーは115mぐらいしか飛べない。1回目は多少風が舞っていたようで、そよ風が生死を分ける、みたいな状況だった。

でも、その設定でシュリーレンツァウアーはヒルサイズに到達するんだから、ジュリーは正しいのである。2回目もそのまま続行。さらに風が無くなり、結局120mを超えたのはシュリーレンツァウアーのみだった。というわけで、シュリーレンツァウアーの完勝。ちょっとだけ仕組まれた試合のような感覚もあるけどね(笑)。

コフラーはまたも4位。ただ、今回はシュリーレンツァウアーとの差が16点もあり、ジャンプ週間総合でも差は14点まで縮まった。まだ、コフラーはかなり有利だと思うが、シュリーレンツァウアーが今日みたいに爆発したら、自力で追いつける状況になった。やっぱりすんなりとは行かないもんだ。

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January 01, 2010

謹賀新年 予定調和のガルミッシュ

今年も、爆音とともに年が明けた。
新年を告げる花火は年々派手になっているように思う。2段式の花火が多くなった。昨日は風が無かったので、花火が終わるころには街中が煙たくなっていた。ケルンの中心部とかはもっとすごいんだろうな。日本の街中で冬にあれをやったら火事が頻発すると思う・・・。

去年を振り返ってみると、(少なくとも表面的には)平穏無事な一年だったと言える。今年もそうであることを切に願う。今年のキーワードはコミュニケーション。自分の言いたいこと、言うべきことをきちんと言うことを意識していきたい。

さて、ガルミッシュの新年ジャンプは、非常に良い条件の下で予定調和に終了した。結果はシュリーレンツァウアーの逃げ切り勝ち。彼はアプローチに少し問題を抱えていると思うが、それでも条件が公平で2本そろえば勝ててしまうということだろう。ロイツル、アマンもそれぞれの持ち味を存分に発揮して表彰台へ。コフラーは2本ともバッチリとは行かなかったものの、それなりにそろえて僅差の4位となりジャンプ週間総合王者へ一歩以上前進した。

ここにきてアホネンが急激に調子を上げている。今日の2本目は、本当にアホネンらしいジャンプだった。ビショフスホーフェンあたりで勝つかもしれないぞ。

それにしても、オーストリア・チームの5番目のオリンピック代表争いは熾烈を極めている。すでに4人は決定的。その4人ともに金メダルの可能性があり、また、メダル独占の可能性がある。そのバックアップを勤めるのは、コッホかトゥルンビックラーかミュラーか・・・。なんと贅沢な悩みだろう!オーストリアBチームというのが認められたら、そのチームはノルウェーと銀メダル争いをするだろう。一人、日本にくれんかのう・・・・。

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December 29, 2009

刻々と変わる条件の中で ジャンプ週間第1戦オーベルストドルフ

つかの間のクリスマス休暇が終わり、やってまいりましたジャンプ週間!

天気は安定していると思っていたのだけど、山の方はそうではなかった。今年のオーベルストドルフは追い風に悩まされた。予選から、強い追い風がヴァシリエフを含む何人かを叩き落した。

本選の1回目は、初めは無風の良い条件に見えた。ジュリーは向かい風警戒でスタートゲートを19番に設定。非常に渋いゲートだ。無風の中、葛西が120mを越えた。よしっ、と思ったのもつかの間、雨が強くなる。目に見えて落ちていく飛び出し速度。その上・・・追い風が吹き始めた。アホネンがすばらしいジャンプにもかかわらず112mに終わったときは、こりゃやり直しやな、しょうがないと思った。が・・・続行。

しかし、雨も風もどんどん強くなる。100m前後に落ちていくジャンパーたち。結局、シュミットが100mにも届かなかったところでようやくジュリーはやり直しを決定。ゲートは一気に4つ上がって23番。

やり直して初めは雨が強く、飛び出し速度はさらに落ちていった。しかし、風は少しづつ収まっていく。結局、まぁまぁ公平と言える状況だったとは思う。

こういう難条件はパワーとガタイのあるジャンパーに有利。コフラー、モルゲンシュターン、ロイツルが上位を占め、シュリ、アマン、そして伊東は不発に終わった。軽いジャンパーは水に浮いてしまう感じでスピードが出ない上、風の恩恵も受けられない。

2回目になっても、雨も風も強い。ゲートはさらに2つ上がった。しかし、条件は1回目のように刻々と変わるということはなかった。一つの例外を除いて・・・。アホネンがスタートしたとき、奇跡的に凪いだ。ヒルサイズに迫る136mは、このゲート、パワージャンパー、無風では当然の結果である。ジャンプ週間の女神はよほど彼がお気に入りらしい。

しかし、その凪は一瞬のものだった。一回目3位のロイツルが124mに終わったとき、ああ、このままか・・・思った。モルゲンシュターンの完璧なジャンプが126.5mに終わり、その予測はほとんど確信に変わっていた。

しかし・・・コフラーの調子の良さは想像をはるかに超えていた。久しぶりに、全盛期の原田のようなジャンプを見た気がする。最高の方向に100%のパワーで飛び出せば風なんか関係ない、というジャンプだった。自力で勝った。

悪条件でシュリ・アマンが苦しんだことで、既に彼らとコフラーの差は30点になった。コフラーの今の調子を考えると、これはかなり安全圏と思えるが・・・・。原田タイプのジャンパーは8本そろえることが難しいし、転倒の危険性も他のジャンパーより大きい。敵は完璧さを取り戻したモルゲンシュターンというより、自分自身となるだろう。

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December 20, 2009

冬将軍、伊東大貴の本当の力を引き出す エンゲルベルク3連戦

金曜の夜、何故か寝付けずに目を開けると、外がとても明るい。雪明りだった。クリスマスを前にヨーロッパにもようやく冬将軍が到来した。でも、今週末の寒さは半端じゃなかった・・・・土曜の朝、薬局の温度計は-18℃を示していた。顔に当たる風の冷たさに、ふと、これは人間の話し合いのもどかしさに業を煮やし、ついに諦め切った自然の冷たいため息なんじゃないかと思った。アメリカの方ではもっと怒りを込めた風が吹いているようだが・・・・。

だが、この寒気はウインタースポーツにとっては恵み。エンゲルベルクの3連戦は、多少強い風に悩まされながらも、まぁスキージャンプらしいと納得できる程度の良い試合となり、ジャンプ週間に向けての勢力図が明らかとなった。

全体としては、地の利を得てのびのびと飛ぶアマンに、不安定ながらも究極のパフォーマンスで挑むシュリーレンツァウアー。この2人に他のジャンパーが付け入るのは不可能に近いという、去年と同じような構図だった。

去年のロイツルに当たる上がり馬はコフラーと、そして、伊東大貴!予選・練習・本選とほとんど失敗らしい失敗がなく、しかもどんどんジャンプの切れが上がっていった。これは本物だ。日曜の表彰台はうれしいオマケだと思う。この調子ならこれから何度でも上がれるだろうし、頂上もめぐり合わせ次第で可能だ。これが、彼の本当の力。究極のロスレスサッツはアマンに比肩できるところまで来た。このまま上昇カーブを描いて、去年のロイツルのように・・・・と夢想するとワクワクする。

コフラーのジャンプの切れは、去年のロイツルを髣髴とさせる。一瞬で立つサッツの速さは天性の筋肉がなければできないもの。また、今日2位のロマーレンも本物。変な言い方だけど、ジャンプの方向性がものすごく普通になった。

一方で苦しんでいるのは、ヤコブセンとモルゲンシュターン。ヤコブセンは方向性が前過ぎで早く体が突っ込んでしまっている。モルゲンシュターンはタイミングが合っていない。両者とも、ほんの微かな問題のように見える。

他の日本選手も、もどかしいジャンプが続いている。風の当たりも良くない。特に岡部の調子が一向に上向かないのが気がかり。私は・・オリンピック団体でのメダルは彼にかかっていると思っている。私が選考委員なら、岡部は去年の実績で代表に内々定しておいて、日本で焦らずに休養・調整させるのだが。調子が戻れば大倉山のWCで活躍するだろう。そこで彼が戻らないようなら、また考えれば良いのでは?

追記
岡部、ジャンプ週間欠場とのこと。オリンピック代表選考基準も見直すとのことです。

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