January 13, 2019

陵侑にみんなお手上げ

プレダッツォの土曜の試合において、陵侑と他のジャンパーの絶対パフォーマンス差が明らかとなってしまった。
だいたい、1本あたり5mを超えるぐらいか・・。この小さな台で、追い風に鬼のように強いクバツキが2回成功して出したポイントに対しての差だから、実際の差はもう少し大きいようにも思える。

陵侑が2本とも成功するとこれぐらいのポイント差が出せてしまうということは、ジャンプ週間においては本来のジャンプができていなかったということになる。プレッシャーはあったんだと思う。それでいて、グランドスラム・・・。

恐ろしいほどの絶対パフォーマンスである。

誰もまだ、陵侑のジャンプの秘密を暴くことができていないようだ。ハンナバルトは、土曜の陵侑の1回目を見て、“これはいったい何なんだ!”と叫んでしまうありさまであった。すべてがうまくハマった時の陵侑のジャンプのパフォーマンスは、それほどの衝撃を皆に与えている。ライバルたちもお手上げで、「陵侑は別にして自分のできることをする」がインタビューの定番回答になってきた。

いったい陵侑のジャンプの何が特別なのだろう。比較として、15-16シーズンのピーター・プレウツのジャンプを見てみた。ピーターと陵侑のジャンプは似ていると思っていたのだが、実際は違った・・・。ピーターはずっと低く、前に進むことを目指したジャンプだった。一方、今季の陵侑はもっと高さを取っている。高いのに、無敵だったピーター並みに後半も伸びる。どういうことだ。

その彼の「高さ」と「最後の伸びをもたらすスピード」を両立させたジャンプの原動力は、高効率で力強いサッツにある。それは、みんなそう思っている。

サッツの理想は、上にゲインしながら、スピードを失わずに飛び出すこと。しかし、上に飛ぶということは90km/hで進みながら「立つ」のだから思いっきり空気抵抗を受けることになる。その抵抗を減らすべく、飛び込み前転のイメージで、体を飛び出し方向に突っ込んでいく。その前転力をスキーの受けた空気の力とバランスさせて、台ごとに最適の方向に体が進んでいくようにする・・・・ということ。言うは易し。難しいのは、上に飛ぼうとすればスピードをロスしやすく、スピードをロスしないようにすれば上に飛べない、という二律背反性をもっているからだろうと、想像している。

陵侑は飛び出しであれほど速く突っ込みながら、スキーの上がりとバッチリバランスして体勢移行を超速で終了している。スピードのロスが少ないということになる。普通はあれぐらいリスクを冒せば、スキーの先が下がってしまい、スピードも高さもロスするものなのだが。深いクラウチングからサッツでしっかり踏みながらそれを行うことは、イメージするだけでも難しいことに思える。しっかり踏んで、速く完了。よどみなく、自動的に。それができている。

そんなことは、みんなわかっている。いや、トップジャンパーはみんなそうやっている。ものすごい効率で。ではなぜ陵侑だけあんなに飛べる?彼はその優れた身体能力と感覚を生かして、それをもう一段高度なパーフェクトさでやっているに過ぎないのではないかなぁ。その高効率のサッツに、もともとからある空中の上手さが組み合わさって、今のパフォーマンスに到達した。何も秘密は無いが、そのすべての要素が揃うことは、そうはないということじゃないか。それが、いまのところの私の理解である。

日曜は風が安定せず、ゲートが上下する難しい状況だった。陵侑は2回ともかなりの失敗だった。世界記録の7連勝がかかっているという重圧はあったと思う。土曜に転倒した影響でないことだけを祈る。今日はクバツキの優勝を喜びたい。今まで勝てなかったのが不思議だった。これから何度も勝つだろう。

日本選手たちはお疲れの様子。ザコパネはパスかな??その方がいいように思う。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

January 06, 2019

小林陵侑、歴史に名を刻む

日本人スキージャンパーによるジャンプ週間制覇及び、グランドスラム達成を見ることができるとは・・・。
小林陵侑はとてつもないことを成し遂げた。

今日の試合においても、スキージャンプの神様は陵侑に試練を与えた。一回目、ジラが飛び終わったら急に向かい風が吹いた。一時中断となり、とんでもない精神状態の中、彼はひとりだけ待たされることになった。インランにはブロアーでは飛ばせないべた雪が積もっていった。フォアジャンパーが一人飛んだものの、おそらくシュプールの状態は良くなかったに違いない。91.6km/hの遅い飛び出し速度以上に、感覚的に気持ちの悪いジャンプになったことは想像できる・・・それでも135mまで行って望みをつないだことが、二回目の爆発につながった。正直、その二回目のジャンプは完成度的には8割ぐらいだと思う。勢いに任せたようなジャンプだった。風の条件も良くなかった。あれで137.5mまで行くのが信じられない。そのパフォーマンスは、後の3人を硬くさせた。終わってみれば圧勝だった。

史上3人目のグランドスラム達成。今回の陵侑の達成は、内容的にはハンナバルトのものに似ている。圧倒的なパフォーマンス差によって、運不運、試合の流れといったものを無理やりに突き抜けた感じだった。

昨季、今季と続けてグランドスラムが達成されたことは、単なる偶然ではないと思う。これは、スキージャンプが運不運に左右されにくい、公平な競技になっていることを示したものだと思う。今回、もしコンディション・コンペンセーションが無ければ、陵侑は初めの二戦は勝てていないだろう。そういう意味ではハンナバルトの達成と、昨季、今季の達成は質的に違うものだと言うことができる。どっちがより凄い、というわけではないが。

ルカでの圧勝劇のあと、陵侑によるジャンプ週間制覇を夢見て、預言めいたことを言った。しかし・・・それは競馬で言えば春の天皇賞におけるディープインパクトの圧勝劇を見て、同馬による凱旋門賞制覇を予言するのと同じような感じだった。能力的にはできると確信するが、実現には相手関係も含めて神様の助けがかなりいるという・・・。今回、陵侑にとって幸運だったことは、ライバルとなりそうなクラフト、ストッホ、フォアファングらが安定しなかったということだ。そしてそれは、今季がオリンピックの次のシーズンだったことと無関係ではないだろう。

とにかく、日本人としてこんな誇らしいことを成し遂げてくれて、ありがとう、陵侑!
このまま怪我無く最後のプラニツァまで参戦できることを祈っている。そうであれば、自ずと結果はついてくるだろう。そのためにも、どこかで少し小休止するのもいいかもしれないな。まだまだ、シーズンは長い。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

January 04, 2019

とうとう、突き抜けてしまったなぁ

驚愕の12.8点差。
差のつきにくいベルクイーゼルで、最高のジャンプを揃えたクラフトに対しての、この差はあり得ない。しかも、陵侑の二回目は成功とはいえないジャンプだった・・・。

アイザイは一回目は硬いジャンプ、二回目はリスクを冒しすぎたジャンプで13位に沈み、陵侑とはこの試合だけで40点以上の差がついてしまった。

ここ2戦の流れが来なくても勝つ陵侑の姿から、条件が噛み合ったらこうなることは予想できた。
しかし・・・それを目の当たりにしても、なんだか実感がない。無敵だった頃のピーター・プレウツやシュレリーを見ているのと同じような感じ。遠いところにいる、違うステージにいる人。大谷翔平の感じ。

ジャンプ週間総合ポイントでは「転倒しても勝つ」ぐらいの状況となった。失格や欠場さえなければというレベルだと思う。グランドスラムが達成されるかどうかに注目は移っている。出る杭は打たれるというが、ここまで飛びぬけてしまうともうお手上げ。今のレベルが高く安定した競技状況においての、この突出ぶりはあり得ない。

今日はベルクイーゼルとしては珍しく向かい風で、ゲート0、ゲート00まで登場するほどの低速条件となった。安定した競技運営ができなくなる領域に迫っている。FISの技術部会にとってはマズイ状況だろう。シーズンが終わったら何らかのレギュレーション変更があるだろう。台のプロファイルに手を入れるのか、マテリアルに手を入れるのか・・・・後者の場合は、選手にとっては、また一からやり直しである。

佐藤、伊東たちも良いジャンプをしていた。日本チームは上昇気流に乗っている。葛西も、あともう一歩なんだけどなぁ。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

January 01, 2019

小林陵侑は凄すぎる

陵侑は新春ジャンプも勝った。

今日のアイザイ(アイゼンビヒラー)は神懸っていて、しかもガルミッシュの風神は彼に肩入れしていた。
アイザイの一本目は年に何回かしかないような、完璧なジャンプだった。二本目は100%ではなかったが、普通だったら勝つのには充分なジャンプだった。風の条件も、二回とも、とても良かった。

小林陵侑がスタートゲートに座ると、くるりと風向きが変わった。二回とも。
それでも、彼は素晴らしいジャンプを出して、自分の力だけで勝ち切ってしまった。ガルミッシュの台はオーベルストドルフに比べてウィンドファクターの効きが弱いと思う。ここで、条件に差がありながら勝つのは容易ではない。

オーベルストドルフのときも感じたけど、小林陵侑は並みのアスリートではない。彼がラッキーなしで勝負に勝てるのは、力が頭一つ抜けているのに加えて、その自分の競技力をここぞというときに発揮できるから。この感じは船木に近い。

次はベルクイーゼル。天気は大丈夫そう。勝負はランディングが鍵で、飛びすぎによる怪我だけが心配。


| | Comments (4) | TrackBack (0)

December 30, 2018

ポイントでは薄氷の勝利だが

小林陵侑、まず一つ勝った。
0.4点差の薄氷の勝利だが・・・かなりパフォーマンスには余裕があるように見える。
一回目はいい条件だったのに、追い風警戒でちょっと上に行き過ぎたと思う。
二回目は急に追い風が吹いて、それなのに一回目を修正しようとしたか少し前に行き過ぎ、高さが出なかった。普通のジャンパーなら110m付近にパタンと落ちてしまうような状況だったと思う。
このちぐはぐな感じでも勝った。素直に凄いと思う。

アイザイはようやく2回目を克服したね。能力は間違いなくあるだけに、乗せると怖い相手だ。地元のガイガーは神様に見放されていて、しかもやっぱりプレッシャーにもやられていたと思う。ドイツのジャンパーにとって、オーベルストドルフでジャンプ週間が始まることが、精神的に厳しいように思えて仕方がない。クラフトはちゃんと合わせてきたね。一方、今年のストッホはまだ技術的な問題を抱えているように見える。

この台はウインドファクターが良く効くなぁ。いい台だ。
ここで、満員の観衆の中で勝って、国歌を聞くのはどういう気持ちだろう。
オリンピックで勝つことと、少なくとも同等の栄誉だと思う。

伊東の一回目は今年一番のジャンプ。あれで残れないなら仕方ない。レベルが高すぎる。ちょっと失敗したらヴェリンガーも残れなかった。フロイント、タンデ、ピーター・プレウツらトップジャンパーも肉体的なコンディションが整っていないと勝負にならない。

(1月3日追記)
後で見返してみて、勘違いに気づいたので修正します。
陵侑の2本目のジャンプは前に行き過ぎたのではなく、悪条件に合わせて意識的に少し上に飛んだように見えました。失速した感じだけど、要するに条件が相当に悪かったということ。となると、1回目の方向性はちょうどよかったということですね。彼の調整能力を過小評価していたようです。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

December 16, 2018

何も文句のつけようがない小林陵侑

今日の小林陵侑のジャンプには感心するよりほかなかった。
土曜は追い風の難しい条件で、方向性を掴み切れないまま終わってしまった感じだったが、今日は少しアグレッシブさを抑えて圧倒的に勝った。調整能力もあるところを見せていた。

改修後のエンゲルベルクはアプローチに少し癖があるように思う。それも克服できていた。

エンゲルベルクで急にびっくりするようなパフォーマンスを出すジャンパーがいて、それがジャンプ週間の台風の目になることがあった。しかし、今季はそういうジャンパーも見当たらなかった。テテゼーの中止による小休止を経て、日本以外のチームはじっくりと調整することができたはず。全体的にジャンパーの調子が上がってきているのは見えた。特にオーストリアはかなり立て直してきたね。しかし、驚きを感じさせるジャンパーはいなかったように思う。

なによりも、陵侑にチャンピオンの雰囲気、が出てきた。

今季はクリスマス休暇が少し長い。これも日本チームにとっては好都合だろう。

小林陵侑は”ジャンプ週間の本命に上げざるをえない存在”となったと思う。対抗はストッホだと思っていたが、今回は上手さは感じても絶対的な能力は感じなかった。地の利のあるクラフト、ガイガーが相手になりそうだ。ガイガーはフライング能力もあり、それが必要な台が並ぶジャンプ週間においては怖い存在。精神的にも強いので要注意だと思う。ワールドカップポイント2位のジラは絶好調だし、能力のあるジャンパーだけど、これ以上を出してジャンプ週間を勝つという姿は想像しにくいなぁ。なんでだろう。

あと・・・・クリモフがかなり戻してきている。もし、陵侑に絶対的パフォーマンスで肉薄できるとすれば彼だと思う。ダークホースだろう。

葛西が1ポイント取れたことは、うれしい。第1ピリオドで1点あるかないかはかなり大きい。

今回の中継で、アプローチから20メーター地点と着地点でのスピードが表示されるジャンパーがいた。どうやら、ブーツにGPSを埋め込んで測定しているらしい。ジャンパーごとにそれを開示するかどうか決められるとのこと。サッツが速度重視か高さ重視かがよく分かる。ファンネメルは前に行く一辺倒かとおもいきや、土曜の追い風条件ではしっかり上に飛んでいることがわかったりして面白かった。みんな開示して欲しいなぁ。開示しない理由が見当たらない。作戦がバレるってことなのかな?

| | Comments (2) | TrackBack (0)

December 07, 2018

ひどい天気

ここ数日、暖かい風が吹き、間欠的に雨が降っている。
テテゼー・ノイシュタットの大会が中止になるのも致し方ない。
しかし、残念。あの大きな台で向かい風を受け、陵侑がどこまで行くかを見たかった。
超低速条件になっただろうなぁ。

この荒天は今週末でいったん収まるようだが・・・
エンゲルベルクからジャンプ週間は良い条件になって欲しい。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

December 02, 2018

このまま突っ走って欲しい

ニギニ・タギルの台は力のいる台で、いつもはドイツ勢の庭のようになる。
ただ、今回は向かい風が吹いたこともあり、それほどそういう感じにはならなかった。
とはいえ、この台で普通に飛べれば勝てるという状況になることは、日本人ジャンパーにとっては特異以外のなにものでもない。前回のルカだって、新造の、かなり力のいる台だったし。小林陵侑のパフォーマンスは今までの日本人の範疇を超えた領域に入っている。

ただ・・・この程度の弱い向かい風、新しい標準的な台という条件で飛び出し速度が86キロ台になるのは異常な感じがする。そんなに浮力が多くなっているのかな。今季からブーツを脱いだ状態で計量を行うことになって、今までの体重では一段階、スキーは短くなっているはずなんだけど・・・。このルール変更はパワー系ジャンパーにとってはありがたいはず。このあたりにそれぞれのジャンパーの不調好調の原因があるように思う。

今日は、ストッホの2回目の、飛び出し付近で追い風のときはこう飛ぶというお手本のような、超絶技巧ジャンプを見られてよかった。

フィンランドのアールト、待ちに待った覚醒か?

葛西はずいぶん復調した。もう少し大きな台ならポイントが取れるところまで来ていると思う。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 26, 2018

昨日は日本のスキージャンプにとって記念すべき日かも・・・

昨日のルカで起こったこと。よく考えてみるととんでもないことだと思う。

100%ではないとはいえ、昨シーズンの金メダリスト、それも完全に確立されたチャンピオンレベルのジャンパーの二人が、ほぼ完ぺきなジャンプをした。それを、小林陵侑は計算上10m以上、上回った。ルカのジャンプ台は確かに、ある点を過ぎると飛びすぎになりやすいジャンプ台だと思う。それにしても、彼のジャンプの飛行曲線は異常だった。あの感じは、アホネンの全盛期とか、15/16シーズンのピーター・プレウツの感じにそっくりだ。アスリートタイプのジャンパーがハマった時に見せる、誰も手が付けられないぐらいに物理的に差があるパフォーマンス・レベルである。昨日の彼のジャンプは、かなりピーター・プレウツに似ていた。深めのクラウチングから、まっすぐに出るジャンプ・・・・リジットな膝と豊富な速筋、そして体のバランスとコーディネーションのすべてがそろわなければできないジャンプ…だと思う。

日本チーム全体の調子がいいわけではない。つまり、おそらくだが、彼のこのパフォーマンスに、マテリアルによる下駄はない。今のレギュレーションでは、マテリアルによる大きな勢力変化が起こる確率は低い。

これがどういうことなのか。おそらく、その答えは年末年始と3月に出る。怪我さえなければ。ここについては神様にお願いするしかない。

そうなってから、急に騒ぎ出すんだろうなぁ、日本の報道は。いや、そうでもないか。オリンピック終わった後だし。日本のジャンプにとって、歴史的に凄いことが起こるのになぁ・・・。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 25, 2018

当たり前のように連勝・・・

最後は風が強くなってドキドキだった。
これは危ない、自分だったら二つ下げる・・・・と思ったら宮平コーチはちゃんと二つ下げた。
それでも・・・・危なかった。宮平コーチは心臓が止まりそうになったはずだ。

これは・・・本当に小林陵侑の時代が来たのかもしれない。
もちろん、他のジャンパーの状態がまだ100%ではないから、今の一強状態が今後も続くとは思わない。しかし、現在の彼のパフォーマンスは、チャンピオンレベルにあることは間違いない。そして・・・ここからもう一段、上がる可能性もある。そうなったら・・・。宮平ヘッドコーチ・葛西監督の手腕が問われることになりそうだ。

中村直幹のジャンプ、いいと思う。今日は二回目、かなり硬くなってたけど、これも経験だろう。

第二のドメン発見。ザック・モーゲル。

他国にも世代交代の波が押し寄せてきている。ポーランドのヴォルニーとか、ドイツのジーゲルとか、スロベニアのザイツとかは将来が約束されているけど、新しく出てきたエストニアのエイグロという小柄なジャンパーがちょっと気になっている。若い頃のマリシュを彷彿とさせるような・・・・とにかく速い。ああいうジャンプは才能がないとできない。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

«小林陵侑、あっさり勝った