シーズンの回顧をせねばならないと思いながら、バタバタしているうちに2週間が経ってしまった。その間に伊東・伊藤コンビの雪印入社、そしてシュリーレンツァウアーの故障・手術という二つのビッグニュースが飛び込んできた。シュリーレンツァウアーの故障はひざの靭帯ということで心配したが、幸い軽いもので術後の経過も良好、後遺症はまったく残らないとのこと。伊東・伊藤コンビの雪印入社は、彼らの競技環境という意味では現状では最善だろう。もちろん、いろいろと心情的な問題はあるのだろうけど・・・・。また、雪印一極集中の危うさと、ジャンプ競技のスポーツとしての自立への道が見えなくなっている状況には、今は目をつぶるしかないのかなぁとは思う。
さて、回顧。
去年は明確になった世代交代を結論とした。しかし・・・今シーズンのベテランのがんばりを見ると、その見立ては拙速だったと反省せざるを得ない。
岡部の快挙を筆頭として、今年は葛西、マリシュ、シュミット、ヴァシリエフ、キュッテルが70年代生まれで表彰台に乗った。また総合2,3位のアマンとロイツルはそれぞれ81年、80年生まれである。総合15位までの全員の平均年齢はなんと27歳に達している。10代のシュリーレンツァウアーとラリントが入ってこれだから、いかにベテランががんばっていたかがわかる。逆に言えば、中抜け・・・20代中ごろの選手の伸び悩みがはっきり見える。V字の全盛のころに技術を固める時期を過ごしたために、指導現場での技術的な混乱があったのではないかと推察するが・・・・。
今年は技術的には大きな変化はなかったが、多少だが浮力が増大してきて、全体として前傾が深くなっていたと思う。また、BMIレギュレーションの定着によって選手のタイプが差別化され、条件や台によっての有利不利がかなりはっきりと見えるようになった。背が高く体格のいい選手、いわゆるパワージャンパーに多少の不利があるように思われるが、全体としては非常にフェアな状況に見える。オリのような昔の岡部みたいなジャンプから、クデルカのような原田タイプまで幅広い飛び方が許容されていた。
ただ、総合上位3人は「サッツでは前への速度をできる限り殺さないが、上にもちゃんとゲインするタイプ」で、飛行曲線は比較的高い部類のジャンパーになった。とりあえず、このあたりが主流なのだろう。一方で複数のジャンパーが、リスク承知で前に突っ込んでいくジャンプを試しているように見える。近い将来、潮目が変わるのかもしれない。
チーム別の回顧。
オーストリアは順風満帆に見えるが、実はロイツル以外は案外だったという見方もできなくもないのである。最後までつかめないまま終わったモルゲンシュターン、全然ダメだったコフラー、安定しないコッホ、怪我などもありイマイチ伸び悩む若手・・・そして、シュリーレンツァウアーはもっともっとブッチギリであって然るべきだったと思っているのだ。驕れるものは久しからず、という言葉が頭をよぎる、そんなシーズンだったんじゃないかな。
フィンランドは、大看板のアホネンが抜け、ホープのハッポネンを怪我で欠き、しかも指導部が変わった。この激変の中でよくやったと思う。ラリントはスター性、能力ともに申し分ない、次世代を担うジャンパーだ。来期、アホネン・ハッポネンが戻ってきたら、チームとしてはかなり磐石の態勢となるだろう。時代を先取りしていると思われるオリがトップを狙う展開もありえる。ただ、彼の場合は問題は技術云々じゃないからなぁ・・・。
ノルウェー。コヨンコフスキー体制になって初めて、試練とも言えるシーズンだっただろう。細かな故障などの影響はあったと思うけど、バーダル以外にまったく覇気が感じられなかったなぁ。唯一の光明はエーベンセンという物理的な有利さを持ったジャンパーが出てきたということだろう。ヨケルソイやロマーレンに代わり、ノルウェーのフリーガーの系統を受け継ぐことのできる存在だと思う。
ドイツはマルティン・シュミットの復活とシュスターコーチによる変革の効果が出て少なくとも去年の闇からは抜け出したように見えた。ただ、若手の駒不足はすぐに解消するものでもなく、これ以上を望むのは難しい気がする。問題は若手ホープといえるショフト、ヴァンクの二人の“身体的な”成長が止まらなかったこと。彼らはジャンパーとしてはかなり厳しいと言わざるをえないほど骨格がしっかりしてしまった。鍛えてパワージャンパーを目指すしかないが、それには何年もかかると思う。今のところ、見た中ではボドマーが期待できそうだが・・・。
日本はこれ以上ないぐらい明るいシーズンだったと思う。結局はベテラン頼みから抜け出せていないのは事実なんだけど、彼らのパフォーマンスが素晴らしいのだからいいじゃないか。今年は伊東が波に乗れないまま終わったが、状況を考えればそれも仕方がない。端々に能力を感じさせるジャンプはしていた。それを結果に結びつけるという意味で、雪印、斎藤監督の手腕に期待する。若手の二人にも厳しいシーズンとなったが、それも今後への経験というふうに捕らえて良いだろう。
東欧勢ではヴァシリエフの存在感が大きかった。今年、彼は5キロ以上減量してシーズンに望んだそうで、その成果が出た。ロシアは全体の底上げができてきている。あとは兵役帰りのカレリンが元の成長曲線に戻ってくれれば、将来は明るいだろう。マリシュががんばっているポーランドには若い才能がきらめいている。伸び悩んでいるように見えるけど、多分、もうすぐ出てくる。フラ、ジルツ、ストコフスキあたりの名前は覚えておいていい。
スロベニアはチームのゴタゴタもあって非常に厳しいシーズンとなった。若手も伸び悩んでいる。チェコは世界選手権に向けてがんばってはいたが、壁を破るとまではいかなかった。こちらもクデルカに続くジャンパーが伸び悩んでいる印象。チクルあたりがもっと来ると思っていたんだけど。
スイスは、チームとして振り返る必要はないだろう(汗)。アマン・キュッテル二人ともよくやった。フランスはチーム規模を考えれば躍進していると思う。シェダールは嵌れば表彰台に乗れる実力があったが、何故か運がめぐってこなかった。その他のチームはまったくWCレベルではダメだったなぁ。イタリアはなんでこんなにダメダメになってしまったんだろう・・・・。
最後に、今年は女子ジャンプが世界選手権で正式種目となるという節目があった。もう流れは止まらないと思う。オリンピックで正式種目になり、WCがテレビで放映されるようになるのも時間の問題だ。何よりも女子ジャンパーには他の冬季競技にない可憐さがある。アルペンや他のノルディック競技と違って、ゴツクない人の方が有利なんだから・・・・(汗)。
さて、こんなところです。来年はオリンピックイヤー。素晴らしい戦いが繰り広げられることを期待しよう。
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