November 26, 2016

ドメン、初勝利 開幕戦・クーサモ/ルカ

スキージャンプのシーズンが、今年はクーサモ・ルカで始まった。
今季はブログにコメントを毎回アップすることはできないと思う。備忘録的に不定期で書いていくというぐらいの気持ちでいようと思う。

例年、ここは風が強くて困るが、今回は奇跡的に穏やかだった。
ただ・・・そうであっても、この台の性質がつかめなかった。妙に風にセンシティブな場所があるらしく、ウィンドファクターの値とジャンパーの動きがリンクしない。へんなエアポケットに落とし穴のように落ちてK点までたどり着けないジャンパーがいたと思ったら、その次のジャンパーは下で向かい風をもらってすごく伸びるという感じ。飛び出しが超低速で少し大倉山にも似ているように思う。選手は試行錯誤しており、ジャンプの飛び方も完成度も毎回違うので、さらにわからない。おそらく選手自身もよくわからないまま飛んでいたのではないだろうか。

金曜日はプレウツ兄弟のワンツーかと思ったら、兄貴が転倒して弟にワールドカップ初勝利が転がり込んだ。ペーターに怪我がなくてよかったよ。土曜は風のいたずらが少し過ぎたが、結果はフロイントの完勝。彼にとっても驚きの勝利だったそうだ。春に股関節の手術をしたことで、ジャンプを飛べるようになったのはついこの間ということだった。全体の勢力図は去年とあまり変わらない印象。ただ、ノルウェーはタンデ頼みの状況がしばらく続きそう。ガングネスがまた膝をやってしまって不出場の上、フォアファングとハウアーは素人目にも酷いジャンプをしていた。

日本チームもボチボチ、良かったと思う。今年は伊東大貴の年になりそうな気配。金・土とも、2回目のジャンプはかなりの完成度だったし、体のバランスもよさそう。久しぶりに夏にきちんと準備できたという感じがした。土曜に竹内が失格になったのは残念だった。いいジャンプだったのになぁ。今季もスーツのチェックは厳しくするぞという検査部からのサインはいいのだけど、その網に引っかかった選手はたまらない。

ところで、今年からユーロスポーツのドイツ放送チームが変わったんだが・・・うーむ。ティーレとジークムントのコンビに慣れていたせいもあるが、どうも合わない。特に解説のハニー(スヴェン・ハンナバルト)の声の暗さがしんどい。こなれてくるといいのだけど

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November 20, 2016

スマホ

時は過ぎ、もう冬になりつつある。
スキージャンプのワールドカップも、もうすぐ始まってしまう。
これだけ長いことブログを放置したことは初めてかも。
書くべきことがなかったわけじゃないが、何かを能動的に、外向きに行う気持ちや余裕というものがまるきり欠けていた。スキージャンプも始まれば見るんだろうけど、今季は昨季までのように発信することはできない気がする。

それは音楽やオーディオにおいても同じ。決まりきったディスクをちょこっとかけて、音がちゃんとしていることを確認して、安心して終わり。ちょっとダメでも、また良い時もあるだろうと、楽観的というよりは投げやりな気持ちでアンプのスイッチを切ってしまう。

そうこうしているうちに、スマホを持ってしまった。とうとう。はじめはiPad使っているんだからiPhoneにするぞと意気込んでいたのだが、本当にiPhoneでないとだめ?TIDALをオフラインメインで使うんだったら128Gにしておかないと後悔するかも?7ではヘッドフォン端子が無くなる?なんていうことをあれこれ考えているうちに、Appleの方向性に疑問を感じ始め、3倍の値段差に尻込みし、そして結局格安スマホにした。で、、持ってみて、その200ユーロしかしない手のひらサイズの機械のコンピューティング能力に愕然とした。この計算力が、3日間無充電で持つなんて・・・マスプロダクションの恐ろしさを感じずにはいられない。少なくとも、今までスマホを持っていなかった人間にとっては、この安いAndroidで必要十分だ。Appleの信念が、意固地と妥協の間で揺れ動くわけだ。

そして、もう一つの驚きがそのスマホの携帯オーディオプレーヤーとしての音だ。始めはスカスカの音でなんじゃこりゃと思った。が、TIDALで少し我慢して鳴らしていったら、「あれっ」と思うような音が出るようになった。ただアンプ部が貧弱なのは明らかで、AKG K601では音にならない。ならば・・・と感度の高い、インピーダンスの低い、速い低音がしっかり出るカナル型イヤホン・・・こういうスマホで使うことを想定している価格帯だが、だからといって安かろう悪かろうでは無いもの・・・を探した。すると、外出先で聞く分には全く問題がない、いや、時々音楽に入りすぎて危ないぐらいの音が出るようになって「しまった」。おぃおぃ、このスマホ、たぶんヘッドホンアンプ部には10ユーロもかかっていないはず。それに30ユーロぐらいのイヤホン・・・それでちゃんと聴ける音が出るなんて。

もちろん、この音は全くオーディオ的ではない。すごく静かなところで聞くと、空間はない・一番上の方は丸っこくて抜けない・一番下はすっぱり切れている、ローレベルは消えちゃってることがわかってしまう。が・・・街の中ではそれらは全く必要のない要素だ。ただ、ちゃんと音のスピードが揃っていて、音域バランスが整っていて、ファンダメンタル領域がしっかり出て、それでいて中高音が刺さらなければいい。「ただ」なんて言ったけど、なかなかそうはならないものだ。その上で、ほのかに「チャーミング」で「アナログ」な音がする。たとえて言うなら良いFM放送のような音。いくつかの点において、メインのシステムに勝つ場面があるのが困った・・・録音が悪い・古いがあまり関係ないのも良い。

これって、偶然だろうか?いや、違う。たぶん、マスプロのおかげだ。極限まで共通化されシンプル化された枯れた回路を使い、そのうえでデジタル的に音を追い込む「人的コスト」がかけられているのだ。何十万ユニット出るからこそかけられる開発コストだ。このスマホを100個だけ作るとしたら、いったい一ついくらになるんだろうか。高級オーディオの世界は、その100個だけ作るということをしているから、いまや天井知らずの価格状況になっているのだろう。そして、そういうものにはその価格を納得させるための、必要のない付加価値、見た目、能書き・・・がついてくる。そういうものを買うことが馬鹿らしく思えてくるのだ、このスマホで音楽を聴いていると・・・。


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August 04, 2016

ヴェルタ引退

サマーGPがぼちぼち行われているけれども、全く興味が・・・・。近年、冬と夏の成績の相関がほとんどなくなってしまった。夏はパワーがすべてのような感じになるのは何故だろう。気温とそれに伴う空気密度の違いが、それほど影響するとは思えないが・・・。

と思っていたら、ノルウェーのヴェルタが引退するというニュースが飛び込んできた。
なんで、もったいない!と思ったのは私だけではないと思う。
とはいえ、念願の金メダルを手にして、スランプに入って、27歳を迎えるというのがどういうことかを想像すると、モチベーションを保つのが難しいのは理解できる気がする・・・。
でも、彼のポテンシャルを考えたら、ワールドカップ未勝利に終わってしまうのは本当にもったいないなぁ・・・。

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July 09, 2016

JJ EL34

音楽を聴くという行為はけっこう高度な作業だと思う。
聞き流すのではなく、真剣に聴いて内側で感じること、のことを言っている。正直に白状するが、私は音楽を聴くことが苦手だ。特に自分の関心というか意識が別のところにとどまっているときに音を聞いても、その表面をなぞるだけで「音楽を聴いた」ことになっていないのである。

それは生の音楽でも同じ。こっちの受け入れ態勢ができてないと、チケット代が無駄になってしまう。

最近、ずっとそういう状態だった。この、自分の、関心を複数のものに振り分けることのできない性質に辟易とする。最近よく発達障害という言葉を聞くが、これはその一種なのかもしれないな、とふと思う。まずいのは関心の対象がどうにも思い通りにならない仕事のことだったりするときである。それがずーっと居座って、他のことに手がつかず、どんどん消耗してしまう。そういうときこそ、いい音楽を聴いてどこか別のところに飛んでいき、活力を得たいと思うのだが・・・。そうなっちゃうと逆に全く音楽を受け付けなくなってしまう。

音楽って癒されるものじゃないのかなぁ・・・・。うちの装置の出す音が厳格すぎる?うーむ、もっと嘘でもいいからリラックスできるような音、聞き流せる音が出るシステムを目指した方がいいのだろうか、なんて思ったりする。

それでも、家で音は適当に鳴らしてはいた。が、肝心のリスナーは心ここにあらず。装置がかわいそうだ。そうこうしているうちに、オクターブの一番左の6550 winged -C-が不安定になってきた。音も冴えない。アンプがへそを曲げてしまったようだ。

球を交換するしかないが、スベトラーナブランドのwinged -C-ラベルはもうほとんど入手不能になってしまった。特性のそろった4本組なんて市場に存在しないだろう。さて、どうしよう?

ちゃんと聴けないんだから、遊んでみようと思い立った。ダメもとで一度EL34にしてみようと。そこで管球王国70号のEL34のレビュー記事を読み返してみたが、どうもよくわからない。というのも、こういう記事においては球のコンディションが揃っている見込みがない。ばらつきの大きい真空管をこういう横並び試聴しても、単に運勝負で、たとえよかったとしても「たまたま」な感じがする。選別品の音がいいのは当然のことだ。レビュー時の音が球のポテンシャルを示しているとは到底思えないのだった。

で・・・それは完全に無視して、その試聴に使った新さんの(その時の)新作アンプの標準管がJJエレクトロニクスのEL34であったことを重く見ることにした。比較的市場価格が安く一般的な球だが、悪い噂はネット上にもほとんどない。なにより、新さんが信頼できない球を使うはずがないと思った。

JJはEU圏のスロバキアの会社だから、ドイツではものすごくリーズナブルな価格で手に入る。特にニュルンベルク近郊にあるBTB Elektronik-Vertriebsでは激安と言っていい値段だ。両社は車を飛ばせば2時間ぐらいで行き来できる距離にあるから、おそらくダイレクトに取引しているのだろう。そこで、BTBから8本揃いを買って4本選別使用することにした。8本でも送料・税込みで100ユーロに満たなかった。

届いた8本を見て、安心した。まず非常にカッチリとした作りである。見た目も内部も、たたいた時の音もちゃんとそろっている。工業製品はこうでなくてはいけない。まず4本装着して、24時間通電。バイアスをlowモードで合わせる。特性がよく揃っていることを確認。そこでいったん切り、完全に冷ましてからバイアス調整ポジションで点灯。温まっていくときのバイアス電流の上がり方をみる。完全に同期する2本があったので、その2本を残して、残り2本を換装。通電>同期・・・これを繰り返してもっとも同期する4本を選別した。安定状態でのプレート電流だけではなく、温度が変化していくときの特性変化まで揃っているようにしたかったからだ。精神安定のためだけ・・・・。

肝心の音だが、第一印象としては、とにかく、ものすごく静か。そして低音が意外とよく出るし、安定している。音場はコンパクトだが上と奥に伸び、定位がすばらしい。これは特性の揃いが大きいだろう。一方で中高音が硬い。ピアノはとてもいいが、人の声がカサつく感じだ。エージングで変化すると思っていたが、2,3日経ってもあまり変化がなかった。うーむ、これはどうしたことか・・・。

そこで思い切って、バイアスを調整してバイアス電流をビーム管用のhighポジションに上げてみた。真空管はそう簡単には壊れないものだし、一つ気になることがあったからだ。それは33mAと手書きで箱に書かれていることだった。もしこれがバイアス電流の値だとしたら、その値はビーム管と同等のものだ。

世界が変わった。熱い、インティメートな音に劇的に変化した。少し行き過ぎ・・・。でも方向性は間違っていないことを確信した。バイアスを調整して徐々に電流値を落とし・・・黄のLEDがギリギリ消えるか消えないかのレベル、つまりLowポジションでもっとも高い電流値に落ち着いた。静的でクリアー、でも内にこもった熱が音に宿る。クラシックよりも、ジャズ・ポピュラーが聞きたくなる音であり、現にそういうディスクに手が伸びるようになった。でも、もちろんクラシックもいい。この音はHifi Atelierで聞いた最高の音を凌駕している。

いろいろディスクを変えながら聞いて、守備範囲が広がっていることに驚いた。Jポップも古いロックも(まともなディスクならば)ちゃんと聴ける。そうこうしているうちに、いつの間にか、音ではなく音楽に心を奪われていることに気づいた。仕事がひと段落着いたということも大きいかもしれないが、ここ1年ぐらいなかったことだ。

JJのEL34はオリジナルEL34よりも出力に余裕が大きいのかもしれないな。よしんば、高いバイアス電流のせいで真空管の消耗が激しいとしても、JJのEL34ならばランニングコスト的に問題にはならないし。このまま行こうと思う。

それにしても、バイアス調整で感覚的に違う音になるのは不思議だ。理論上、適正値の範囲内ならば歪みが大きく変わるようなことはないはず。特にオクターブアンプのような、余裕のある回路ならなおさらだ。今回、うまくいったことも「たまたま」なのかもしれない。

これでようやく、前に進む準備が整った感じがする。

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May 26, 2016

エイシンヒカリのイスパーン賞制覇に思うこと

イスパーン賞でエイシンヒカリが圧勝した。
相手もちゃんとしたメンバーだったし、フランス競馬のレベルが低いわけでもない。

この結果は、日本の馬が中距離的スピード能力の一点においては世界のトップにあることを証明した、ということだと思う。そして国外での成績は馬場適性と環境対応力、そして人間の方の問題に尽きるということも。

ものすごく感覚的だけど、JRAで重賞を勝つ、もしくはGIで掲示板に乗れるような馬は、ヨーロッパではスピード能力において足りないということはないと思う。そのレベルの馬なら「スーパーホースのいない」GIなら勝てる可能性があると思っている。

だから・・・もう日本でGIを勝たないと行けない、みたいなことはやめて、適性がありそうな馬はどんどん来たらいいと思うんだが。特に今年の日本のクラシックで負けた馬でも、菊はやめてニエル賞やバーデン大賞から凱旋門賞という路線は現実的だ。前哨戦は普通に勝っちゃうように思う・・・。

ただ本当のトップレベルと言えるプリンスオブウェールズS、キングジョージ、愛チャンピオンS、凱旋門賞、この4レースは甘くないとは思う。エイシンヒカリがプリンスオブウェールズSでいい勝負ができるかどうかはわからない。アスコットは馬場もだいぶ違うだろうし。過度な期待はせず、素直にその挑戦を応援したい。

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April 12, 2016

船木の「ストーリー」

先日の毎日新聞に載った、船木の現在の取り組みを紹介した「ストーリー 船木和喜、飛び続ける理由」はいい記事だった。船木のジャンプへの思いの強さがストレートに伝わってきた。

彼の、地に根差したボトムアップの取り組みは素晴らしいと思う。スポーツは裾野の広さが頂上の高さを決める・・・一部のトップ選手にのみ注力する最近の風潮に対する、強い反骨精神が、そこにあると思う。いま、すぐに、結果を求めるのではなく、大きな流れの中での長いスパンを視野に入れた活動だ。いつの日か、彼の正しさが結果としてもあらわれる時が来ると信じている。


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March 22, 2016

2015/16シーズン回顧 トレンドの究極プレウツの覇権、一方で多様化の流れが見られる

ここ数年はかなり長い回顧をイースター休みに書いていたが、今季は印象が熱いうちに簡潔に済ませてしまうことにしよう。

プレウツとノルウェーの旋風

今季は結果を見れば「プレウツが強かった」の一言に尽きるわけだが、シーズン開幕時点ではフロイントの優位は揺るぎないと思っていて、プレウツがここまで突き抜けるとは予想だにしていなかった。そのフロイントは今季、ジャンプ週間克服のために早めに調子を上げ、オーベルストドルフで歴史的な勝利をしたものの、その後インスブルックでヘルニアを再発させて尻すぼみになった。とはいえ、彼のシーズンを通してのパフォーマンスが昨シーズンより悪かったとは思えないし、もし仮に怪我なく完璧なシーズンを送ったとしても、今季のプレウツには太刀打ちできなかったであろう。とにかく、プレウツのパフォーマンスが驚異的なレベルに達していたと結論するしかない。

また、ノルウェー旋風もここまで続くとは思っていなかった。クリンゲンタールの開幕戦後にタンデ・ガングネス・フォアファングの名前を挙げて彼らが引っ掻き回す展開を見通してはいたが、「序盤は」と但し書きをつけたように、それはジャンプ週間までのことで、そのあたりからは実力者たちに対抗できなくなっていくと思っていた。しかし・・・結局その旋風は最後の最後まで続くことになった。つまりは、彼らの実力を見くびっていたということだ。プラニツァでの3人のフライトはそれぞれに素晴らしかった。一朝一夕で成し遂げられたものじゃない。技術的にも紆余曲折を経て、経験を積んでここまで上がってきたことを納得させられるものだった。彼らは今後もプレウツ・フロイントに対抗する存在でありつづけるであろう。

技術トレンドの潮目

スキージャンプ競技は成熟期に入り、ルールの変更もほとんどなく、競技はものすごいレベルになっている。素人目では上位に入っているジャンパーたちの技術的問題を指摘することがむつかしくなっている。正直に言えば、私にはみんな完璧に飛んでいるように見える。

プレウツは一つの理想形・・・トレンドの最先端にいる。ストッホ、葛西、フロイントの先、低く鋭く速く、前に進むジャンプを突き詰めたジャンプだ。彼の超速サッツは、軽いからだ、短いスキー、早くスキーが上がるビンディングを使い、サッツ後のスキーの動きを自動化することで実現される。それによりマキシマムをできる限り遠くにもっていき、浮力で浮くのではなく、落ちる前に進んでしまうというジャンプである。

しかし、このジャンプをプレウツのように成功させるには、どうもかなりの身体能力と軽い体・・・「素質」が必要なようだ。

このトレンドに乗ろうと、多くのジャンパーが飛行曲線を変えようとして、そして、「パタン」と落ちた。今季、象徴的だったのは、非常に高いポテンシャルを持つ二人のジャンパー、ドイツのフライタークとポーランドのジラが低い飛行曲線に変えようとして四苦八苦している姿である。今のスーツとスキーでは、よほどのスピードと空中のセンスが無い限り、最後の伸びを欠き落ちてしまう。空気・風を捉える能力は先天的なものらしく、片手で数えられるほどの限られたジャンパーのみが、今のレギュレーションでも落下角度を浅く保てていた。プラニッツアの試合の放送の途中、ユーロスポーツのティーレが解説のジークムントに「何がフリーガーとジャンパーの違いを決めるのか」を訊ねたがジークムントは言い淀んだ挙句に「Fluggefuehl(フライング感覚)があるかどうか」としか答えられなかったのである。同じ主旨のことをクラニェッツもインタビューで答えている。つまりはそれは鍛えてどうこういうものじゃないらしい。

一方で、大スランプに陥ったところから、それが自分に備わっていないことに気づいて考えを変え、戻ってきたジャンパーたちがいる。コウデルカ、ヴァンク、ハイベックあたりのジャンパーだ。彼らはスピード化を可能にするマテリアルを使いながらも、それを上へのゲインを最大限に得てかつスピードもできる限り殺さないという方向性で使っているように見える。意識的に踏み外すぐらいのタイミングから、少し後ろに引くようなサッツをして、斜め上に出ながらも空気抵抗を受けない・・・・みたいな感じだ(自分でも何を言っているのかようわからんけど、言わんとするところは伝わっているだろうか)。こうすることで自身の長所であるパワーを最大限に生かし、最後落ちてもその落ちるポイントはヒルサイズ手前、というジャンプにするということである。こういうジャンプをしていれば、小さなジャンプ台や気象条件の悪い時に勝てる可能性が出てくる。

ノルウェー大躍進の3人衆、ガングネス、フォアファング、タンデはこの二つの方向性のちょうど中間あたりを狙っているように見える。飛び出し速度を重視する深いクラウチングから、サッツは基本的には高めに行き、それでいて最後もパタンにはならない・・・・。ノルウェーの基本的なジャンプスタイルに、オーストリア的要素を組み合わせた感じである。

言いたいことは、プレウツは最先端にいるが、その方向にみんなが向かっていた時は過ぎて、それぞれのジャンパーが各自、自分に合うジャンプの「型」を模索し、マテリアルを含めてすべてを自己最適化しようという流れが見えてきているということだ。

この感じは、長野後に浮力不足になった時に全員がハンナヴァルトの方向に動き、その後マリシュやアホネンが別の方向性を見出した、2001-2002年頃に似ていると思う。ただ、あの頃はマテリアル・ルールが目まぐるしく変わって、それをキャッチアップする能力が求められていた。今はそれらは安定しているため、上位ジャンパー全員が自身の「最適化」が完了した状況になるのは、時間の問題のように思える。そこに至ったスキージャンプの世界は・・・完全にアスレチック競技となるということである。陸上や水泳のような、シビアで紛れのない競技になってくるということだ。つまるところ、身体能力勝負である。

ただジャンプの場合、トップレベルにおいては、必要な能力のほとんどが鍛えてどうこうなるものではないのが、競技者側から見れば厳しい。特に、一度頂点を極めたジャンパーたち・・・アマン、ストッホ、そしてシュレリー・・・あたりが、最高の調子で最適なジャンプをしてももう勝てないと悟った時、モチベーションを保てるのだろうか。

今季も数多くのジャンパーが競技を離れるような気がしている。ベテランが技術的なキャッチアップの巧さで勝負できる時代は終わりつつある。適切な指導者がいるチームでは、若く身体能力の高いジャンパーが活躍するようになってくるだろう。そして・・・だからこそ葛西は驚異なのである。彼は自身のジャンプの最適化が完了して、彼のポテンシャルを継続的に結果に繋げられるようになった。そして、それで戦えているということは、彼の身体能力が43歳の今季も世界トップレベルだということに他ならないのである。

大躍進したノルウェーのジャンパーたちはそれぞれが違う飛び方をしている。シュテッケルのもとで異なるフィロソフィーが混じり合い、それが多様性を生みだして個々の最適化を進めることできたことが好成績に繋がっていったように思う。

フィンランドは来期ラハティで世界選手権をホストするが、そのプレ大会でのフィンランドチームのパフォーマンスは目を覆いたくなるような壊滅的なものだった。遅きに失した感はあるが、純血方針を転換してオーストリアのBチームコーチであったアンドレアス・ミッターをヘッドコーチに招へいするそうである。何年かかるかわからないが、復活してほしいと切に願う。また、若手が伸び悩むポーランドもクルチェク・ヘッドコーチが退任し、チームは仕切り直しとなる。選手の素質は充分なだけに、少し方向を変えるだけで成績は出るように思う。

そして、日本。「いつもの」3人は素晴らしいジャンプをしている。あとは若手の突き上げだけだ。なんとか若手のコンチネンタルカップ派遣を実現してほしい。やっぱり外に出て多様なジャンプ台を経験していないとワールドカップに上がった時にチャンスを生かせない。コンチのレベルは充分に高い。ノルウェーの例が示すように、そこで自力で権利を取って上に上がるという流れができたら、チーム力が底上げされるだろう。今季はそういう流れがドイツ・オーストリアの若手に起こっていたので、2,3年後には独墺の復権があると思われる。

来期に向けて

やはり大きな懸念は、気候変動の影響だろう。高温、強風・・・仕方ない部分もあるが、これとウィンドファクターの問題の相乗効果でジャンプの競技性が損なわれてきている。非常にシビアなマテリアルコントロールとそれに対抗するテクニックの進歩により、ジャンプの飛行曲線は数年前とは大きく変わってしまった。そのせいか、多くのジャンプ台でウィンドファクターが効かない状況がみられるようになった。ウィンドファクターが効くことを前提としたゲートの上げ下げが不条理となって、試合が壊れることもあった。

本来なら、この変化に対応するようにジャンプ台のプロフィールを変えるのが筋だが、それには十年単位の時間が必要だろう。とりあえずはウィンドファクターの見直しが必要だと思う。また、ほんの少しでいいので浮力を戻すようなルール変更があっていいのではないかと思う。スーツの通気率やスキーの基準の長さを数パーセント変えるだけで、だいぶん違うように思う。

さて・・・・来期もプレウツ1強の時代が続くのだろうか。彼のモチベーションが保たれるのなら、その可能性はかなり高いように思う。プレウツの方向性で彼に勝つのはちょっと無理なような感じだ。あるとすれば、2001年のマリシュのように、別の方向性を持った強烈な存在が対抗として現れる可能性だ。現在上位にいるジャンパーの中でその可能性があるのは、ハイベック、ガングネス、そして、今季は揺れ動いたフライタークあたりだろう。若手ではドメン・プレウツと小林陵侑を破ってジュニア世界選手権を取ったダビッド・ジーゲルはとんでもないパワーを秘めていて面白い存在だと思う。ドメンがジュニアで負けたことが信じられなかったが、テテゼーでダビットのジャンプを見て納得した。

もう一人、シュレリーのことを忘れないようにと思っていたら、彼がプライベートのスキーで大けがをしたという残念なニュースが飛び込んできた。右ひざ前十字靱帯断裂の重症で、手術と8か月の加療を必要とするそうである。もし競技に戻るとしても、来期はかなり難しいだろう。うーむ、しかし考えようによっては、完全リセットのいい機会になるのかもしれない。まだ26歳。フェードアウトするには早すぎる。

結局は長々と書いてしまった・・・最後までお付き合いくださってありがとうございました。
スキージャンプ、面白いと心から思う。もう少し、ウェブ上に有益かつ情緒的に過ぎない報道や解説があったら、みんな、もっと面白く感じられるはず。こんな単なるファンの戯言じゃなく、もっとジャンプを本当に知っている人が技術的な情報を発信してくれるとありがたいのだけどなぁ。

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March 20, 2016

"Peter der Große" ペーター・プレウツ、我が世を謳歌 プラニツァ

真っ青な空、きりっと冷えた空気、穏やかな向かい風、4万の自国の大観衆。
これ以上ない舞台で、勝利を決める完璧なフライトを飛ぶ。
それがどういう体験なのかは、本当に限られた人間しか知らないこと。

"Peter der Große"、ユーロスポーツのダーク・ティーレはいつしか彼をそう呼ぶようになった。日本でいうところのピョートル大帝だ。一代で辺境国ロシアをヨーロッパの列強に押し上げた巨人に彼を重ねた。小さなスロベニアという国のアスリートが、北欧・中欧の雄たちをねじ伏せる・・・それを痛快に思わないスロベニア人はいないだろう。

とにかく、強い。その強さは、マテリアルがどうとかルールがどうとかそういう細かいことを考えることなく、ただ単に強いと認められるものだ。この感覚はアホネン以来久しくなかった。しかも、アホネンにあった精神的な脆さは、ペーターにはない・・・。

彼は今季、少しだけクラウチングを変えた以外は技術的には何も変えていないという。後は、秋の陸トレを減らし、ジャンプトレーニングを増やしたことがうまくいったと言っていた。確かに今季は昨季にみられたような飛び出し速度の問題がなくなり、サッツの完成度が上がった。その小さなステップアップが、最後のピースがパチりとハマるように、とんでもなく前に進む孤高のジャンプに結実した。深いクラウチングからの超速サッツ、それでいて高さを失わない体勢移行、そして最後落ちずに伸びる・・・・言うは易いが、実現は難しい。クラウチングを深くすればサッツのスピードは落ちる。それを無理に体勢移行すればスキーに体を早く寄せすぎることになり、高さが失われる。スピードを上げるために短いスキーを履けば、最後の浮力が失われる。これだけ速さを志向したジャンプでありながら、充分な高さを確保して多様なジャンプ台を克服することは凡人には不可能だと思う。天から与えられた才能・・・としか言いようがない。

ノルウェーの国別対抗、7000点台もとてつもないものだと思う。何度も言うけど、それがバーダル・ヤコブセンの2枚看板が抜け、しかも昨年の世界選手権覇者ヴェルタがスランプに陥ったシーズンに達成されたことが恐ろしい。次の数シーズン、これに勝てるチームがあるとは思えない。

この4日間の試合を見て思ったことは、改修後のプラニツァは素晴らしいということに尽きる。確かに気候は良かったが、風の状況はそれなりに変化していた。そのなかで、個人戦の表彰台に上った3人、そして上位15人の顔ぶれにはほとんど変化がなかった。つまり公平でコンディション・コンペンセーションがうまく働いていた。しかも、一番低く飛ぶクラフトから、高いアマンまで、誰でも最高のジャンプをすれば240mまで行けるという懐の深さ。去年思った、「スーパーラージヒル」という称号を、もう一度与えたいと思う。

今日の葛西は本当に惜しかったなぁ。あのフライト2本で表彰台に上がれないか・・・・でも、今のフォアファング、そして地の利200%のクラニェッツにここまで迫れたのは自信になるだろう。そして・・・43歳にして、最終戦の安堵感に包まれるのではなく、それをすごーく悔しがっている若さが、凄い。

素晴らしい戦いをありがとうございました。
来期もこんな風に、最終戦を喜びとともに迎えられることを願います。
ジャンパーの皆さま、オフを楽しんでください。

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March 17, 2016

500

ワールドカップ500試合出場・・・・葛西の打ち立てた記録はとてつもないものだ。

ワールドカップ本選に出るためには、自国で6番、世界で50番以内でいなければならない。一度でも本選に進出することが夢であるジャンパーがほとんどだ。

そのレベルをキープすること27年。今、飛んでいるジャンパーのほとんどが、葛西が初めてワールドカップに出たときに生まれていなかった。

しかも、この500が通過点に過ぎないとは・・・
600も通過点になるような気がするんだ、本当に。

今日の試合のパフォーマンスは、風のめぐり合わせが合えば勝てるレベルだった。明日、勝ってもぜんぜん驚かない。

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March 13, 2016

フォアファング、ついに表彰台の一番上に立つ テテゼー・ノイシュタット

ここらへんは今日、ものすごくいい天気で、しかも風もなく気温もあまり上がらなくていい感じなんだけどなぁ。200キロ南のテテゼー・ノイシュタットは風が不安定で早々に中止となってしまった。予想外。

今日は「カサイ・フェスト」になるはずだったのだけど・・・。葛西のワールドカップ通算500試合出場という金字塔が建てられるまで、あと1試合。今日の試合が成立することを見越して何らかのセレモニーや特集が組まれていたはずだが、次のプラニツァに持ち越しになった。ヴィスワで1試合中止になったことで、もしかしたらそんなことになるかもと危惧していたが。にしても、この台は風に弱すぎるよ。今週は強い高気圧がヨーロッパの真上に居座っていて、グローバルな気候はそんなにひどくないはずなのに。おそらく、日差しがあって気温が上がりだすと上昇気流をまともに受けてしまう場所に台があるのだろう。ここで春先にやろうというのが間違いだったのかも。ということで夏にセラミック/氷の人工シュプールを設置し、来期はここで開幕する予定らしい。うーむ、もともと気温が高い場所だからそれも心配だなぁ。

土曜の試合も、風が不安定すぎて半分ぐらい壊れていた。あるジャンパーがいい向かい風をもらって140m飛んだ次のジャンパーはエアポケットにハマり110m、それでウインドファクターの差は10点ぐらいしかない、みたいなことが何度もあった。ウインドファクターが全然効かない台と、あんまりそう感じない台の違いはどこにあるのだろう。少し台の研究をしてみようかな。

フォアファングの勝利は、プレウツ・フロイントの両方が2回ともひどい風に当たったことによってアシストはされていると思う。しかし、彼のジャンプは2回とも素晴らしいものだった。そうでなければ、今の大プレウツ(最近、ユーロスポーツのコメント席ではドメンが小プレウツ、ペーターが大プレウツと呼称が定着しつつある。ではツェーネが上がってきたら中プレウツ?)には運があっても勝てない。これまでも、ジャンプのクオリティとしては何度も勝つチャンスがあったが、ちょっとしためぐりあわせが合わなかっただけ。積み重ねてきたものがもたらした勝利と言えるだろう。これで今季のノルウェーチームの勝者は4人目となった。プレウツがあれだけ勝っている中で、これもまたすごいことではないだろうか。

さて、来週のフライング祭りは大丈夫だといいが・・・。

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