April 21, 2012

ピチピチスーツがやってくる

Berkutschiに載っているFISのEquipment ControllerであるSepp Gratzerの話では、新しいスーツレギュレーションについて次のFIS会議(韓国、5月)で話し合われるそうである。そのレギュレーションは・・・スーツと体のサイズ差(つまり余裕)が6センチから0センチになるとのこと。簡単に言えば伸縮性のある素材で作られた体に完全にフィットするスーツになるということだ。生地はFISの認定を受けたメーカーから供給される・・・つまり、すべてのチームが基本的に同じスーツで飛ぶということになる。

これは、グレーゾーンをなくし競技の公平性を高めるという観点から見れば、非常に有意義で根本的な改革である。特に弱小チームのスーツによる不利が(理論上)なくなる。また、スーツによる失格を防ぐために現在各チームが払っている多大な労力を低減する。基本的には誰も異論を挟めないと思う。

ただ・・・・・私は複雑だ。この改革は間違いなく、スキージャンプ競技を単純化する。それも、ますますパワー化の方向に。体の発生する浮力が大幅に減ることは明白であり、その帰結する所は・・・・前後バランスの変化と、体を使って空気を捕まえることができにくくなるということ。

サッツの「スピード化」の流れは止まるだろう。スキーが短いことはさらに不利になるだろう。なぜなら、スキーによる浮力に頼らざるを得なくなるから。

もう、ごちゃごちゃと理屈をこねるのはよして、私がこのレギュレーション変更を喜べない真の理由を書いてしまう。この変更によってもっとも不利をこうむると思われるジャンパーは、伊東大貴である、と直感してしまうからだ。そしてその次がクラニェッツである。パワー化の流れの中、感性で戦う二人が、その武器を失う可能性を受け入れがたいのだ。これ以上書くと余計な爆弾発言につながっていくかもしれないので、ここで止めておこう・・・・・。

追伸
今季、フロイントが弾けなかった理由はヘルニアだったのか・・・・先日、手術を受けたそうです。

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April 07, 2012

バッハのマタイ

評価は分かれるのだろうけど、バッハの「マタイ受難曲Matthäus Passion」はヨーロッパの音楽文化における一つのマイルストーンである、という捉え方はかなり普遍性のある「事実」といっても良いレベルのものだろう。ただ、バッハの音楽は好きだが、この曲は聖書のテキストに立脚する以上、キリスト教世界観をもたない私がそれを正しく理解できるとは思えず、ある意味、それと向き合うことを今まで避けていた。

しかし、昨日の聖金曜日Karfreitag、Trinitatuskirche Kölnにおけるケルンバッハ協会(BACH-VEREIN KÖLN)主催のコンサートにおいて初めてバッハのマタイに生で接し、そういう懸念が杞憂だったことを知った。正しく理解する、なんていうこちらのしゃっちょこばった緊張はバッハのあの手この手によって懐柔され、打ち砕かれた。テキストは古語や過去形などがいっぱい出てきて紙の上では「ウッ」となってしまいがちだけど、言っていること自体は非常にシンプルな、根源的な人間の罪深さであり、バッハの音楽と共に語られる時、一つ一つの単語がとか文法だとかそういうものを超え、全体としてちゃんと意味はわかってしまうものなのだった。もちろん、もっとドイツ語力があればもっと深く理解できるのかもしれない。しかし、この曲においては、そういう理解の深さは言葉の理解ではなく、文化的背景・・・・へんな喩えだが、日本人でなければ忠臣蔵で泣けないみたいな、そういうレベルでの文化的理解が必要とされるのだった。それがある(ここの)人々にとって、この曲は非常に親しみやすいものなのだろう。大衆にわかりやすく伝えるためにバッハが意を尽くしているから・・・・・。

Trinitatuskirche Kölnはケルンでもっとも音響の良い会場の一つだと個人的に思っている。大きすぎず、しかしエアボリュームは充分にあり、ピアノ以外のアコースティック楽器と人の声による演奏会にとっては最高の場所だと思う。今回のコンサートは現在のこの曲演奏のトレンドとも言える、かなり絞った構成で行われた。音のバランスを考慮して弦と合唱の高音パートを少し増強した以外は最小限と言える構成。それでも満席(といっても500人ぐらいかな?)の状態では弦の高音が痩せてしまう印象もあり、もしかしたらバルコンで聴くのがいちばん良かったかもしれない、と思いながら聴いていた。でも、人間の耳はよくできたもので、ある程度聴き進むうちに脳内補正が働いてちゃんとしたバランスになった。

今回の演奏そのものについて評価する術をもたないけど、エヴァンゲリストとコラールが素晴らしかったことだけは言える。一方、部分部分において少しバタバタしたところがあり、まだ各パートが渾然一体となった至芸には至っていなかったかな・・・とは感じた。これから細部は練り上げられていくのだろう。とはいえ、長くて辛いかもな・・・と思っていた3時間は有意義で楽しく、瞬く間に過ぎた。

宗教音楽だからとしゃっちょこばらず、素直に聞けばよいと思った。私にとっては、マーラーやシェーンベルクよりはシュッツやバッハの方がスッとこちらに来てくれる・・・・。

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March 31, 2012

シーズン回顧の補遺

回顧するにあたり一応いろいろなソースを読み返したりしてみたのだけど、ビンディングの位置変更が見送られた件については確認が取れなかった。公式なステートメントや信頼できるソースでこの件について発表されている情報を探しているのだけど。

いくつか、書きそびれたことがあるのでここにまとめておこう。

シュリーレンツァウアーは最後まで安定しなかった。彼はおそらくまだ体が固まっていないのだろうと思う。その結果として、今回のBMIのことでいろいろとバランスが定まらなかったのだろう。成長と共に彼のBMIは高まりつつあるはずであり、基本的には今季のこの変更は彼にとって有利に働くと思っているのだが。彼だけでなく今季は(特にシーズン前から序盤)天候不順のあおりで多くのジャンパーが調整不足に陥っていたと思われる。「感覚的」なジャンパーと「練習で固める」ジャンパーがいるとすれば、後者は特に今回のいろいろな変化に対応しづらかったはずだ。おそらく彼は後者なのだろう。来季は強いヤツが戻ってくるはずだ。そうでないと面白くない。

日本チームでは伊東だけでなく、竹内も躍進した。一方で栃本や湯本など、絶不調に陥ったジャンパーがいる。飛行曲線、BMI、器用さ・・・・こういう点からこの差を見れば、「クラニェッツ、バーダル」と「モルギー、アマン」の図式は「伊東、竹内」と「栃本、湯本」の図式にそのまま当てはめることができると思う。流れから言えば来季は伊藤謙司郎あたりが出てくるのではないかと予想している。葛西は腰痛の影響が大きかった。彼は身体能力の高さを武器にする万能選手だから、体さえ大丈夫ならどんな変化にも対応するだろう。だからこそ、ここまで続けられてきているのだ。生けるレジェンド、NORI KASAIは不滅であって欲しいと皆が思っている。

そういえば、ドイツチームについては何もコメントしていなかった。ドイツはフロイント、フライターク、ヴァンクの3人の才能が開花しつつあり、未来は明るい。彼らはもうすぐにでもモルギー、コフラー、コッホのレベル(タイプもこの3人に似ている)に到達しそうである。特にフロイントのポテンシャルは現役ジャンパーの中でシュリーレンツァウアーの次、2番目だと私は勝手に思っていて(つまりアマンや伊東よりも上だと・・)、今季、彼が総合優勝争いに加われなかったことを不満に思っているほどなのだ。来季はシュスターの手腕が問われる年になると思っている。

フィンランドは本当にどん底だった。マッチ・ハウタマキの引退は残念だけど仕方がないんじゃないかな。数年前からモチベーションが失われていた。彼は能力的にはアホネンに匹敵するものがあった。ノルディックトーナメントを4連勝したときの、あの絶対的なパフォーマンスは記憶に新しい。あと、ティールに「典型的フィンランドランディング」と揶揄され続けた、失敗したときの気の抜けたランディングもね(これは、ハリ・オリとセットで)。歴史に名を残す偉大なジャンパーの一人だと評価している。アホネンと共に、フィンランドの黄金時代を彩った選手として語り継がれるであろう。彼の引退と共に、フィンランド・チームは「グレート・リセット」を敢行しなくてはならない。

コンディション・コンペンセーション・ルールの運用はひとまずこなれてきたのだが、問題は山積みとなっている。特に古い台における低速条件ではあまりに風や飛び出し速度の影響が大きすぎて不条理感が大きい。また、そういう状況でゲートを上げざるを得なくなった時、ゲートファクターのマイナスが大きすぎて話にならないということが一度ならずあった。このあたりの改善には台のプロフィール規定の変更が必要なのだろうだが、昨今のヨーロッパの経済状況では台を改修する予算のある場所は多くなく(だから古いままなのだ)、そうなる見込みはない。ゲートを上げるときと下げるときにファクターに違いを与えるとか、横風対策としてウインドファクターに風のベクトルを組み込むとか、そういう運用面での最適化で改善していくよりほかないだろう。

あと、一つ懸念していることがある。BMIレギュレーションにより選手の画一化が進んでいるように感じるのだ。どんな補正表を使ったところで、あるルール上では物理的に最適なBMIは厳然とあるわけで、そうなるとみんなそのBMIにあわせていくようになる。同じBMIの選手なら、ある一つの飛行曲線を描いたときに最適になる。つまり、この方向で突き詰めていけばみんな同じ飛び方になっていくことになる。現に、極端に低い飛行曲線は排除された。このままいくと、選手のバラエティがなくなってしまうのではないかと・・・・。ま、人の体はBMIだけで決められるものではないから、杞憂だとは思うけど。

今季も個人的な印象をもとに、スキージャンプについて主観的なことをつらつらと書いてきたが、結局は自分がどういう風に思ったかを記録することが第一の目的なのである。スキージャンプはシーズンオフが長すぎて、そうしないと記憶や印象はすぐに忘却のかなたに消えて、昨シーズンのことすら思い出せなくなってしまうから・・・。単なる個人的な日記では続かないが、一応公開されているブログだからある程度はきちんとした形にするというプレッシャーがあり、続けられているのだろう。とはいえ、ここに書いたことは一ファンの戯言を超えるものではなく、多々間違いや勘違いもあるはずだ。ま、だからこそ公開しても波風が立たないのだが。来冬もこのぐらいスキージャンプが楽しめる安定した生活が送れたらいいなと願っている。


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March 30, 2012

'11-12年シーズン回顧 些細な、でもジャンパーにとっては大きな変更がもたらしたもの (3/3)

その2からの続き)

しかし、待てよ、パワー系でなく、飛行曲線が低いのに今年活躍したジャンパーが数人いる。伊東、クラニェッツ、コッホの3人である。コッホは身長が高いからある程度BMIルールの変更の恩恵は受けたかもしれないが、伊東とクラニェッツは違う。彼らは骨量の少なさを武器に低BMIで飛んでいたはずだった。おそらくこの2人が自分の飛び方を地道に変えて来て、それが今年ようやく実を結び、本当の意味でのパフォーマンスアップを成し遂げたジャンパーなんだと思う。その上で元からあった特殊な空中の才能、短いスキーでも浮力の得られる技術を駆使してこの試練を乗り越えたのだと思っている。

伊東は数年前までは、もっと前がかりで低いジャンプをしていた。ハリ・オリとまでは行かないが、ハッポネンぐらいは低かったと思う。おそらく彼にとって、雪印への移籍は大きな契機となったのだろう。斎藤の技術が注入され、徐々にだがサッツでの上へのゲインを増していき、昨シーズンのサマーGPでは、アスリート系と言っても差し支えないほどの体の切れを武器に猛烈なスピードジャンプを披露していた。ピーク・パフォーマンスと言う意味では、既に昨シーズンに躍進は約束されていたのである。

しかし、ちょっとした怪我や体調不良などもあり昨シーズンの彼は不完全燃焼に終わった。私は個人的には残念で仕方がなく、回顧ではチームのサポートに対し多少厳しいコメントをしてしまった。しかし、今季の彼は意識的にスロースタートにすることによって、ピークをシーズンの半ばに持っていくことに成功した。サポート体制も刷新され、精神的なケアが重視された。その結果、そのピークはシーズンの最後まで維持された。もし、もっと今季の天候が順調だったならば、シュリーレンツァウアーとジャンプ週間および総合で激しいバトルとなっていたはずだ。今季の彼の4勝、総合4位という結果は彼のパフォーマンスを考えれば決して満足なものではない。不運の重なりと勝つコツを掴むまでの足踏みによって損をしたうえでの結果なのだと思っている。苦言を呈しているのではなく、彼の力なら今季は総合優勝のチャンスがあった、この結果では彼の今季のパフォーマンスに見合わず、彼とサポートした人々の努力が充分に報われていないと感じているのである。

新しいBMIルールとジャンパーの戦いは来季に向けてもうスタートが切られているはずだ。モルギーやアマンはムキムキの体と、それに合ったサッツを作ってくるだろう。ストッコら低い飛行曲線を描いていたジャンパーは方向性を修正してくるだろう。ノルウェーやスロベニア、ポーランドの若手は新しい方法論の元、一気に伸びてくるだろう。伊東が彼らに対しアドバンテージを保ち、王者として君臨するためにはもう一段上のステージに行く必要がある。そうできなければ、ソチ・オリンピックに向けて動き始めた列強の刺客たちにやられてしまうだろうと思っている。BMIルールの変更がもたらした、スキージャンプのパワー・スピード化の波はもう止まらない。この波は日本人ジャンパーにとって決して有利なものではないのだから・・・・。

昨シーズンの回顧では「競技のF1化」をテーマにチーム間格差の拡大を問題提起した。それに対応するかのように厳格化されたマテリアルコントロールはチーム間のマテリアル開発力による差を少し少なくすることに成功したようだ。しかし・・・これは今季が狭間のシーズンだったから、かもしれない。今もオリンピックに向けていろんな隠し玉が日々開発されているのであろう。それによって来季はまたガラリと世界が変わってしまうのかもしれない。そういう怖さも、スキージャンプの魅力なのだと思う。

ジャンパーの皆様、素晴らしい戦いをありがとうございました。来季に向けてまずはゆっくり休んでください。そして、来季もよろしくお願いします。

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March 26, 2012

'11-12年シーズン回顧 些細な、でもジャンパーにとっては大きな変更がもたらしたもの (2/3)

その1からの続き)

その見方が正しいかどうかを判断しバーダル躍進の理由を探るには、「パフォーマンスが落ちた他の選手」に目を向けてみる必要がある。昨シーズン、圧倒的な強さを誇ったモルゲンシュターンとピークパフォーマンスでトップだったアマン・・・この2人は今季、イマイチという言葉がぴったりの成績に終わった。この2人はビンディングの革新の恩恵を最大限に生かし、短いスキーで距離を伸ばす技術を駆使していた。特にモルゲンシュターンは自らの最適体重よりも明らかに軽い状態で飛んでいた。短いスキーを履き、サッツ後のスキーの上がりを足元で制御し、前へのモーメントを殺さず、上へのゲインも犠牲にせず、早く体勢移行を完了する・・・・「スピードジャンプ」と言っていい、そういうジャンプを完成させていた。こういうジャンプは、ビンディングの革新以前はアホネンやシュリーレンツァウアーのような神の寵愛を受けた、特殊な身体能力(おそらく足首の可動域やつき方に起因する)を持つジャンパーにしかできなかったものだと思う。

その彼らのジャンプが、今季は後半の伸びを欠いていた。浮力不足・・・スキーがさらに短くなったことの影響を大きく受けていた。今季からビンディングとスーツが事細かに規制されたことも影響していたと思われるが、とにかく、ジャンプはパタンと落ちてしまっていた。それに気づいていたアマンはスキーの長さを維持するために体重をかなり無理に増やしてシーズンに望んだようだが(それが、私の彼に対する「練習不足によるキレの無さ」というコメントに繋がっていたと後から気づいた)、体と技術のバランスは崩れていた。モルゲンシュターンはフライング選手権を見据えてのことだと思うが、体重を変えなかった。彼らが本来の強さの一端を見せ始めたのは、終盤、フライング選手権が終わってからのことだった。

どん底から脱することができなかったフィンランドチーム、大きな躍進を期待されながらイマイチに終わってしまった、ストッコ率いるポーランド・チーム、そしてまったく駄目だったフランス。彼らの共通点は基本的にフィンランド・北欧系テクニックをベースにしているということだった。低い飛行曲線と短いスキーの相性は最悪だった。その雄であったノルウェーがその影響を最小限にできたのは、間違いなくオーストリア出身のシュテッケルのおかげだろう。彼をこのタイミングで迎え入れたノルウェーの上層部の慧眼は、ノルディックスキー発祥の地の面目躍如といったところだろう。

一方、アスリート系パワージャンパーであるコフラーは昨シーズンと今シーズンの獲得ポイントがほとんど変わらなかった。また、飛行曲線が基本的に高いスロベニア(クラニェッツを除く)やチェコ・チームはプレウツやラバなどを筆頭に躍進した。彼らは比較的ルールの変化の影響を受けなかったのだろう。(そう考えると今季、駄目だったロイツルはかなりやばいと思う。彼はこの変化の恩恵を受けるはずのジャンパーだからだ・・・・閑話休題)

バーダルに話を戻すと、バーダルは身長が高いためにもともと浮力に依存したジャンプをせず、筋量を増やしBMIを上げることによって活路を見出そうとしていた。そしてスキーの上手さによる飛び出し速度の速さという彼の長所は、体重の増加と浮力の減少によって逆に相対的にその強みを増した。その上でシュテッケルのオーストリア技術による、サッツにおける確かな改善があった。それらが総合的に彼を勝ち負けのできるレベルに引き上げたのだ。

フライング選手権の前にも書いたが、今回、バーダル躍進の理由を探っていく過程においても、ジャンパーにとってBMIルールは非情なルールであるとの認識を新たにした。一般人にとってはBMI0.5の差なんてほとんど感じない。昨晩食べ過ぎてちょっと重いな、程度だ。しかし、ジャンパーにとっては、その些細な違いが何百ポイントの差となることが、今季の結果から読み取れる。もし、私がジャンパーだったとして、そして、現役を続けられるかどうかの瀬戸際にいたとして、新たなBMIルールが自分とマッチしなかったらと思うとゾッとする。現に、3人の特徴的なジャンパー・・・エーベンセン、マッチ・ハウタマキ、そして東輝・・・・がこのルールに引導を渡されたのではないかと、かなり確信めいた思いを持っている。

その3に続く)

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March 25, 2012

なんと、ヤコブセン復帰即優勝

ノルウェーからとんでもないニュースが飛び込んできた。
ヤコブセンがノルウェー選手権で圧倒的に勝ったそうだ。バーダルが不出場だったとはいえ、ファンネメルやスクレットにいきなり勝てるとは・・・・凄いヤツだな。これでノルウェーは来季も磐石だな。ヒルデも本格復帰するだろうし、腰痛が癒えたロマーレンは雪辱に燃えているらしい。コンチの1,2位のステアネン、ガクナスも上に上がろうと必死だろう・・・・シュテッケルはいいときにコーチになったなぁ。

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March 24, 2012

'11-12年シーズン回顧 些細な、でもジャンパーにとっては大きな変更がもたらしたもの (1/3)

朝晩の空気はまだ冷たいが、日差しは日に日に強まり、日中は日なたでは汗ばむほどの陽気となった。今年は春の訪れが早い。一方でこの急な陽気の高まりに妙な違和感を覚える。何か大きな気候・環境変動の前ぶれでなければいいのだけど。

今季のスキージャンプ・シーズンは予想外のことが数多くあった。オリンピック・シーズンの次の次、狭間のシーズンはこういうふうになることが多い。その理由は、オリンピック・シーズンの次の年はその惰性のままで淡々と過ぎるが、それが終わったタイミングでFISがレギュレーションの更新を行うからだと思う。その変更により、今までと違う選手が台頭したり、良かった選手が駄目になったりするのだろう。

0.5/2%/1%---最大限の長さのスキーを履けるBMIの上限が0.5上がり21となったこと、それに伴って同じ体重ではスキーの長さが身長比で2%短くなり(一般的なジャンパーでは4cm)、スキーの最大限の長さも身長比1%下がり145%になったこと(2cm)(春に言われていたビンディング位置の変更はFISの公式ルールによれば変わっていない模様)。この些細とも思える変更がもたらしたものの大きさを思うとき、スキージャンプという競技の繊細さに気づかずにはおられない。

バーダルの総合優勝をシーズン前に予測できた人はいるのだろうか?バーダルが確立された技術と素晴らしいハートを持つ優れたジャンパーであることは、誰もが認める所だ。特にスキーの技術とフライトのバランスは素晴らしい。彼の真っ直ぐで、ランディングバーンの真ん中に下りるジャンプは理想の一つである。しかし・・・・彼の「物理的」な制約・・・高い身長と骨量、おそらく(体重に比して)弱い瞬発力・・・は以前のルールの下では彼が総合トップ10以上の成績に達することを妨げてきたのであった。

今年の彼は3勝「しか」しなかった。しかもそのうちの2勝はシュリーレンツァウアーの転倒によるものと、シュリーレンツァウアーのチャック崩壊事件で伊東が失速したことによるタナボタ的勝利であった。つまり・・・彼のピーク・パフォーマンスは総合2,3,4位のシュレリー、コフラー、伊東に及ばないものであったと言っていい。一方で彼は19戦でトップ10に入っていた。つまりシーズンを通して安定した成績を続けたことで、総合的に3人を凌駕した・・・まさに総合王者にふさわしい戦いぶりだったと言えるだろう。

しかし・・・その安定感、そしてハートの強さはもともと彼の特徴であった。去年までの彼だったら、その安定はトップ10にチョコチョコと顔を出す程度でのものであり、今季のように毎回表彰台を伺うようなことにはならなかったはずなのである。今季の安定しない気候条件が悪条件に強い彼に味方したことは確かにあるのだが、それだけで総合優勝できるはずはない。今季の彼のパフォーマンスは去年より1段上だったということだ。

ただ、29歳という彼の年齢から言っても、フィジカル面・技術面で急に伸びるということは考えにくい。シュテッケルによるオーストリア技術の注入は確かにプラスだったのだろう。でも、半年やそこらの指導で確立されたジャンパーがそう大きく変われるものだろうか?私は、彼は今回のBMIルールの変更により、他の選手のパフォーマンスが一段落ちることで、彼は相対的に一段上がることになったと見ている。彼の技術と身体的特徴から、彼はこの変更の影響をほとんど受けなかったのではないか・・・と。

その2に続く)

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March 18, 2012

2人のフリーガーが勝利を分け合う バーダル、チャンピオン獲得 プラニッツァ最終戦

今週は5月のような陽気が訪れた。南にあるプラニッツァの雪の状態を心配しているのは私ぐらいのもので、周りのドイツ人たちは早速アイスクリームを楽しんだりしている。

そして今年もやってきたプラニッツァのフライング祭り。今年は伊東がフライングのポイントリーダーとして、赤いビブを着けて飛ぶことがまず嬉しい。ただ、プラニッツァのフライングヒルは大きな落下型の台だから、フリーガータイプがビケルスンよりもさらに有利であることは間違いがない。なので、伊東がこのタイトルが守れるかどうかは相手次第のようなところがあり、まぁ、とにかく怪我なく終わって欲しいというのが本音だった。もちろん、バーダルが総合チャンピオンのイエロービブを守れるかどうかも興味の一つ。オスロからシュリーレンツァウアーが急激に良化していたので、2連勝する可能性もあると思っていた。今年の彼は新しいビンディングとの相性問題でずっと迷走していたが、もとのビンディングに戻したら一気に感覚が戻ったそうなのだ。そして、新しいコンビタイプのビンディング・・・棒と紐が両方ついている・・・を投入。落ちないで前に進むジャンプが戻ってきた。バーダルはフライングタイプではないだけに、2連勝すればまだ逆転の可能性は残っていた。

が、蓋を開けてみたらクラニェッツ対コッホのフリーガー対決に割って入るのはほぼ不可能という状況で、シュリーレンツァウアーや同じく復調したアマン、そして伊東はその後ろで戦うことを余儀なくさせられていた。特に日曜のコッホのフライトはまさに物理が違うというか・・・・なぜ追い風なのに落ちないのか不思議で仕方がない。伊東はタイトルを取れなかったけど、金曜にこういう猛者たちを向こうにまわして僅差4位に入ったのは凄いと思う。

とはいえ、クラニェッツ・コッホのフライトも去年までのフライトとは飛行曲線が違っていた。高いので220を超えてテレマークを入れるのは不可能。ロマーレンの239mのヒルレコードは不滅だろう・・・・・と思っていたら、どうやらビケルスンに対抗するためにここも近々フライングヒルを改修するらしい。台の大きさ自体はここの方がずっと大きいのだから、ランディングバーンをなだらかにするだけでHS240mぐらいは可能なのだろう。

というわけで、バーダルは勝負にならなかったけど楽々とチャンピオンを守った。ノルウェー人として3人目の総合チャンプ、おめでとう。オーストリアのタイトル寡占状態に風穴を開けたシュテッケル&バーダルのコンビを個人的マン・オブ・ザ・シーズンとしてたたえよう。土曜の団体戦を見てもわかるようにオーストリアの強さは健在だが、今年は他チームとその頂までの差が少しだけ縮まったのは確かだ。

長く、天気に悩まされ続けたシーズンがようやく終わった。ジャンパーおよび関係者のみなさん、ご苦労様でした。特にジュリーボックスで苦い顔で判断し続けたミラン・テペシュさん、ゆっくりしてくださいね。引退選手および今季の総括についてはいずれまた。

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March 11, 2012

これもスキージャンプ オスロ

新しいホルメンコーレンの台は、良くも悪くも札幌大倉山に似ていると思うのは私だけだろうか?狭い場所に大きい台を作ろうとすれば低速台になって、K点付近の風の影響を受けやすくなる。そして、海に近い大都市だから時間帯によっては強い風が吹く。それも吹き上がりの向かい風が・・・・。

スキージャンプは風との闘い。そうわかっていても、今日のようにここまで風による有利不利があると、さすがに白けてしまった。伊東の連勝、そして予選トップの竹内への期待。復調しシングルが狙えそうな葛西。バーダルが総合優勝をほとんど決めてしまうか、復調気配のシュレリーが踏みとどまるか。それとも、完全復調したモルギーやアマンが雰囲気を読まずに勝っちまうか・・・・いろいろと予想して意気込んでいたのだけど。

大会を通じてもっともいいジャンプをしていた2人、モルギーと竹内が2回目に進めないというのはあまりにも不公平だ。不公平感を煽るのが、まったく本質を反映しないウインドファクターのポイントだ。上の向かい風、特に横からの風は逆にマイナスですらあるのに大きく点を引かれちゃったり、下でいい風もらったのにマイナスはちょっとだったり。

もちろん、勝ったコッホの風を捕まえる天賦の才、2位にジャンプアップしたフロイントの悪条件への強さ。彼らへの賞賛はそういうことでまったく減じることはない。1回目トップだった伊東の2回目はもうちょっと完成度が高ければ、下の風が無くても好勝負に持ち込めたと思うし・・・・。

天候に悩まされ続けた今年のワールドカップを象徴するような大会だった、と総括するしかないか。バーダルはとりあえずポイントを積み重ね、総合優勝への扉に手をかけたと言っていいだろう。

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March 09, 2012

伊東大貴 覚醒す トロンハイム

三寒四温とはよく言ったもので、今週は寒の戻りがあった。トロンハイムも水曜は大吹雪だったようだが、木曜のワールドカップはとても良い試合だったようである。

ようである、というのは、やはり平日のワールドカップは見られなかったということ。しかも、運の悪いことに出張が重なり、再放送も見られなかった。普通なら出張でも(夜11時ごろにある)再放送ぐらいは見られるものなのだが、今回は修道院を改装した青年の家のような所に缶詰になっていた。当然、テレビなどない。こういうときはデジタルレコーダーがあったらいいなと思うものなのだが・・・1年に数回ぐらいしか必要のないものを買ってもなぁ・・・・デジタル回線も来てないのに。こうなったらブロードバンド+タブレットでEurosports playerでオンデマンド視聴するかな。

結果とYou Tubeの映像を見て、伊東の完全、完璧な力の勝利、「覚醒」完了を高らかに宣言する勝利の瞬間をライブで見られなかったのが返す返すも残念なのである・・・・。こんな勝ちっぷりは日本のジャンパーにとって何年ぶりなんだろう。

もう、彼は「日本のジャンパー」の殻を完全に破った。マリシュ、アマンの域に少なくとも瞬間的には達した。これを彼らのように続けられるかどうか・・・・追われる立場の苦しさを乗り越えられるかどうかは、これからの本人の努力と周りのサポートにかかっている。

なーんて、堅いことは抜きにして、今回は本当にうれしい。溜飲が下がる思い、とはまさにこのことだ。追い風でヒルレコード、テレマークランディングされ、他国のジャンパーが白旗を揚げる。風がどうとか、自国開催だからとか、そういうエクスキューズの余地がない完璧な勝利。日本ジャンプを応援する一人として、伊東選手とサポートスタッフ、マテリアル関係など、今日の勝利を支えたすべての人たちに御礼申し上げます。

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